
【10歳の壁】『整形したい』と言い出した子どもに親は何を伝えるべき?ルッキズム時代の想定問答
『つまり、それがルッキズム ~23の事例と解説~』著者インタビュー (2/4) 1ページ目に戻る
2026.07.01
ライター:小川 聖子
10歳は「自分を取り巻く目」が一気に増える難しい時期
──前川さんは前の著書の中で、10歳のころにクラスの子につけられたあだ名がきっかけで、自分の見た目を過剰に気にするようになってしまったと振り返られています。今の子どもたちを取り巻く環境を、お二人はどう捉えていますか。
ウィルソン麻菜さん(以下、ウィルソン):私自身、8歳の娘と5歳の息子を育てていて実感するのですが、10歳前後というのは、それまでの「家族だけの世界」から「お友だちやまわりの人たちとの世界」へと、一気に社会が広がっていく時期なんですね。
同時に、その新しい世界で生きていくために、周囲の目が気になり始める時期でもあります。これまでは親の価値観に疑問を持たなかった子どもたちも、他者からの評価に晒されるようになり、さらに今はそこにSNSまでが入ってくる。子どもたちを取り巻く「目の数」が異常に増えているな、と感じます。
誰かが自分を直接ジャッジしてくるだけでなく、ネット上の誰かの容姿に対して、見知らぬ人たちがさまざまな言葉を投げ合っている光景まで目に入ってきます。多感な時期の子どもたちにとって、この環境は想像以上にプレッシャーが大きい気がします。
前川裕奈さん(以下、前川):今の10代はルッキズムが「激化」している状況だと思います。私の友人に10代のお子さんを持つ人がいるのですが、彼女の言葉を借りるなら、今は「娘の敵の数がすごい」と。
私たちの時代は、テレビの中の限られた芸能人だけが「美しい存在」でしたが、今はTikTokを開けば、一般の人も含めてキレイな人は無限に出てくる。その結果、一部で「スマホを開けばみんなキレイ、みんな敵、それに比べて自分はブス」と思い詰めてしまう状況が起こっています。
さらに美容医療のハードルが下がったことで、世間の「美の基準」そのものがかなり高くなっているのも事実です。
一方で、SNSの普及はネガティブなことばかりではありません。ポジティブなメッセージや、「ルッキズムってこういう問題だよ」という注意喚起のメッセージも、ショート動画などで届きやすくなりました。
情報の取捨選択を自分の頭でできる、リテラシーの高い10代も確実に増えています。学校の中でも、ルッキズムに囚われてしまう子と、そこから脱却しようとする子の二極化が始まっているような気がしています。
親の「悪気のない自虐や謙遜」を、子どもはすべて聞いている
──そんな厳しい世界に出ていく子どもたちのために、親はどんな意識を持てばいいのか、また家庭でできることはあるのでしょうか。
前川:家の中での対話も大切ですが、まずは親自身が「ルッキズムに加担しない」と決めるだけでも大きな一歩だと思います。例えば、たまに集まる親戚の席などでは、悪気なく「なんか太ったね」「痩せた?」という容姿の話題が飛び交うことがありますよね。
空気を壊したくなくて「そんなこと言っちゃダメだよ」と強くはいさめられない関係性の場でも、「そういう話題のときは黙る」「一緒に笑わない」と決める。それだけで、自分のスタンスを保ち、子どもを守る自衛になります。
もしカジュアルに言える関係性なら、「なんでそんなこと言うの?」と無邪気に質問で返してみるのも手です。質問で返すと、相手はハッとすることも多いです。
ウィルソン:毎日顔を合わせる家庭内では、親の「癖」がダイレクトに子どもに伝わる気がします。特に気をつけたいのは、親自身の「謙遜」や「自虐」です。
近所の方から「○○ちゃん、かわいいね」と褒められたときに、親が「いやいや、そんなことないですよ」と否定してしまう。あるいはママ友との会話で、「お宅の子は背が高くていいけど、うちの子はこれ以上伸びないと思うから残念」などと言ってしまう。親同士の何気ない会話であっても、子どもは驚くほどよく聞いています。
さらに盲点なのが、親が自分自身に向ける自虐です。「太っているからこの服は着られない」「私なんて美人じゃないから」といった言葉。親は自分のために言っているつもりでも、子どもにとっては「痩せていないとダメ、美人じゃないと恥ずかしい」といった価値観として刷り込まれ、それが世界を見る基準になっていってしまう可能性もあります。
──確かに、親とそっくりの話し方をするお子さんを見かけることがありますね。
ウィルソン:そうなんです。さらに無意識的に親がしてしまうことに、他の子どもたちの特徴を「あのかわいい子」や「背が高い子」など容姿に絡めて表現してしまうことがあります。これが良くないほうに発展すると、「あの子はかわいいからモテるでしょ」と過剰に持ち上げてしまったり、「○○ちゃんは背が伸びないね」と無意味な比較をしてしまったりして、子どもに「外見で人を評価する価値観」を植え付けてしまうことがあります。
本当は「サッカーを頑張っている子」「理科が好きな子」など、容姿に触れなくても伝える方法はたくさんあるのに。容姿であっても「よくポニーテールしてる子」みたいな、その子が選んでしているものならいいですよね。とにかく、まずは大人がそういった癖に気づくことが大切だと思います。


































