【動画】絵本作家さんに聞く絵本作りのポイント「肩の力を抜いて」「チャレンジしてほ欲しい」ながしまひろみさん×まつながもえさん対談

『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』デジタルお絵描きアプリ「CLIP STUDIO PAINT」ユーザー絵本作家インタビュー

まつなが:私はiPad Pro 12.9インチで「CLIP STUDIO PAINT」を使っていますが、紙に描いているのと同じ感覚で描くことができるので、すぐに慣れました。本当に紙に描いているみたいで、夢中になってしまいましたね。より紙に描いている感覚に近づけるために、iPadの画面に「ペーパーライクフィルム」を貼っています。

ながしま:私もiPad Pro 12.9インチを使っています。ラフと下書きを「CLIP STUDIO PAINT」で描いていますが、1つ前の工程にすぐ戻ることができるので、楽チンだなと思いました。

──デジタル作画のメリットとデメリットはなんですか?

まつなが:画面で見たときと、実際に紙に印刷されたときの色が違うので、イメージした色を伝えるのが難しいなと感じます。

ながしま: 確かにそうですね。私の場合、絵本で「CLIP STUDIO PAINT」を使うときは下絵のみで、着彩は「Adobe Photoshop®」、仕上げを色鉛筆などのアナログの画材で仕上げているんですが、まつながさんの絵のタッチは、手描きに近い感じがあります。線は何を使って描いていますか?

まつなが:実は1つのブラシしか使っていないんです。やっぱり好きなのはアナログの質感なので、どうすればアナログの質感がでるのかを考えながら、影をつけたり重ね塗りをしたりしています。「CLIP STUDIO PAINT」はいろんなペン・ブラシツールがありますが、使いこなしすぎるとデジタル感が出てしまうので、最初から1つのツールだけを使っています!

コツというほどでもないのですが、とにかく高速でシャッシャッとペンを動かして、色を重ねます。ラフを考えるのは集中力がいりますが、色塗りは作業なので、iPadさえあればちょっとした隙間時間で、どこでもサッとできるのが本当に便利で。

ながしま:やっぱりiPadの手軽さはすごくありがたいですね。「CLIP STUDIO PAINT」は漫画家さんに人気なので、漫画を描くイメージが強かったんです。でもまつながさんの使い方を聞いて「絵本でもいいんだ」と思いましたし、フルカラーでも描くことができるんだと驚きました。

この『こけしぞろぞろ』の湯気は、どんな風に描いているんですか?

こけしたちがお風呂屋さんに向かって大行進! 2025年2月6日発売予定『こけしぞろぞろ』作:まつながもえ 講談社より
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まつなが:一番上のレイヤーに、「デッサン鉛筆」という鉛筆ブラシを使って白を乗せていきます。タッチペンを2本の指と親指だけで持って、力を入れずにスッスッと流す感じで。すると良いあんばいで薄れて、ホワホワの湯気っぽく描けます。タッチの強弱だけで濃淡を表現しています。

──デジタル制作ならではの「失敗」はありますか?

ながしま:うっかり保存しないままアプリを閉じてしまったり、逆に試し描きだったのに上書き保存しちゃったりします……。

まつなが:私もあります。保存ミス、上書きは本当にうっかりやってしまうんですよね。また、勢いよくペンを動かしているので、誤りやミスに気づかないまま、ぐんぐん描き進めてしまうことがあります。その結果、思わぬところに影響が出ることもあって。そういうことがあるとショックを受けますが、そこはデジタル制作の良さで、取り返しがつくというのがすごく安心して使えるところです。

あと、デジタルだと拡大・縮小が自由にできますが、細部を描くときに拡大すると、等倍にしたときに描き込みの密度の違いで浮いてしまうことがあります。だから、全体の描きこみのバランスを取るために、一度紙でプリントして確認するとよいと思います。

ながしま:確かにそうですね。私の場合は、鉛筆のザラッとした感じを出すために、プリントアウトしたものに色鉛筆や水彩絵の具を重ねています。その時点で、全体を見ていることになりますね。

──最後に、応募者への応援メッセージをお願いします。

ながしま:私自身が、肩に力が入ってしまうとうまくできなくなるタイプなので、「大作を作ってやろう」と力まずに、今思いついたものをちょっと送ってみようかなという感じで、つくるといいんじゃないのかなと思います。

まつなが:出版につながるコンペはすごく貴重なもので、大きなチャンスです。自分が絵本作家になった姿を思い描きながら、チャレンジし続けてほしいです。

【動画】-絵本作家デジタル作画を語る-/ながしまひろみ×まつながもえ対談

【読者と選ぶあたらしい絵本大賞】-絵本作家デジタル作画を語る-/ながしまひろみ×まつながもえ対談

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ながしま ひろみ

Hiromi Nagashima
漫画家/絵本作家/イラストレーター

漫画家、絵本作家、イラストレーター。北海道出身。漫画に『やさしく、つよく、おもしろく。』(ほぼ日ブックス)『鬼の子』全2巻(小学館)。絵本に『そらいろのてがみ』、『まっくらぼん』(岩崎書店)など。

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漫画家、絵本作家、イラストレーター。北海道出身。漫画に『やさしく、つよく、おもしろく。』(ほぼ日ブックス)『鬼の子』全2巻(小学館)。絵本に『そらいろのてがみ』、『まっくらぼん』(岩崎書店)など。

まつなが もえ

絵本作家

1992年埼玉県生まれ、東京都在住。学習院大学文学部卒業。「みんながくすっと笑える絵本」をモットーに活躍している。第3回絵本塾カレッジ創作絵本コンクールにて『はにわくん』が大賞を受賞し、絵本塾出版より出版(2021)。第22回ピンポイント絵本コンペにて入選(2021)。第10回MOE創作絵本グランプリにてグランプリ受賞(2021)、白泉社より『からっぽのにくまん』を出版(2022年9月)。2022年より埼玉県加須市の観光大使を務めている。

1992年埼玉県生まれ、東京都在住。学習院大学文学部卒業。「みんながくすっと笑える絵本」をモットーに活躍している。第3回絵本塾カレッジ創作絵本コンクールにて『はにわくん』が大賞を受賞し、絵本塾出版より出版(2021)。第22回ピンポイント絵本コンペにて入選(2021)。第10回MOE創作絵本グランプリにてグランプリ受賞(2021)、白泉社より『からっぽのにくまん』を出版(2022年9月)。2022年より埼玉県加須市の観光大使を務めている。