【中学課題図書】「きょうだい児」の本音… 『君の火がゆらめいている』が炙りだすヤングケアラーの葛藤

「きょうだい児」の孤独と葛藤とは(写真:アフロ)
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5月に第72回(2026年度)青少年読書感想文全国コンクールの課題図書が発表されました。

その中で、「きょうだい児」の葛藤を描いた作品『君の火がゆらめいている』(落合由佳・作)が中学校の部に選出され関心を集めています。

障害のある兄弟姉妹を持つ子ども「きょうだい児」を主人公に描く本書について、現代の教育現場や社会が直面するテーマに切り込んだ背景と、作品に込められた意図を追いました。また、現場を知る識者にも話を聞きました。

『君の火がゆらめいている』

潜在化する「きょうだい児」の孤独

近年、家族のケアを日常的に担う「ヤングケアラー」への支援や実態調査が進む一方、障害のある兄弟姉妹がいるために家庭内で悩みを抱え込みやすい「きょうだい児」の心理的ケアは、まだ十分に認知されているとは言いがたい現状があります。

『君の火がゆらめいている』は、この「きょうだい児」である主人公が、思春期特有の多感な時期に家族のあり方や自身のアイデンティティに悩み、揺れ動く姿をリアルにえがいています。

「きょうだい児」の葛藤を描いた作品『君の火がゆらめいている』(落合由佳・作)

【内容】主人公は、発達障害のある双子の姉の通院や学校送迎を日常的に手伝っている。友達と遊びたい日も、お母さんと一緒にいたいときも、姉の都合が最優先。何かを諦めるたび、胸の奥にモヤモヤがたまっていく。

障害がある子のきょうだいが集まる「きょうだい会」に参加し、出会いも広がる中、障害のあるきょうだいのために生きるのが「みんなにとって」幸せなのだろうか、と考えるようになり──。

「『古い』と思われる日が早く来てほしい」

課題図書の選定にあたり、著者の落合由佳氏は以下のようなコメントを寄せ、切実な思いを明かしています。

【著者・落合由佳 コメント】
「いつまでも古びない物語を書きたいと常に思っています。でも今作は読者のみなさんに『古い』と思われる日が早く来てほしい。 『障害のある人や、そのきょうだいがこんなに大変な時代があったんだね』 そんな感想が聞こえる未来へ、この物語につながりますように」

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名作が時代を超えて愛される一方で、作中で描かれる生きづらさそのものが、いつか「過去の歴史」になってほしいという、現実社会を見据えたメッセージです。

専門家はどう見るか 現場を知る識者の視点

子どもたちがこのテーマにどう向き合うべきか。

かつて著書『ふたり』が同コンクールの課題図書に選定された作家の福田隆浩氏は、30年以上にわたり特別支援学校の教員を務めてきた障害児支援の専門家でもあります。

また、福田氏はきょうだい児をテーマにした絵本『いもうとのにゅうがくしき』や、重度の知的障がいのある主人公をえがき野間児童文芸賞を受賞した『たぶんみんなは知らないこと』など、障害と子どもをテーマにした作品を世に送り出してきました。

福田氏は、『君の火がゆらめいている』について次のように語ります。

【福田隆浩氏 コメント】
「特別支援学校の現場でご家族と関わる中で、きょうだい児が抱える複雑な思いに何度も直面してきました。本作は、姉を大切に思う気持ちと、自分の人生を歩みたいという葛藤が、当事者の生々しい本音として描かれていて、深く胸を打たれます。

また、家族だけで抱えこまずに医療や福祉などのチームを頼る大切さが、中学生の目線で描かれている点も、これまでにない画期的な切り口だと感心させられました。

迷いながらも他者の痛みに寄り添い、自分の中にある良心の火に気づいていく主人公の姿は、きょうだい児に限らず、未来を選ぶすべての子どもたちの背中を温かく押してくれるはずです」


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読書感想文という対話の場

多感な時期に、社会の地続きにある葛藤に触れることは、他者への想像力を養う上で大きな意味を持ちます。

読書感想文は、本を通して自分自身の生きる世界を捉え直す営みでもあります。『君の火がゆらめいている』という一冊が、今年、日本中の中学生の心にどのような問いを投げかけ、どのような感想を生み出すのか。その行方に注目が集まっています。

○プロフィール
落合由佳(おちあいゆか):
1984年、栃木県生まれ。東京都在住。法政大学卒業後、会社勤務などを経て、2016年バドミントンに打ち込む中学生たちを描いた『マイナス・ヒーロー』で第57回講談社児童文学新人賞佳作に入選。翌年、同タイトルのデビュー作を出版。著書に、『流星と稲妻』『おはなし日本文化 和食 ぼくらのお祝いごはん』『天の台所』『要の台所』『君の火がゆらめいている』(すべて講談社)などがある。

君の火がゆらめいている

君の火がゆらめいている

落合 由佳(著)

発売日:2025/11/27

価格:定価:本体1500円(税別)

福田隆浩(ふくだたかひろ):1963年、佐賀県唐津市生まれ。兵庫教育大学大学院修了。2003年『この素晴らしき世界に生まれて』(小峰書店)で第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞、2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。2012年『ひみつ』が第50回野間児童文芸賞最終候補作に、『ふたり』が2014年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書に、『幽霊魚』が2016年度読書感想画中央コンクール指定図書に、『香菜とななつの秘密』(以上、講談社)が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。その他、「おなべの妖精一家」シリーズ、『手紙 ─ふたりの奇跡─』(以上、講談社)などの作品がある。

いもうとのにゅうがくしき

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福田 隆浩(文)  しんや ゆう子(絵)

発売日:2026/04/03

価格:定価:本体1700円(税別)

たぶんみんなは知らないこと

たぶんみんなは知らないこと

福田 隆浩(著)  しんや ゆう子(イラスト)

発売日:2022/05/26

価格:定価:本体1400円(税別)

【2026年秋刊行予定】『ふたりでおでかけ』福田隆浩(作) 藤本たみこ(絵)

【関連書籍】

きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記 カルト宗教にハマった毒親と障害を持つ弟に翻弄された私の40年にわたる闘いの記録

きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記 カルト宗教にハマった毒親と障害を持つ弟に翻弄された私の40年にわたる闘いの記録

平岡 葵(著)

発売日:2024/08/29

価格:定価:本体1400円(税別)

ぼくの色、見つけた!

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志津 栄子(作)  末山 りん(絵)

発売日:2024/05/23

価格:定価:本体1500円(税別)

かっくん ~どうしてボクだけしかくいの?~

かっくん ~どうしてボクだけしかくいの?~

クリスチャン・メルベイユ(文)  ジョス・ゴフィン(絵)  乙武 洋匡(訳)

発売日:2001/04/03

価格:定価:本体1700円(税別)

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落合 由佳
おちあい ゆか

落合 由佳

Yuka Ochiai
作家

1984年、栃木県生まれ。東京都在住。法政大学卒業後、会社勤務などを経て、2016年バドミントンに打ち込む中学生たちを描いた『マイナス・ヒーロー』で第57回講談社児童文学新人賞佳作に入選。翌年、同タイトルのデビュー作を出版。著書に、『流星と稲妻』『おはなし日本文化 和食 ぼくらのお祝いごはん』『天の台所』『要の台所』『君の火がゆらめいている』(すべて講談社)などがある。

1984年、栃木県生まれ。東京都在住。法政大学卒業後、会社勤務などを経て、2016年バドミントンに打ち込む中学生たちを描いた『マイナス・ヒーロー』で第57回講談社児童文学新人賞佳作に入選。翌年、同タイトルのデビュー作を出版。著書に、『流星と稲妻』『おはなし日本文化 和食 ぼくらのお祝いごはん』『天の台所』『要の台所』『君の火がゆらめいている』(すべて講談社)などがある。

福田 隆浩
ふくだ たかひろ

福田 隆浩

Takahiro Fukuda
作家

1963年、佐賀県唐津市生まれ。兵庫教育大学大学院修了。2003年『この素晴らしき世界に生まれて』(小峰書店)で第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞、2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。2012年『ひみつ』が第50回野間児童文芸賞最終候補作に、『ふたり』が2014年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書に、『幽霊魚』が2016年度読書感想画中央コンクール指定図書に、『香菜とななつの秘密』(以上、講談社)が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。その他、「おなべの妖精一家」シリーズ、『手紙 ─ふたりの奇跡─』(以上、講談社)などの作品がある。

1963年、佐賀県唐津市生まれ。兵庫教育大学大学院修了。2003年『この素晴らしき世界に生まれて』(小峰書店)で第2回日本児童文学者協会長編児童文学新人賞、2007年『熱風』(講談社)で第48回講談社児童文学新人賞佳作受賞。2012年『ひみつ』が第50回野間児童文芸賞最終候補作に、『ふたり』が2014年度青少年読書感想文全国コンクール課題図書に、『幽霊魚』が2016年度読書感想画中央コンクール指定図書に、『香菜とななつの秘密』(以上、講談社)が2018年度厚生労働省社会保障審議会推薦児童福祉文化財に選ばれる。その他、「おなべの妖精一家」シリーズ、『手紙 ─ふたりの奇跡─』(以上、講談社)などの作品がある。