“子育て支援”が受けられない! 【闘病ママ】の子育てに「申請・無理解・制限」の“高すぎる壁”

第2回「闘病ママの子育て」~届かない子育て支援編~

一般社団法人「てくてくぴあねっと」代表:うえやま みか

「私が声を上げなくては」と団体の立ち上げに

「今ある子育て支援制度は、健康な親が使うことを前提にしている」と痛感したうえやまさん。それでも、こうした制度の穴は徐々にふさがれるだろうと淡い期待を抱き、2020年に次男を出産しました。

「ですが、次男を産んだ後も、長男のときと同じことで悩む自分がいました。状況はよくなるどころか、時はコロナ禍の真っ只中で、保育園もファミサポも利用が制限。以前に増して、孤立無援の子育てになりました」

これは誰かが声を上げて動かないといつまでも変わらないんじゃないか──そう気づいたうえやまさんは「それなら自分が声を上げよう」と決意します。

がん患者のママ・パパを支援する団体はあった。ならば難病や慢性疾患の領域でも、当事者同士がつながれる機会を作ろうと、立ち上がりました。

さっそく知人の紹介で知り合った闘病当事者のママたちと2020年に任意団体を設立。翌21年に法人化し、現在の一般社団法人「てくてくぴあねっと」を設立します。

現在、難病を始めさまざまな慢性疾患を抱え子育てしている人が、情報交換をしたり励ましあえるよう、オンラインカフェやオープンチャット(以下「オプチャ」)などの場を設けています。オプチャの登録者は2025年9月現在約160人。

「同じような状況下で子育てしている親は大勢いるはず。どんなふうに子育てをしているかを知りたい」と、闘病ママ・パパたちの交流団体を設立。  写真提供:一般社団法人てくてくぴあねっと
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いろんな闘病ママたちとつながり、情報を共有できるようになったうえやまさん。しかしふたを開けてみると、申請まではたどりつけてもうまく利用につながったケースはごく一部という現状を再認識することに。

そのひとつが、障害者総合支援法で利用できる居宅介護(家事援助)の育児支援です。

●障害者総合支援法「居宅介護(家事援助)」の「育児支援」

・障害者の希望を踏まえた結婚、出産、子育てに係る支援の推進について/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/other/index_00002.html

・令和3年11月1日から「障害者総合支援法」の対象となる疾病が366に拡大されました/東京都福祉保健局障害者施策推進部地域生活支援課
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/about/soshiki/syougai/chisei/oshirase/361kakudai010701

「障害者手帳を持っていない難病患者でも一定の条件を満たせば、簡単な家事や子どもの日常的なお世話をしてくれるものです。

公園遊び、保育園の送迎、沐浴の手伝い、買い物、家族みんなが食べられる食事づくりなど。決められた時間内で、週3回使っているかたもいます。

ただ、家族が同居していれば使えないなど制限が多い。離婚して実家に住むことになったばかりに、高齢で頼れない親でも『家族がいるため不可』と判断されて支援が受けられず、せっかく戻った実家を再び出た方もいます。

私自身も申請しようとしたら、コロナ禍で夫が在宅勤務だという理由で、通りませんでした。夫は家にいても仕事に専念しなければならないため育児はできないのですが。実際に利用できた闘病ママは、私の知る限りごくわずかです」

民間は「最後の手段」に

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