
小学校低学年が「消えたい」「生きるのがしんどい」 子どもの「自己決定力」の育て方とは?〔精神科医〕が解説
精神科医さわ先生に聞く、「ちょうどいい親子の距離感」 #3
2025.09.01
自立は「自分で選んで生きる」こと
最近では、小学校低学年くらいから「消えたい」「生きるのがしんどい」と話す子が増えてきました。その背景には、「どうせ自分の意見は聞いてもらえない」「親が全部決めてしまう」という思いが隠れているケースが少なくありません。
たとえば一生懸命に努力して医学部に入っても、それが自分の意志ではなく、親や周囲が勧めた仕事だったとしたら、心が満たされずに折れてしまうこともあります。
だからこそ、自立には「主体性」が欠かせません。「自分で選んで生きる」という実感こそが、自分の人生を歩む土台になり、また将来の幸福感や納得感にも大きくかかわってきます。
「あなたはどうしたい」と小さいころから聞く

では、いつから子どもの自己決定力を育てていけばいいのでしょうか。
私は、子どもが会話できる年齢であれば、どんなに小さくても「あなたはどうしたい?」と聞く習慣が必要だと思っています。
例えば、友だちとのトラブルが起きたとき、「まだ小さいから親が決めて当然」と考えるのではなく、まずは子どもに「お母さんやお父さんに何をしてほしい?」と聞いてみてください。
「相手のママパパに言ってほしい?」「先生に相談してほしい?」など、どうしてほしいかを聞くと、子どもは自分の気持ちに向き合い始めます。
そして最終的な行動は、できるだけ子ども自身に任せてあげることです。状況によっては、親がサポートしたり、必要な判断を一緒に考える場面もあるでしょう。
しかし、子どもは「どうしたい?」と問われる経験を重ねることで、「自分で決めた」という実感と責任感が育ちます。
日常のちょっとした選択も尋ねるようにしてみてください。例えば、朝ごはんのときに「今日はごはんにする? パンにする?」などでもよいのです。そんな何気ないやりとりの積み重ねが、親に意見を尊重されたという感覚を育ててくれます。