おこづかいは少額・現金で! お金のプロが作った最強のおこづかい帳で学ぶ「欲望の限界」

家族で育むお金のセンス (4/4) 1ページ目に戻る

ライター:中村 美奈子

手元にお金がない場合の「方法選択」が重要!

:最初に「意思決定のツリー」の一番下にある緑の丸の中に、ほしいものと予算を書きます。ここできちんと値段を調べるのも大切なこと。消費税までしっかり入れておくとよいですね。

「おこづかい計画帳」の「意思決定のツリー」ページ
すべての画像を見る(全11枚)

:次にどうやって手に入れるか、方法を考えます。「おこづかい計画帳」では、4つ書けるようになっているので、思いついた方法を書いてみましょう。

──4つも思いつくのか心配です……! 「貯金をして買う」、「親に買ってもらう」、「お年玉で買う」ほかに、なにかありますか?

:もっと頭をやわらかくして考えてみましょう。ゲームソフトや漫画だったら、友達やお店で「借りる(レンタルする)」という方法があるでしょう? もしきょうだいがいたら、「お金を出し合って買う」こともできます。コンサートのチケットだったら、申し込みの期限があるものだから、すぐにお金がいります。そうしたら「親からお金を借りる」という選択肢が考えられますね。

──なるほど。推しが同じなら「親といっしょに行く」という方法もアリですね!

:もちろん、どうしてもお金の都合がつかなければ「あきらめる」という選択も必要でしょう。でも最初から「あきらめる」を選べる子はいません。私のセミナーで、勉強机のイスに合う、ピンク色のクッションがほしいと書いた小学1年生の子は、「自分で手作りする」という方法を思いついていました。このように、目的を達成するにはいろんな方法があるということを、自分で見つけるのが大切なんです。

方法を思いついたら、次にその方法の「わるいところ」と「よいところ」を挙げていきます。

例えば、ゲームソフトを「貯金をして買う」場合の「わるいところ」は、実際にソフトを手に入れるまでに時間がかかること。最新ゲームをプレイできるんだと友達に自慢したいのに、できないことです。ゲームは次々と新しいものがでるので、お金が貯まったころには、違うゲームソフトがほしくなるかもしれません。でもお金が貯まっているので、別のゲームソフトがほしくなっても買えるところが「よいところ」ですね。時間を置いて考えたら「そんなにほしくなかったのかも」と思うかもしれないので、ムダづかいをしなくてすんだというのも「よいところ」といえるかもしれません。

「おこづかい計画帳」の「意思決定のツリー」ページ
「おこづかい計画帳」の「意思決定のツリー」を使って、税込み7,128円のゲームソフトを手に入れるための方法を考えたもの。

──未来を想像しているみたいで、考えるのが楽しいですね! それにじっくり考えていくと「ほしい!」という気持ちがちょっとずつ小さくなる気がします。

:それも狙いです。お金と引き換えに、自分はなにを手に入れるのか。手に入れたものは、本当に自分がほしかったものなのかを落ち着いて考えてみると、自分の「欲望の限界」がみえてきます。4パターン全部書くことができたら、最後に1つ選んで、他の3つは諦めましょう。これを繰り返し体験して、何かを得たら別の何かを失うという「トレードオフ」の考え方を身につけていくんです。

ほしいものができるたびに「意思決定のツリー」をやると、今までの自分のお金の使い方を振り返ると同時に、新しい方法を考えつくことができるかもしれません。もちろん「諦める」という選択肢もひとつの答えです。そうしたら、考えた結果「諦める」と自分で納得できるようになる「我慢できた満足感」と「自立心が」育っているということです。

──子どもが自発的に「我慢すること」を覚えてくれるなんて、すごいです!

:「意思決定のツリー」のより詳しい書き方を『動く図鑑MOVE お金と経済』で紹介しているので、参考にしてみてください。

『動く図鑑MOVE お金と経済』より「おこづかいの使い方」の説明ページ
『動く図鑑MOVE お金と経済』より「おこづかいの使い方」の説明ページ
自分にとって「必要なもの」と「ほしいもの」を分ける考え方や、ほしいものを手に入れる方法がひとつではないことを「意思決定のツリー」で説明しています。『動く図鑑MOVE お金と経済』より

3ヵ月先の予定を見ながらお金を管理する

:方法が決まったら、さっそくお金の流れを書いていきます。このとき、できれば3ヵ月先まで考えられるように、3枚ページをつなげてください。

──なぜ3ヵ月なんですか?    

:本当は6ヵ月くらいが理想ですが、3ヵ月ほどあれば、大きなお金を使うタイミングがわかるからです。1月からおこづかい計画帳をつけ始めると、2月にバレンタインデーがあって、3月には春休みがあります。春休みにお出かけする計画があったら、「おでかけで使うお金を残しておかなくちゃ」と準備することができます。

でも、お金は好きなものだけではなく、必要なものを買うためにも使わなければいけません。それを「お金を使う計画」に書いていきます。

次のおこづかいをもらう日になったら、もらったお金と使ったお金を合計して、残ったお金を出します。最後に自分の感想を書いたら、おうちの人にも感想を書いてもらいます。「今月は貯金をがんばったね」とか「ほしいものが買えてよかったね」という一言でいいんです。感想は、家族でお金の話をするきっかけのひとつ。お金の話はタブーではないという感覚を、ぜひ身につけてもらいたいですね。

「おこづかい計画帳」で身につく3つの力

──「おこづかい帳」を使うと身につくことはなんですか?

:ひとつは自立性と自主性です。自分のお金を自分で使うと、子どもは「大人」の仲間入りをした気分になります。失敗も成功も全部自分だけのものという体験は、かけがえのないものです。ふたつ目は計画性。3つ目が貯蓄の習慣です。

大切なのは金銭感覚を養うことなので、収支が合わないことには多少目をつぶって、楽しくできるレベルでやり続けてみてください。そしてやっぱりおこづかいは、現金がおすすめです。お金と交換でものが手に入るというお金の機能を覚えられるし、使ったら減るのが目に見えてわかるのが一番のメリット。ぜひ試してみてくださいね。

「おこづかい計画帳」をダウンロードする

A4サイズで印刷したら、真ん中で折って使ってね!

おこづかい計画帳

OkodukaiKeikakucho.pdf (317 KB)
お金と経済

お金と経済

講談社(編)  泉 美智子(監)

発売日:2025/11/28

価格:価格:本体2700円(税別)

この記事の画像をもっと見る(全11枚)

前へ

4/4

次へ

44 件
いずみ みちこ

泉 美智子

Izumi Michiko
子どもの環境・経済教育研究室代表

子どもの環境・経済教育研究室代表。公立鳥取環境大学経営学部准教授(2018年3月まで)、放送大学、四国学院大学(子ども福祉学科)非常勤講師。全国各地で「女性のためのコーヒータイムの経済学」や「エシカル・キッズ・ラボ」「親子経済教室」など公演活動のかたわらテレビ、ラジオ出演も。著書に『調べてみようお金の動き』(岩波書店)、『はじめまして!10歳からの経済学』(ゆまに書房)ほか、環境、経済絵本、児童書の執筆多数。

子どもの環境・経済教育研究室代表。公立鳥取環境大学経営学部准教授(2018年3月まで)、放送大学、四国学院大学(子ども福祉学科)非常勤講師。全国各地で「女性のためのコーヒータイムの経済学」や「エシカル・キッズ・ラボ」「親子経済教室」など公演活動のかたわらテレビ、ラジオ出演も。著書に『調べてみようお金の動き』(岩波書店)、『はじめまして!10歳からの経済学』(ゆまに書房)ほか、環境、経済絵本、児童書の執筆多数。

なかむら みなこ

中村 美奈子

Minako Nakamura
ライター

絵本サイトの運営に関わり、絵本作家への取材も多数。また漫画、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなど幅広いエンターテインメントジャンルで記事を執筆。漫画家や声優、役者、監督、クリエイターなど、これまでに200名以上へのインタビューを経験している。

絵本サイトの運営に関わり、絵本作家への取材も多数。また漫画、アニメ、映画、ゲーム、アイドルなど幅広いエンターテインメントジャンルで記事を執筆。漫画家や声優、役者、監督、クリエイターなど、これまでに200名以上へのインタビューを経験している。