児童文学作家への登竜門「傷を抱えた中学生」描く『放課後死体クラブ(仮題)』が新人賞に【第66回講談社児童文学新人賞】

「死体役になりたい」異色の部活小説

▲『放課後死体クラブ(仮題)』で第66回 講談社児童文学新人賞を受賞した日奈多黄菜(ひなた きな)さん
▲『放課後死体クラブ(仮題)』で第66回 講談社児童文学新人賞を受賞した日奈多黄菜(ひなた きな)氏。〔※お顔は非公開〕
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斉藤洋氏、柏葉幸子氏、森絵都氏、はやみねかおる氏など、多くの人気作家を輩出した新人賞として知られる「講談社児童文学新人賞」の授賞式が、10月29日(2025年)に東京都・文京区の講談社で開催されました。

第66回を迎えた今回は、「死体役になりたい」とホラー映画出演を夢見て部活動に励む中学生が主人公の青春小説、日奈多黄菜(ひなた きな)氏の『放課後死体クラブ(仮題)』が受賞。〔※(仮題)までが正式タイトル〕

新人賞受賞作品は単行本として刊行されます(賞金は50万円)。

▲授賞式では賞状と賞金が講談社第三事業本部本部長より授与された
▲授賞式では賞状と賞金が講談社第三事業本部本部長より授与された

授賞式では、各選考委員が受賞者に対する祝辞を述べ、受賞者に賞状と賞金を授与されました。

新人賞を受賞した日奈多黄菜氏は「この賞に憧れ、初めて応募したのが2009年。一点集中で応募を続け、16年目に受賞することができました」とコメント。

また、受賞作は「応募締め切りの早朝まで格闘し、なんとか書き上げた作品」と明かし、受賞の喜びを語りました。

『放課後死体クラブ(仮題)』

第66回 児童文学新人賞(2025度)には560作品の応募があり、応募者の最年少は10歳、最年長は96歳でした。

一次・二次選考を経て、候補が5作品に絞られたのち、同年8月27日に最終選考会が行われました。

最終選考会は、安東みきえ氏、如月かずさ氏、村上しいこ氏を選考委員に迎え、講談社・児童図書編集長を加えた4名で行われ、新人賞を決定。佳作は、該当作なしでした。

◆新人賞
正賞 賞状・記念品 / 副賞 50万円・単行本として刊行

『放課後死体クラブ(仮題)』

日奈多黄菜(ひなた きな) 

【あらすじ】
中学二年の瑞希はホラー映画を心から愛しているが、浮かないよう本心を隠して友達に合わせている。そんな瑞希が心ひかれるのは、好きを貫き、教室で堂々とホラー本を読む由木。映画館で偶然出会ったことをきっかけに、二人はホラー映画の巨匠・矢澤監督の映画で死体役を演じる夢を共有、「死体クラブ」を結成する。異なる傷を抱える二人は、支え合いながら演技と死体役の練習に励んでいくが……。

【プロフィール】
奈良県出身、大阪府在住。梅花女子大学児童文学科卒業。在学中は児童文学創作ゼミに所属。職員として働きながら、全国児童文学同人誌連絡会「季節風」で創作活動に励み、現在に至る。

講談社児童文学新人賞とは

講談社児童文学新人賞は、子どもたちのための、オリジナリティあふれる作品を発掘する新人賞。1959年に講談社創立50周年記念の文学賞として創設、現在では児童文学作家の登竜門として知られている。

これまでの受賞作は、松谷みよ子 『龍の子太郎』(第1回)、福永令三 『クレヨン王国の十二カ月』(第5回)をはじめ、柏葉幸子『気ちがい通りのリナ』(『霧のむこうのふしぎな町』に改題して刊行:第15回)、斉藤洋 『ルドルフとイッパイアッテナ』(第27回)、森絵都『リズム』(第31回)や椰月美智子 『十二歳』(第42回)など、児童文学から一般文芸まで幅広く活躍する作家・作品を輩出している。(敬称略)

撮影/栗原 朗

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