【K2シロップの投与】子育て誤情報「K2シロップは添加物だらけで危険」はウソ! 新生児・乳児への安全性と重要性〔医師が解説〕

令和の「子どもホームケア」#7~ビタミンK2シロップの投与~

小児科専門医:森戸 やすみ

K2シロップの添加物は安全

SNSにK2シロップに関する不安や疑問の声がありましたので、お答えしたいと思います。

▼新生児に添加物が入ったK2シロップを飲ませても大丈夫?

「添加物は体に悪い」と、誤解されている方が多いようです。K2シロップには添加物が含まれていますが、それらはビタミンKの安定と保存、効果を最大限に高めるために必要な成分で、不要なものは一切入っていません。

新生児に安全に使用できる添加物の量は決まっていますし、K2シロップ1回分の量は1ml(2mg)ですから、添加物の量もごくわずかです。K2シロップのような医薬品は、使用される前に厳しい試験をクリアしていて、安全性が担保されています。

「無添加は安心・安全」と思われがちですが、食品でも無添加ゆえに腐敗したり、カビが生えたりと、かえって危険をおよぼすことがあります。決して「添加物=悪」ではありません。正しく理解していただきたいと思います。

また、海外にはオーガニックのビタミンKのサプリメントがあるようです。有機栽培された植物由来のビタミンKということでしょうか。医薬品は厳しい試験により安全性が確かめられている一方、日本で栄養補助食品として販売する場合は、こうした試験を受けることなく販売できます。

医薬品のような効果はもちろん、自然の植物由来とはいえ、安全性も保証されていないことを知っておくとよいでしょう。

▼K2シロップは保険適用外。製薬会社が儲けるために飲ませているのでは?

治療のために処方される薬には保険が適用されますが、K2シロップは予防のための薬ですから、保険適用外となり自費扱いです。

ただ、ケイツー(K2シロップの商品名)の1回分の薬価は、2025年3月時点で「24.6円」。3回で約74円、10回でも約250円と、自費扱いとはいえ非常に安価です。製薬会社の利益は、ほんのわずかだと思います。

さらに、日本で現在K2シロップを作っている製薬会社は、驚くことに1社のみです。新生児には確実に投与するのですから、儲かるのであれば、もっと多くの製薬会社が作っているのではないでしょうか。

▼ビタミンK欠乏症は稀(まれ)な病気。すべての新生児に飲ませる必要はある?

たしかにすべての新生児・乳児に起こるものではありませんが、「新生児ビタミンK欠乏性出血症」は150~300人にひとりの割合で起こると推定されています。仮に300人にひとりとした場合、2024年に生まれた新生児72万人のうち、2400人の赤ちゃんに起こる可能性があったということです。決して少ない数字ではないですし、起きてしまっては大変です。

もし高価な薬であれば新生児全員への投与は難しいかもしれませんが、K2シロップは非常に安価な薬です。費用対効果が高く、安全に安く、赤ちゃんの命を守ってくれています。

▼母親が食事からビタミンKをしっかり摂っていれば、母乳で補えるのでは?

母乳に含まれるビタミンKの量は少ないですが、お母さんがビタミンKを多く含んだ食品を摂ると、母乳中のビタミンK濃度が高くなることがわかっています。代表的なのは卵黄、ホウレンソウやブロッコリーなどの緑黄色野菜、チーズやヨーグルトなどの乳製品、肉類などで、中でも納豆はビタミンKが豊富な食品として知られています。

ただ、母乳中のビタミンK濃度の増加には個人差がありますし、いずれにしても食事だけでビタミンK欠乏症を予防することはできません。K2シロップでしっかりと必要な量のビタミンKを摂取していただきたいです。

大事なお子さんのことですから、心配になるのは当然です。もし、K2シロップに不安や疑問があるようでしたら、ぜひ担当医や医療従事者に聞いてほしいと思います。

受けるべき正当な医療行為を受けられないと、危険な目にあうのは子どもたちです。それは本当に避けなければいけないことですので、私はこれからもK2シロップの必要性を積極的にお伝えしていきたいと思います。

【子どものホームケア 正しい情報 その7】
K2シロップはビタミンK欠乏症を予防し、赤ちゃんの命を守るために必要なもの。添加物は安全性が認められているので、安心して飲ませてよい。


取材・文/星野早百合

●森戸 やすみ(もりと・やすみ)PROFILE
小児科専門医。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。医療と育児をつなぐ著書多数。

※1=新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言

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もりと やすみ

森戸 やすみ

Yasumi Morito
小児科専門医

小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。

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小児科専門医。1971年、東京都出身。一般小児科、新生児集中治療室(NICU)などを経験し、現在は都内のクリニックに勤務。『子育てはだいたいで大丈夫』、共著に『やさしい予防接種BOOK』(共に内外出版)など、医療と育児をつなぐ著書多数。『祖父母手帳』(日本文芸社)の監修も手がける。子どもの心身の健康や、支える家族の問題について幅広く伝える活動を行っている。

ほしの さゆり

星野 早百合

ライター

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。

編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。