【発達障害でもグレーゾーンでもなし 頭はいいけど不登校】かんしゃく持ちの子どもとその親に発達行動小児科学の専門家がアドバイスしたこと

我が子の困った行動が大きく変わる 親の考え方と接し方 #2

頭はいい子だけど不登校 学校に行けなくなった背後にあるもの

子どもに困った行動が見られると、我が子は発達障害やその傾向があるグレーゾーンではと考えてしまう方もいますが、本人の特性ではないケースもあります。

「不登校だという中学生の男の子が、父親に連れられて私の元にやってきたことがあります。

この子は発達障害でも、グレーゾーンでもありませんでしたが、自分の思いどおりにならないとかんしゃくやパニックを起こすので来院しました。特に学校は家庭よりも思いどおりにならない場所なので、行けなくなったというのです。

親子からいろいろ話を聞いたあとで私が男の子にアドバイスしたことは、『物事は君が決めないとダメだよ』ということと、『物事には、なんでもいいから必ず理由をつけてみなさい』ということでした。

この子は頭のいい子でしたが、小さいときから母親に物事を決められて、決められたことができないと自分をゼロに思ってしまう傾向があったのです。

親の指示が、男の子の完璧主義の傾向とかんしゃくやパニックの原因になっていると思ったので、自分のことは自分で決めるやり方と、周囲の人は意外と適当に暮らしているから完璧でなくても大丈夫だよと伝えました」(宮尾先生)

宮尾先生は男の子の父親にもアドバイスをして、母親が子どもに構いすぎないように夫婦で外出することも勧めたそう。

後日、再来院した際に親子の状況をヒアリングすると、夫婦で出かけたことと、「お母さん、何となくうれしそうなんだよね」と男の子から話が聞けたといいます。

これは親子や夫婦の不適当な距離が、子どもの困った行動を引き起こしたケースです。

子育ては子どもが社会に出たときを見据えることが大切

子どもの困った行動を目の当たりにすると、親は即効性のあるテクニックでその場をおさめたくなります。

しかし、宮尾先生は、もう少し先を見据えて「社会の中で我が子がちゃんとやっていけるように、自問自答する“もう一人の自分”を子どもの中に育ててあげることが大切」だと話します。

「あることを子どもがやった際に、我が子が一般的な方法や便利な方法ができなかったときは、親はやり方を上から指示するのではなく、『そういう方法なんだね。でもこう考えてみてもいいんじゃない?』などと呟いてあげるといいでしょう。

子どもがもっと幼いころ、ケガをしたときに『痛いの、痛いの、飛んで行けー』といってあげたように、親御さんがお子さんの心を代弁して、“もう一人の自分”を子どもの心の中に育ててあげてください」(宮尾先生)

親の指示が価値基準の子には、“もう一人の自分”は心の中に育ちません

しかし、子どもの中に自分で考える土台が作られていくと、立ち止まって思いをめぐらせるようになり、次第に相手の立場を想像できる自分も育ってきます。自分の困った行動に対しても、客観的な視点が備わってくるでしょう。

困った行動が増える原因とは?

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