“芸術の秋”に親子で読みたい「アートな絵本」3選! 子どもの感性にぐんぐん響く![絵本の専門家が選出]

子どもの本のプロが選ぶギフト絵本 #28~アートな絵本~ (3/4) 1ページ目に戻る

絵本コーディネーター:東條 知美

家が宿す“光と影”100年の時を紡いだ一冊

次にご紹介するのは、『百年の家』(講談社)。全64ページの長編で、家と人が織りなす100年の歳月を描いた物語です。

一軒の家が建ち、そこに人々が集い、喜びや悲しみを重ね、やがて時代の波にのまれながらも、家は静かに佇み続ける──。

この絵本を開くとき、単にストーリーを追うのではなく、“100年という果てしない時間”を手もとにたぐり寄せるような、特別な感覚に包まれます。

『百年の家』(作:J.パトリック・ルイス、絵:ロベルト・インノチェンティ、訳:長田弘/講談社)
すべての画像を見る(全5枚)

本書の真骨頂は、なんといってもロベルト・インノチェンティの圧倒的な画力です。

家の歴史を定点観測するように見開きいっぱいに描かれた絵は、17世紀のオランダ絵画や建築画を思わせるほど細密であり、静かで落ち着いた雰囲気です。

石畳の質感、屋根瓦の陰影、季節ごとに変化する光の角度と、すみずみまで情熱が宿っています。

特徴的なのが、物語の語り手は、人間ではなく「家」であること。過度な感情移入はせずに、戦争など歴史の残酷さも、人々のささやかな日常の営みも、ひとしく同じアングルから描き切っています。

この重厚なアートワークと見事に響き合っているのが、詩人・長田弘さんの訳。静かな表現で、密度の高い絵に「余白」を生み出します。

ページ数も多く、小さいお子さんには少々難しいテーマかもしれませんが、大人になってからも何度も読み返したい“特別な一冊”になり得る名作です。大人が読めば、これまでの人生に想いをはせずにはいられないでしょう。

絵本という小さな劇場の美しいアートを、ぜひ贈ってみてはいかがでしょうか。

*読み聞かせ 5・6さいくらいから
*ひとり読み 小学校中学年くらいから

最後は“アート絵本”デビューにぴったりな一冊

29 件