
「キレやすい子ども」と信頼関係を築く3つの方法 親が変わるべき「𠮟り方」と「ほめ方」[専門医が解説]
#4児童精神科医が説く「キレる子ども」の受け止め方~キレにくい親子関係の築き方~
2025.07.21
児童精神科医:原田 謙
子どもと何気ない時間を分かち合うシェアタイム
落ち着いているときの日常的な取り組みは、いわば「土台づくり」のようなものです。日常生活のなかで子どもの話を聞いたり、子どもをほめたりすることによって、信頼関係の土台を築いていく、あるいは築き直していくのです。
土台づくりのために、週に1回「シェアタイム」を実施しましょう。子どもと何気ない時間を分かち合うという方法です。親が子どもと一対一で、20~30分程度の時間を過ごします。
この時間の目的は一緒に楽しむことです。子どもに主導権を与え、子どもの望むことをします。指示や命令は出さないでください。本人の希望にそって、絵を描いたりボードゲームで遊んだりします。料理やドライブもよいでしょう。
基本的には何をしてもよいのですが、テレビゲームや動画視聴のように並んで画面を見続けることは適度な交流にならないので、できれば避けたいものです。

シェアタイム中に好ましい行動があったらほめてください。一方、暴力や暴言が出た場合には、シェアタイムを中止してクールダウンなどを実行します。中止になる可能性を、事前に説明しておくとよいでしょう。
また、中学生以降は本人が親と遊ぶことを好まなくなったり、塾や部活動で忙しくなったりして、シェアタイムを設定しにくくなる場合もあります。
その場合には「塾への送迎のときに話を聞く」「メッセージアプリで何気ないやりとりをする」といった交流をするのもよいでしょう。何気ないやりとりが、親子関係をほぐすことにつながり、シェアタイムの代わりになります。
「共感」できなければ「共有」を意識する
子どもとの間に信頼関係を築くためには、大人がその子の気持ちに共感を寄せることが大事だとよくいわれます。しかし、キレる子どもの気持ちには共感しにくいこともあります。
例えば、子どもが友達のことを「死んだほうがいい」「殺したい」と言っているときに「殺したい気持ち、わかるよ」とは言いがたいのではないでしょうか。
子どもの発言に「共感」しにくいとき、私はその子の気持ちを「共有」することを意識しています。子どもの話をそのまま受け止めて「殺したいと思っているんだね」などと返答するのです。
共感できなくても、話題を共有することはできます。「そうなんだ」と受け止めたあと、「どうしてそう思うの?」と聞いてみると、子どもがもう少しくわしく語り出すこともあります。
子どもが「あの子に死んでほしいだけ」「お母さんには関係ない」などと答えて、話をはぐらかすこともあります。そのときはしつこく質問しないで、次にまたその話をする機会を待ちましょう。
少なくとも話を受け止めることを続けていけば、子どもの気持ちを共有することができます。その子がふとした瞬間にもらす本音を、聞き取れるようになっていきます。
子どもが少しでも話をしたら、「話してくれてありがとう」と言葉をかけ、積極的にほめてください。「おだやかに話ができて嬉しいよ」といった形で、大人が気持ちを伝えるのもよいでしょう。
また、質問をしすぎて対話を嫌がられたときなどには、素直に非を認めることも大切です。子どもは、間違ったときには間違ったと認める大人を信頼します。大人を信頼して、気持ちを打ち明けられるようになると、緊張がほぐれて不安が軽減します。大人はそのためのサポートを心がけましょう。