「キリギリスになっちゃうよ」と親に言われた幼少期
──校庭に温泉宿があったら……なんて、想像するだけで心がほどける妄想です。ただ現代は子どもも大人も「いかに効率よく結果を出すか」といった、タイパ(タイムパフォーマンス)を求められますよね。妄想することは、真逆の行いのように感じてしまいます。
松素:そうですね、タイパ命の風潮を見ると、時代に取り残されてしまった気分になります。
思春期の息子の前で「こんなものがあったらいいな」なんてアイディアを独り言でつぶやいたら、「チャッピー(ChatGPT)に聞けばすぐ出てくるよ。ママが想像してるものは全部世の中にあるよ」と言われてしまって(笑)。ちょっと切ない気持ちになりました。
私のタイパが悪いのは、幼いころからなんです。
コツコツ勉強できる秀才タイプの兄と、愛嬌と要領の良さに恵まれた妹のあいだで、なかなか宿題に手をつけずにのんびり生きていた私。親からは「このままだとあなたはキリギリスになっちゃうよ」と𠮟られてきました。
童話「アリとキリギリス」の、キリギリスのようだと言われていたんですね(笑)。
タイパを求めることで 切り捨てられてしまうもの
松素:もちろん宿題はやったほうがいいと思います。でもすべての世界にタイパが当てはまるわけではないのかなと。たとえば作家という仕事は、決められた時間、机に向かっているだけで作品は書けません。
いろんな本を読んだり、経験を積んだり、誰かの話を聞いたり、一見創作とは関係なさそうに思える時間がとても大事です。近所の人と立ち話しているときに「すごいネタもらっちゃった!」みたいなこともよく起こります。
すべてのことをタイパがいい、悪いで判断していたら、大事なものを切り捨ててしまうのではないか。そんなことを考えていたときに編集者さんから「タイパをテーマに物語を書かないですか」とお話をいただいて。
まさに「私に必要なテーマだ!」と感じて書きあげたのが、『ダメダメ小学校 タイパわるいのダメですか?』なんです。
松素:学校で「理解できないものを調べる」というテーマの宿題を出されたしっかり者のアリマは、いつも宿題をやってこないキリオについて調べることにします。
スケジュールも勉強もしっかりこなすアリマは、先のことを考えずに生きているのに、人気者のキリオにちょっとイライラ。けれども放課後、塾を休んでキリオについていったアリマは、ある発見をします。
アリマの研究はどのような結果になったのか、続きはぜひ本でお楽しみいただけたら嬉しいです。ちなみに、私はキリオタイプの小学生でした(笑)。
──大人でも学ぶことがありそうなお話ですね。松素さんのお話を伺っていると、保健室で過ごした時間も授業中の妄想も、一見「タイパが悪い無駄な時間」に見えて、じつは人生を支える大切な栄養になっていたのだと思いました。最後に、いま学校の枠や効率主義のなかで息苦しさを感じている子どもたち、そして子どもを見守る親御さんへメッセージをお願いします。
モヤモヤは大人になるための大事な「成長痛」
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