子どもが真夜中まで起きている【発達障害・発達特性のある子】の生活リズムや睡眠の悩みに専門家が回答

#4 子どもが寝なくて困っています〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

写真:アフロ

発達障害や発達特性のあるお子さんの保護者の方からのご相談に、言語聴覚士・社会福祉士であり、発達障害のお子さんの療育とご家族の支援に長く携わってきた原哲也先生がお答えします。

お子さんとの生活が楽しくなり、保護者の方の負担が軽くなるような実践的なアドバイスをお伝えしていきます。第4回は、こちらのご相談です。

子どもが真夜中まで起きて遊んでいます。睡眠不足が心配ですし、親も寝不足でつらいです。どうしたらいいでしょうか?

発達障害のある人の場合、実に3割以上に睡眠障害があると言われます。

その原因としては、発達障害のある人は睡眠と覚醒を調節する中枢神経系の機能不全があって、そもそも「寝る/起きる」のリズムが作りにくいこと、加えて日常生活において大きな不安やストレスを抱えていることが不眠につながるなど、さまざまな要因が考えられます。

今回は、ご相談への回答を通して、睡眠の基礎知識と睡眠に障害を抱えやすい発達障害のある子が、生活リズムを整えて「良質の睡眠」を確保する方法についてお話ししたいと思います。

【これまでの回を読む】
第1回 発達障害かどうか気になります【発達障害・発達特性のある子のお悩みに専門家が答えます】
第2回 2歳ですが言葉が遅く心配【発達障害・発達特性のある子】の育児の悩みに専門家が回答
第3回 偏食がひどくて困っています【発達障害・発達特性のある子】の育児の悩みに専門家が回答

睡眠不足は何が問題か 

例えば3歳児は12時間睡眠が理想とされるので(表1)、「真夜中まで起きて遊んで」いたのでは明らかに睡眠不足です。

近年の研究で、睡眠は、身体の疲労をとるだけでなく、子どもの脳の発達、ひいては情緒の安定にも深く関わること、子どもの脳・身体・心の発達のためには「良質の睡眠」が必要であることがわかってきました。 睡眠不足だと脳や身体の発達が阻害されかねず、また、睡眠不足による身体の不調は子どもの情緒不安定や意欲の低下につながりかねません。ですから、子どもの「良質の睡眠」が確保されなくてはならないのです。

表1 理想的な睡眠時間(乳幼児は昼寝を含む)(※『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』成田奈緒子・上岡勇二著、産業編集センター刊 p.53を参考に作成)

「良質の睡眠」とは 

(1)ノンレム睡眠とレム睡眠

ところで「良質の睡眠」とはどういう睡眠でしょうか。
睡眠には、ノンレム睡眠とレム睡眠という2種類の睡眠状態があり、それぞれの睡眠状態のときには次のようなことが起きています。

(2)「良質の睡眠」 

「良質の睡眠」は①~④が十分に行われる睡眠であり、そのためには、

・睡眠前半に深睡眠 (深いノンレム睡眠)が確保されること
・ノンレム睡眠→レム睡眠が一晩に4~5回繰り返されること
・睡眠中盤から後半にかけてレム睡眠の量が確保されること
・レム睡眠が覚醒などで途切れないこと

が必要です。そしてこの状態を作るには、表1の「理想的な睡眠時間」が必要であり、そのために、「寝る/起きる」の生活リズムを整える必要があるのです。

生活リズムを整えるには「朝の太陽の光を浴びる」 

人はメラトニンという脳内物質が分泌されると眠くなります。

メラトニンは朝起きて太陽の光を浴びると分泌される、セロトニンという脳内物質を材料に作られます。そして、メラトニンの分泌は、太陽の光を浴びた約14時間後(例えば朝7時起床だと夜9時)から始まり(=眠くなる)、翌朝、太陽の光を浴びると分泌が止まります(=目が覚める)。

つまり「朝起きて太陽の光を浴びる」ことで、夜に眠くなり、朝には目が覚めるという生活リズムが作られるのです。ですから、「寝る/起きる」の生活リズムを整えるには、まずは「朝きちんと目を覚まして太陽の光を浴びること」が必須なのです。

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