
【K2シロップの投与】子育て誤情報「K2シロップは添加物だらけで危険」はウソ! 新生児・乳児への安全性と重要性〔医師が解説〕
令和の「子どもホームケア」#7~ビタミンK2シロップの投与~
2025.05.24
小児科専門医:森戸 やすみ
ビタミンKの欠乏で出血しやすい状態に
では、なぜK2シロップを飲ませる必要があるのでしょうか。
前述のとおり、K2シロップにはビタミンKが含まれています。ビタミンKは胎盤を通りにくく、胎内でお母さんから赤ちゃんへ移行する量はわずか。
ビタミンKを産生する腸内細菌がまだ大腸にいないため、赤ちゃん自身が体内で作ることもできません。また、母乳に含まれる量も十分ではないことがわかっています。
ビタミンKは、血管が傷ついたとき血液を固めるために必要な物質です。ビタミンKが欠乏して「ビタミンK欠乏症」になると、出血を止めることができず、全身で出血しやすい状態になります。
このビタミンKの欠乏による「ビタミンK欠乏性出血症」は、生後7日以内に起こる「新生児ビタミンK欠乏性出血症」、生後3週から3ヵ月の間に起こる「乳児ビタミンK欠乏性出血症」に分けられます。
出血しても新生児は症状が少ない
「乳児ビタミンK欠乏性出血症」は8割以上が頭蓋内(ずがいない)、要は頭の中で出血を起こし、治療しても麻痺などの後遺症が残ったり、死亡する例もある重篤な病気です。
「新生児ビタミンK欠乏性出血症」は、150~300人にひとりの割合で起こると推定されています。特に新生児は症状が少なく、気づいたときには手遅れという恐れも。だからこそ治療より予防が大切で、生後すぐの赤ちゃんにK2シロップを投与しなければならないのです。
日本では長い間、「3回法」(①哺乳確立時 ②産科退院時または生後1週 ③1ヵ月健診時)が主流でしたが、2021年に日本小児科学会、日本産科婦人科学会など16の団体が「新生児と乳児のビタミン欠乏性出血症発症予防に関する提言」を出し、「3ヵ月法」(①哺乳確立時 ②産科退院時または生後1週以降、生後3ヵ月まで週1回投与)を推奨しています(※1)。
ミルク栄養や混合栄養の場合、育児用ミルクにはビタミンKが含まれているため、1ヵ月健診以降は医師の判断で投与しない場合もあります。