世界的登山家・田部井淳子を悩ませた我が子の問題行動「あの田部井さんの息子」と呼ばれて

世界的登山家・田部井淳子の子育て【1/3】~反抗の始まり~

フリーライター:浜田 奈美

家族で朝ごはんを食べていても、起きてこない進也さんを田部井さんが起こし、進也さんも食卓へ。しかし朝ごはんを食べても、進也さんは一向に学校に行く気配を見せませんでした。

「進也君、学校はどうしたの。今日は休みなの?」と田部井さん。すると進也さんは、「学校? 辞めてきた」。何事もなかったかのように、しれっと言うではありませんか。

学校の呼び出しにはほとんど驚かなくなっていた田部井さんも、「えっ? 辞めた? なんで?」と、かなり驚いたそうです。

「当然じゃん?」とでもいわんばかりの落ち着き払った様子の息子を前に、田部井さんは学校に電話をかけ、何を思ったのか、むしろ怒った口調で教員を問い詰めました。

「うちの進也が学校を辞めてきたと言っています!」
「どうして親に確認もせずに退学届なんて受理したんですか!」
「なんだって親に連絡もせずに勝手に辞めさせたんですかっ!」

次回は、息子の突然の退学からの、親子の選択についてお伝えします。

取材・文/浜田 奈美

●「東北の高校生の富士登山」プロジェクト(一般社団法人田部井淳子基金主催)

田部井進也さんがプロジェクトリーダーを務める、東北の高校生と富士登山に挑むプロジェクト。福島県出身の田部井淳子さんが企画し、東日本大震災の翌年(2012年)からスタート。現在も全国からの寄付や支援を得て続いている。プロジェクトの詳細や寄付の宛先は一般社団法人田部井淳子基金の公式HPから。

・一般社団法人田部井淳子基金
https://junko-tabei.jp/fuji

田部井さんを知るおすすめの本

子どもに、いま出会ってほしい、101人の物語を収録した『決定版 心をそだてる はじめての伝記101人[改訂版]』(講談社)。表紙カバーには田部井淳子さん、坂本龍馬、田部井淳子、マザー・テレサ、中村 哲、ベートーベン、渋沢栄一、スティーブ・ジョブズらが登場。
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フリーライター浜田奈美が、こどもホスピス「うみとそらのおうち」での物語を描いたノンフィクション。高橋源一郎氏推薦。『最後の花火 横浜こどもホスピス「うみそら」物語』(朝日新聞出版)
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はまだ なみ

浜田 奈美

Nami Hamada
フリーライター

1969年、さいたま市出身。埼玉県立浦和第一女子高校を経て早稲田大学教育学部卒業ののち、1993年2月に朝日新聞に入社。 大阪運動部(現スポーツ部)を振り出しに、高知支局や大阪社会部、アエラ編集部、東京本社文化部などで記者として勤務。勤続30年を迎えた2023年3月に退社後、フリーライターとして活動。 2024年5月、国内では2例目となる“コミュニティー型”のこどもホスピス「うみとそらのおうち」(横浜市金沢区)に密着取材したノンフィクション『最後の花火』(朝日新聞出版)を刊行した。

1969年、さいたま市出身。埼玉県立浦和第一女子高校を経て早稲田大学教育学部卒業ののち、1993年2月に朝日新聞に入社。 大阪運動部(現スポーツ部)を振り出しに、高知支局や大阪社会部、アエラ編集部、東京本社文化部などで記者として勤務。勤続30年を迎えた2023年3月に退社後、フリーライターとして活動。 2024年5月、国内では2例目となる“コミュニティー型”のこどもホスピス「うみとそらのおうち」(横浜市金沢区)に密着取材したノンフィクション『最後の花火』(朝日新聞出版)を刊行した。