絵本作家・北見葉胡の半世紀 登園拒否ぎみの幼稚園時代を母は見守ってくれた
講談社絵本新人賞選考委員・ボローニャ国際児童図書賞受賞作家が絵心を育てた60年を語る
2023.08.06
親は小さな子どもにとっては神です。
いじめっことは、クラス替えで離れたので、いじめは自然消滅しました。親を必要以上に心配させなくてよかったと思っています。
いじめられてもそんなに深刻な気分におちいらなかったのは「いざとなれば親がなんとかしてくれる」と勝手に思い込んでいたからかもしれません。親に言ってもいないのに、必ず自分を守ってくれると信じていました。親は小さな子どもにとって神なのですね。
絵心を目覚めさせてくれた大きな壁
そのころ、自分の部屋の壁に絵を描いてみたくなりました。家と庭と門と植物と道がひたすら増殖していく絵です。少しずつ描きながら想像の世界で遊んでいました。壁一面、絵ですっかり埋まったころ、これはあまり美しくないと気づきます。
当時の給食は牛乳瓶で上にブルーやピンクのビニールが被せてあり、きらきらして魅力的でした。それを絵の上にのりで貼れば、絵を隠せるし、綺麗な壁になって良いかもと思いつきました。給食の牛乳瓶からビニールを集めては、毎日壁にはっていきました。
壁一面にヒラヒラのビニールでびっしり埋まったところで、今度は、想像していたのと違うと気づき、はがしました。
家の漆喰の壁はビニールごとはがれ、穴だらけの悲惨な状況になりました。それでも親に怒られた記憶がないのです。もしかしたら母も父も、幼いころからマイペースだった私の行動を、あきらめていたのかもしれません。
文章をのせるにあたって、小さいころの絵はありませんか? と聞かれましたが、自宅が火事になって半焼してしまったので、小さいころの絵は燃えてないんですと答えるしかありませんでした。今回、はじめてのぬりえ絵本『花ぬりえ絵本 不思議な国への旅』の絵が小さいころから少しも変わっていない自分の世界であることに気づき、それをのせていただくことにいたしました。
幼稚園で一度だけ先生にほめられて以降、絵をほめられた記憶はありませんが、勉強しろと、言われたことのない私は、のんびり絵を描きつづけて画家になり、絵本作家になりました。
はじめてのぬりえ絵本『花ぬりえ絵本 不思議な国への旅』には小さいころからの私の夢が詰めこまれています。
『花ぬりえ絵本 不思議な国への旅』北見葉胡/講談社
●匂い立つような花々や森、不思議な町や妖精たちの塗り絵を楽しみながら、ひみつの世界への旅に出かけたような気持ちになれる、大人むけの塗り絵BOOKです。「妖精探し」のストーリーがあり、「妖精を見つける」楽しみもあります。
●「Fairy不思議な子を探す」「Time時空をこえる」「Village小さい人たちの家」「Forest森に暮らす」の4章構成。作家の緻密なカラーお手本掲載付き。本書掲載のQRコードを読み取って頂けたら、作家自身による、詳細レクチャーも御覧頂けます。塗り絵初心者から、上級者まで楽しめるつくりになっています。
●絵が上手くなる、全く新しい塗り絵と話題! 鉛筆で描いている絵なので、自分の鉛筆や色鉛筆で自由に描き足してオリジナル作品にできます。(塗っていくうちに、私も上手になりました!担当編集)
●順天堂大学医学部教授 小林弘幸さん、推薦! 「ぬりえをしていると、心が穏やかになります。体が元気になって、気持ちが明るくなります。」
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──北見さんの小学生時代、いかがでしたでしょうか。次回は、庭に穴をほって空想部屋を作ったお話、家を半焼させたお話、夢をかなえるまでのお話をお聞きします。
次回は8月16日(水)掲載予定です。
北見 葉胡
神奈川県生まれ。武蔵野美術短期大学卒業。児童書に、「はりねずみのルーチカ」シリーズ、「りりかさんのぬいぐるみ診療所」シリーズ(ともに作・かんのゆうこ/講談社)、絵本に『マーシカちゃん』(アリス館)、『マッチ箱のカーニャ』(白泉社)、『小学生になる日』(新日本出版社)など。書籍挿画に「安房直子コレクション」(全7巻/偕成社)、ぬりえブックに『花ぬりえ絵本 不思議な国への旅』(講談社)がある。2005年、2015年に、ボローニャ国際絵本原画展入選、2009年『ルウとリンデン 旅とおるすばん』(作・小手鞠るい/講談社)が、ボローニャ国際児童図書賞受賞。
神奈川県生まれ。武蔵野美術短期大学卒業。児童書に、「はりねずみのルーチカ」シリーズ、「りりかさんのぬいぐるみ診療所」シリーズ(ともに作・かんのゆうこ/講談社)、絵本に『マーシカちゃん』(アリス館)、『マッチ箱のカーニャ』(白泉社)、『小学生になる日』(新日本出版社)など。書籍挿画に「安房直子コレクション」(全7巻/偕成社)、ぬりえブックに『花ぬりえ絵本 不思議な国への旅』(講談社)がある。2005年、2015年に、ボローニャ国際絵本原画展入選、2009年『ルウとリンデン 旅とおるすばん』(作・小手鞠るい/講談社)が、ボローニャ国際児童図書賞受賞。