娘には体調も再発のリスクも包み隠さず話す
闘病の中で、特に抗がん剤治療中は、言葉に言い表せないほど体が辛かった。その気持ちを娘にも共有したくて、率直に話していました。「今日はすごく具合が悪いんだ」と。すると娘の方も、母の表情がなぜ曇っているのか、なぜ元気がないのかが分かり、ほっとしたようです。
「私のせいで機嫌が悪いんじゃないんだ」「私が悪い子だからママは怒っているわけじゃない」――こう分かるだけでも、娘の精神は安定したと思います。幸い、娘はすごく労わってくれるタイプなので、私が辛いというと足をさすってくれたりする。娘には精神的な面でも、とても助けられました。
私は両胸を切除したとはいえ、再発のリスクもあります。そのことも娘には伝えているし、遺伝子検査の結果、娘にも50%の確率でがんになるリスクがあることも伝えています。やはり、突然その可能性を教えられるのは、子どもにとっても青天の霹靂(へきれき)で、酷(こく)だと思うから。
それよりは、「もしかしたらママはまた病気になるかもしれない」「私もママと同じ病気になる可能性がある」と覚悟しながら成長していった方がいい。折に触れて言われ続けることで、「そういえばママが言ってたな」ってぼんやりと頭の片隅にある方が、いざという時の衝撃がいくぶんやわらぐのではないか、と判断しました。
もちろん、フォローもしています。「もしママの病気が再発しても、治せるように今からプランを立てているから大丈夫。そして万一あなたがママと同じ病気になったとしても、大事に至らないようにママがぜーんぶ準備している。だから安心して」と。
私は普段から娘に何かがあれば相手が誰だろうと必ず向き合い、全身で娘を守っていますから、娘も「ママは自分のことを守ってくれる」と思っているはず。そこは自信があります。
がんの治療を通して、娘との絆は一層深まったように思います。その意味でも、包み隠さず打ち明けてよかったと思っています。
取材・文/桜田容子
栗原友さんの記事は全3回。
2回目はは2021年12月27日公開です(公開日までURL無効)
第2回(#2) 料理家・栗原友さんが母・はるみさんから受け継いだ“おいしい幸せ”の記憶
3回目はは2021年12月29日公開です(公開日までURL無効)
第3回(#3) 料理家・栗原友さんのメリハリ論「手間を省きつつ“母の味”もしっかり残す」
桜田 容子
ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。
ライター。主に女性誌やウェブメディアで、女性の生き方、子育て、マネー分野などの取材・執筆を行う。2014年生まれの男児のママ。息子に揚げ足を取られてばかりの日々で、子育て・仕事・家事と、力戦奮闘している。
栗原 友
料理家 2005年から料理家としてレシピを紹介。東京・築地場外の水産会社に勤務しながら食育の講演会、料理教室、執筆など活動を広げる。現在は、「株式会社クリトモ」代表として、コンサルティングやメニュー開発などのほか、東京・目黒の飲食店「クリトモ式混ぜ麺」「クリトモ式ツナマヨ混ぜカレー」を運営、2021年1月には築地の鮮魚店「クリトモ商店」をオープンさせるなど、経営者としても精力的な活動を行っている。 著書に『ひとりぶん、ふたりぶん 刺身パックでさかなつまみ』(プレジデント社)、『クリトモの大人もおいしい離乳食』 (扶桑社BOOKS)など。父は元キャスターの栗原玲児さん。母は料理家・栗原はるみさん。3歳下の弟は料理家・栗原心平さん
料理家 2005年から料理家としてレシピを紹介。東京・築地場外の水産会社に勤務しながら食育の講演会、料理教室、執筆など活動を広げる。現在は、「株式会社クリトモ」代表として、コンサルティングやメニュー開発などのほか、東京・目黒の飲食店「クリトモ式混ぜ麺」「クリトモ式ツナマヨ混ぜカレー」を運営、2021年1月には築地の鮮魚店「クリトモ商店」をオープンさせるなど、経営者としても精力的な活動を行っている。 著書に『ひとりぶん、ふたりぶん 刺身パックでさかなつまみ』(プレジデント社)、『クリトモの大人もおいしい離乳食』 (扶桑社BOOKS)など。父は元キャスターの栗原玲児さん。母は料理家・栗原はるみさん。3歳下の弟は料理家・栗原心平さん