【中学受験 はじめの一歩】 失敗しない「塾選び」 首都圏・関西圏「6大塾」の特徴を徹底分析 〔塾ソムリエが解説〕
【塾選びのポイント#3】「塾ソムリエ」西村則康さんが教えるSAPIX、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミー、浜学園、希学園の違い
2025.01.10
【SAPIX】
「男女ともに御三家を狙うのならば、SAPIXを検討すべきでしょう」と西村さん。学習の進度も非常に速く、先取り学習が基本です。「授業自体のスピードも速いので、例えば、計算スピードが遅い場合、演習時間内に問題をこなすことができず、自信をなくしてしまう子もいます。授業の初めにテキストが渡されるので、予習はできません。復習に重きを置いています。算数は多くの解法パターンを学習します。国語は記述問題対策に力を入れていて、専用のテキストが毎週用意されているのが特徴です」(西村さん)。学習習慣がしっかり身についていて、なおかつ意欲的に勉強に取り組める子向きといえます。
・難関校の合格実績はトップクラス
・学習の進度が非常に速い(授業自体のスピードも速い)
・復習中心の学習が重視される
【日能研】
成績上位者に限らず、幅広く受け入れ態勢が整っているのが日能研です。人気の中堅校の合格実績が高いのも特徴です。「学習の進度がゆったりしているので、予習は必要なく(予習を禁止している校舎もあります)、ある程度、子ども自身のペースで受験勉強を進めることができます。上位校の受験にも、中堅校の受験にも対応しているのが特徴です。『なぜ?』『どうして?』と子どもに考えさせる対話型の授業を中心に展開しているクラスもあります」(西村さん)。日能研のテスト(育成テスト)には、算数ですら説明を求める記述問題が必ず入り、近年の中学受験問題の傾向である「情報読み取り力」を試す問題にも、手厚く対応しています。じっくり物事に取り組むのが好きな子向きといえます。
・人気の中堅校の合格実績が高い
・学習の進度がゆったりしている
・予習は不要で、復習を重視
【四谷大塚】
公開学力測定テスト「全国統一小学生テスト」を実施していることから、なじみがあるという人も多いのではないでしょうか。授業で使われるオリジナル教材「予習シリーズ」は、完成度が高く、中学受験予定者の半数以上が使用しているといわれています。「単に知識を詰め込むだけでなく、予習と復習をバランスよく行いながら、思考力や想像力を伸ばす学習を展開しています」(西村さん)。「独立自尊の社会・世界に貢献する人財」「世界で活躍する未来のリーダー」を育成することを目標に掲げているのも特徴です。SAPIXに比べればややゆっくりではあるものの、「ここ数年でカリキュラムの進行が速く、難しくなってきているため、ある程度の学習スピードが求められるようになってきています」(西村さん)。
・オリジナル教材が充実
・ある程度の学習スピードが求められる
・予習と復習をバランスよく行う
【早稲田アカデミー】
四谷大塚の「予習シリーズ」を採用する早稲田アカデミーは、「『本気でやる子を育てる』という教育理念を掲げ、熱血な体育会系の先生が多いのが特徴です」と西村さん。「『予習シリーズ』だけではなく、早稲田アカデミー独自の教材も使用するので、学習量が多く、コツコツと忍耐力のある子に向いているといえるでしょう。予習と復習目的の宿題の量も比較的多いのも特徴です」(西村さん)。学習が定着するまで、繰り返し反復学習を行うなど、先生のサポートが手厚いイメージもあります。6年生になると、難関中学への合格を見据えた「NN(なにがなんでも)志望校別コース」や、同じ学力の仲間と競い合う「難関プログレスコース」などいくつかのコースが用意されています。
・情熱的な指導が特色
・学習量が多く、忍耐力が求められる
・予習と復習目的の宿題の量が比較的多い
【浜学園】
灘中学の合格者数で日本一を達成。「日頃から競争環境に身を置き、強い心を育む」という教育理念を掲げているため、学ぶ意欲や競い合うのが好きな子に向いています。オリジナルのテキストの完成度は高く、先生の質が高いのも特徴です」(西村さん)。「講義→家庭学習→復習テスト」といったサイクルを日々実践することで、学力向上を目指します。復習を重視するため宿題が多く、長時間の家庭学習が求められます。
・灘中学の合格者数が日本一
・競争心を伸ばす環境
・復習を重視し、宿題が多い
【希学園】
最上位校を狙う層に人気があり、学習量は全国トップクラスの希学園。「灘、東大寺、洛南、神戸女学院など、関西の最難関校へ多くの合格者を出しています。先取り学習ができていて、自立心があり、体力的にも自信がある子にお勧めです」(西村さん)。志望校別の対策講座が充実。授業終了後に約1時間の自習時間があり、宿題を中心とした学習ができるようになっています。面倒見がいい塾としても評判が高く、首都圏にも校舎が増えています。
・関西の最難関校への高い合格者数
・志望校別対策講座が充実
・自習時間があり、自立心が求められる
東西の大手進学塾の特徴を、簡単に見てきました。どんな塾が我が子には合っているのか、ぜひ参考にしてみてください。
ただ、塾に入れたから安心ではなく、中学受験は保護者の伴走も不可欠。親がどのように寄り添ってあげるかも、重要となってきます。第1回で紹介した「中学受験をする目安」や、第2回で紹介した「中学受験に必要な力」などもしっかりと把握したうえで、我が子にあった塾を選んであげたいですね。
取材・文・構成/えのとまり
西村則康(にしむらのりやす)
教育専門家。中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表、中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。日本初の「塾ソムリエ」としても活躍。難関中学・高校受験指導を一筋に行う家庭教師のプロフェッショナル。男女御三家、慶應、早稲田、海城、世田谷学園、渋谷教育学園幕張、灘、洛南高附属、東大寺学園、神戸女学院など、東西の難関校に合格させた生徒は3000人以上。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『「受験で勝てる子」の育て方』(日経BP)など多数。