偏食がひどくて困っています【発達障害・発達特性のある子】の育児の悩みに専門家が回答

#3 偏食がひどくて困っています〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

偏食の原因4+4

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子どもが偏食になる理由はいくつかあります。

① 腐敗を思わせる酸味、毒を思わせる苦味を本能的に避ける
② 見た目、味、匂い、歯ごたえ、舌触りなどが「初めて」の食べ物が怖い
③ 咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)など食べることに必要な機能の発達の程度と食べ物の状態(水分量や形状)がマッチしていない、味覚が発達して好き嫌いがはっきりしてくる、などにより偏食が強まる(離乳食が進む生後8~9ヵ月ごろ)
④ 反抗期(いわゆるイヤイヤ期)で「偏食」傾向が強くなる(2~3歳)

などです。

発達障害(自閉症スペクトラム障害、注意欠如・多動症、発達性協調運動障害など)の子どもの場合、加えて、次のようなことも考えられます。

⑤ 食材自体に対する味覚、触覚、嗅覚などの感覚過敏
⑥ 「これしか」「この場所でしか」「家の食器でしか」食べないなどの「こだわり」
⑦ 筋力や運動能力が未発達で、姿勢保持、食器の把持(はじ)、スプーンや箸の操作、咀嚼などの食事に必要な動作がうまくできない
⑧ 体力的に脆弱なためそもそも食欲があまりない

その結果、自閉症スペクトラム障害の子どものうち、偏食の子どもの割合は、定型発達の子どもの6倍といわれています。

「家族と一緒に、おいしく、楽しく食べる」を目標に

子どもの偏食に悩む親は「できるだけ早く偏食をなくす」ことを目標として、時に、脅迫的な関わり方をしてしまうことがあります。

「せっかく作ったのになんで食べないの?」「食べるって言ったよね!」「もうご飯いらないのね!」

いけないと思いながらもつい、こんなことを言ってしまったことはないでしょうか。しかし、このような関わり方は、子どもの食べ物や食事への嫌悪感を増大させ、親子の関係を損ないかねません。

特に、感覚過敏がある子は、私たちには実感できない苦痛(例えば普通の食べ物が、口中の触覚過敏で画びょうを食べているように感じるなど)を感じている場合もあり、無理強いすると子どもに大きな苦痛を強いることになりますし、結局なかなか食べられるようにはなりません。それに私の経験からすると、自閉症スペクトラム障害の子どもであっても、成長とともに偏食が自然に少しずつ軽減することは、珍しくないのです。

だとすれば、強制的な関わり方をしてまで今すぐ偏食をなくすことをめざさなくてもよいのではないでしょうか。かといって何もしないでいいというわけではありません。

ではどうするか。
目標を変えましょう。

「偏食をなくすこと」ではなくて、「家族と一緒に、おいしく、楽しく食べること」を目標にするのです。そしてそれができるように大人が工夫をしましょう。

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