第二次世界大戦直前、ドイツでのユダヤ人への迫害が過激化するなか、「いのちの列車」と呼ばれる動きが1万人のユダヤ人の子どもを救いました。戦後80年の今年2025年、この「いのちの列車」によりホロコーストを生き延びたユダヤ人の少年・ヘンリーとその父親との実話をもとに描かれた物語『おとうさんのポストカード』が刊行され、父の子への深い愛情や平和の尊さを現代の私たちに伝えてくれています。
作中で主人公のヘンリーさんは、父親や親戚と何枚ものポストカードを送り合います。そのなかで、唯一同世代の友達から届いたものが、ヘンリーさんの幼なじみ・ヴェルナーさんが送ってくれた1枚です。彼も同じくユダヤ人でしたが、戦後の彼の行方については詳しくは描かれていません。
今回本書の監修者であるドイツ在住のジャーナリスト・中村真人さんから驚きのメールが届きました。それは、行方がわからなかったヴェルナーさんが見つかったかもしれない! という知らせでした。全2回でお届けする本記事の第2回(後編)では、ヴェルナーさんにドイツ国外へ脱出した当時について伺った話を寄稿いただきました。
後編/全2回
前編はこちらから
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幼なじみが送ったポストカードの背景にあったのは
それからしばらく経って、私もボストン近郊に住むヴェルナー・ザリンガーさんとオンラインでお話しすることができた。
1932年4月5日にベルリンで生まれたヴェルナーさんは、現在93歳。ひげをたくわえ、サンタクロースのような風貌と声にあたたかみがあり、しかも今もネイティブのドイツ語を話され、ベルリンと大西洋を隔てたアメリカとの距離はたちまち消え去った。
話を伺いながら、当時6歳のヴェルナーさんがどういう経緯でヘンリーさんにポストカードを送ったのかが明らかになってきた。





































