家族に言えない「負の感情」の正体 「きょうだい児」を描く課題図書が心に刺さる理由

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飯田 一史

読書感想文は、胸の奥の「フタ」を取り払う対話の場

そんな折、ふとしたきっかけから、葉澄はきょうだい児が集まる「きょうだい会」の存在を知り、同年代の当事者と本音で話せる場を持つことで、少しずつ変わっていく。

そして、進路選択が迫ってくる。

自分はいつまで、どのくらい、この家族といっしょにいるのか。

自分のやりたいこと、自分の人生と、助けが必要な家族の存在とを、どう折り合いを付けたらいいのか。葉澄は迷い、相談し、考える。

『君の火がゆらめいている』は、きょうだい児の当事者はもちろん、家族について、人には言えないモヤモヤした気持ちや、認めてはいけないと思いながらもネガティブな感情も抱いているすべてのひとに刺さることを、ていねいに描いている。

君の火がゆらめいている

君の火がゆらめいている

落合 由佳(著)

発売日:2025/11/27

価格:定価:本体1500円(税別)

現実世界では、誰もが葉澄のように話せる仲間が見つかるわけではない。

それでも、この本の読者どうしでなら、それまで誰にも言えなかった話ができるようになるかもしれない。読み終えたら、ぜひ感想を書いたり、ほかの読者を探したりしてみてほしい。

この作品は2026年の夏休みの読書感想文の課題図書(中学生の部)に選ばれている。

感想文は学校の先生やほかの生徒も読む可能性が高いから、あまり踏み込んだプライベートな話は書けないかもしれないけれど、自分に引きつけた感想自体は、おそらくたくさん浮かんでくるだろう。

もちろん、ひとりで読むだけでも、フタをして押さえつけていた自分の気持ち、言語化してはいけない、感じてはいけないと無意識に思っていた苦しさに、改めて気がつくことができると思う。

そういう心の内側を見つめ、吐露するのは、わるいことではない。

長年抱えてきたものをいったん下ろすことができれば、積年のモヤモヤ、作り上げられてきた見えないカベを取り払って、家族と向き合えるようになるはずだから。

読者の気持ちを軽くし、やさしい心持ちにしてくれる小説だ。

文/飯田一史

飯田一史(いいだ いちし)
出版ジャーナリスト・ライター。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。

『君の火がゆらめいている』著:落合由佳(講談社)
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飯田 一史
いいだ いちし

飯田 一史

Ichishi Iida
出版ジャーナリスト・ライター

青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp

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青森県むつ市生まれ。中央大学法学部法律学科卒。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。 出版社にてカルチャー誌や小説の編集に携わったのち、独立。国内外の出版産業、読書、子どもの本、マンガ、ウェブカルチャー等について取材、調査、執筆している。 JPIC読書アドバイザー養成講座講師。 電子出版制作・流通協議会 「電流協アワード」選考委員。インプレス総研『電子書籍ビジネス調査報告書』共著者。 主な著書に 『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』 『「若者の読書離れ」というウソ』 (平凡社)『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社)『ウェブ小説30年史』(講談社)ほか。 ichiiida.theletter.jp

落合 由佳
おちあい ゆか

落合 由佳

Yuka Ochiai
作家

1984年、栃木県生まれ。東京都在住。法政大学卒業後、会社勤務などを経て、2016年バドミントンに打ち込む中学生たちを描いた『マイナス・ヒーロー』で第57回講談社児童文学新人賞佳作に入選。翌年、同タイトルのデビュー作を出版。著書に、『流星と稲妻』『おはなし日本文化 和食 ぼくらのお祝いごはん』『天の台所』『要の台所』『君の火がゆらめいている』(すべて講談社)などがある。

1984年、栃木県生まれ。東京都在住。法政大学卒業後、会社勤務などを経て、2016年バドミントンに打ち込む中学生たちを描いた『マイナス・ヒーロー』で第57回講談社児童文学新人賞佳作に入選。翌年、同タイトルのデビュー作を出版。著書に、『流星と稲妻』『おはなし日本文化 和食 ぼくらのお祝いごはん』『天の台所』『要の台所』『君の火がゆらめいている』(すべて講談社)などがある。