軽量ランドセルが大進化! “ハイブリッドランドセル”の機能性や耐久性とは?

最旬! ラン活2025 #3〜 ~軽量化とハイブリッド素材編〜~

ライター:遠藤 るりこ

人気の老舗ランドセルブランド「池田屋」が打ち出したランリュック。ランドセルを知り尽くしたメーカーだからこそできる新提案。  写真提供:池田屋

子どもたちの通学にタブレットなどが加わり、荷物の重さが問題視されるなか、近年台頭してきたのが、「ランドセル型リュック」や「ランリュック」などと呼ばれる新しい選択肢。人工皮革やナイロンなど、さまざまな素材の組み合わせも出てきました。

「2020年ごろから新興のランリュックメーカーが台頭し始め、市場の関心およびニーズも高まってきたことを感じた」と話すのは、ランドセルの老舗ブランド・株式会社池田屋の代表取締役社長、長岡和久(ながおか・かずひさ)さん。

ここ数年は「総重量がどれだけ軽いかだけではなく、いかに軽くて背負いやすいか」にも焦点が当たるようになり、日々新商品の開発が進められています。

より軽く、より使いやすく、今の子どもたちに合ったカタチを求め続ける、新しいランドセルとその開発秘話をご紹介します。

※3回目/全5回(#1#2を読む)

老舗「池田屋」が初めてランリュックを発売

1950年創業の老舗ブランド・池田屋が、2021年夏から本格的にランリュックの開発をスタート。2024年1月より、「AIR RUCK(エアリュック)」(63,000円、税込)の販売を開始しました。

こだわりは「軽量かつ丈夫」。地面に置いても痛んだり水が浸み込んだりしないよう、底には鋲(びょう)を付け、摩擦強度に優れた合成皮革を使用。  写真提供:池田屋

「もっとも重視したのはやはり軽さ。コーデュラナイロン製の本体のみなら650gと、通常のランドセルの約半分です。

着脱できるカブセを付けてもコーデュラナイロン製なら計780g、ベルバイオと呼ばれる人工皮革製なら790g。本体カラーは3色展開で、カブセはコーデュラナイロンが3色、ベルバイオは6色あり、好きな組み合わせが選べるのも大きな特徴です」(池田屋・長岡さん)

カブセは着脱可で、本体だけでリュックとして使うこともできる。「通学だけでなく、塾や課外活動などにもマルチに使っていただけたら」(池田屋・長岡さん)  写真提供:池田屋

ただ軽いだけではなく、工夫も光ります。

「専門店だからこそわかるカバンの弱点を徹底的になくし、6年間の耐久性を追求しています。例えば背負いベルトの付け根はとても傷む部分なので2重3重の補強と縫製で頑丈に作ってあるんです」(池田屋・長岡さん)

本体に用いたコーデュラは一般的なナイロン生地に比べて約7倍の強度。発色の良いベルバイオのカブセの相性もよく、実際に手に取った親子からは「ただのランリュックではなく、上質感もある」と好評です。

そして何より、ランリュックでも6年間の無料修理保証付き。「池田屋が作ったものならば」と検討をする親子も増えたといいます。

「実際にエアリュックを見た親子は、その軽さに大変驚いていらっしゃいます。ただ通常のランドセルと迷っている方に関しては、現時点ではランドセルを選ばれる方が多いという体感がありますね。

一方で、脱ランドセルを宣言する自治体が増え、リュックへの関心が高まっているのも事実。これからも、時代のニーズに合わせ、『子ども思い』のものづくりを続けていければと思います」(池田屋・長岡さん)

子どもたちと開発した次世代ランドセル

創業100年を超える老舗の総合スーパーマーケット・イトーヨーカドーが、子どもたちとともに新たなランドセルを開発しました。きっかけになったのは、2023年に行われた、葛飾区立半田小学校(東京都)との交流授業です。

「5年生のクラスを対象に、ランドセル開発担当者との交流授業を実施しました。子どもたちの悩みを聞き、身体への負担を解消したいという思いから、新たなランドセルを一緒に研究したんです。

子どもたちから出たランドセルへの要望は、『大容量』、『軽量』、『丈夫』、『ラク』であり、これらのキーワードに加えて、環境に配慮した『SDGs』という5つのキーワードを基に、商品開発を進めていきました」(株式会社イトーヨーカ堂 ランドセル開発担当)

子どもたちのリクエストである「大容量でポケットいっぱい」に応え、大小合わせて6つのポケットがある。子どもからは「ランドセルは日本の文化として守っていきたい」という声も。  写真提供:イトーヨーカ堂

授業参観で保護者にお披露目したところ、大人たちからの評価も良かったと言います。

「デザインは従来のランドセルと大きく変えていませんが、機能は満載に。学校で必要な持ち物の変化に対応し、タブレットを収納できるクッションをはじめ、収納を充実させました。

また、リュック機能のチェストベルトや、通気性の良い背面メッシュ性クッションなど、細かな配慮で快適に背負えるように工夫しています」(株式会社イトーヨーカ堂 ランドセル開発担当)

自分たちの声が、製品作りに反映される。子どもたちからはランドセルに対するいろいろな意見が出た。  写真提供:イトーヨーカ堂

人工皮革にメッシュ素材 軽く感じる新構造

1948年の創業以来、ランドセルを主に製造し、1999年より障がい児用ランドセル(Uランドセル)も手掛ける株式会社協和。2007年登場のランドセルブランド「ふわりぃ」では、創業当初から「軽い」と「使いやすい」をコンセプトに実際に使用する子どもにとって使いやすいランドセルづくりを目指してきました。

「これまで保護者からは『身体が小さいからちゃんと背負えるか心配』、『たくさん入って使いやすいものがいい』、『通学距離が長いので少しでも軽いランドセルがほしい』等々、多くのお声が届いていました」(協和・大石安規〈おおいし・やすのり〉さん)

そこで、従来のランドセルとリュックのすぐれている点を融合させた新しいカタチの「レジェランド」(全4色、63,800円・税込)を開発。2024年3月から、2025年モデルをリリースしました。

軽量素材の人工皮革を使用。革と比較して300g程度軽量化しているほか、お手入れも簡単で強度もあり、子どもに適した素材。  写真提供:協和
扱いやすく手入れが簡単な人工皮革に、肩ひも・背当ての異素材組み合わせ。ふわりぃが誇る最軽量モデルがレジェランドだ。  写真提供:協和

全体は880gと軽く、扱いやすい人工皮革を採用。背中と肩ひも部分は、速乾性や通気性に優れたメッシュ素材を採用しています。

特に汗をかくことが多い小学生にとっては、夏の暑い日でも快適に背負えると好評です。異素材組み合わせだけでなく、使いやすい工夫はほかにも。

「錠前には引っ張るだけの簡単操作で開閉可能なフィドロックを使用し、力の弱いお子さまでも簡単に、開閉ができて安心です。さらに背負いやすいポイントとして、肩ひもの取り付け位置を従来の底部ではなく、ランドセル本体の側面にした“サイドサポート構造”を採用。肩ひもが側面から身体をサポートしてくれるため、背負っても軽く感じる新構造です」(協和・大石さん)

引っ張るだけで開閉が簡単な錠前(写真左)と、ランドセル本体の側面から肩ひもが出ている構造で、使いやすさと背負いやすさを追求。  写真提供:協和

ランドセルを背負うことの意義

素材や機能性は刷新されているものの、デザインは従来のランドセルから大きく変わりがないことについて、大石さんはこう話します。

「ランドセルの箱型の形状は、教科書やタブレットを衝撃から守り、教材を安全に運ぶことができます。また、転倒した際もランドセルがクッションの役割を果たし、背中や頭部が地面にダイレクトに当たることを防げる、といった独自構造による利点もあるんです」(協和・大石さん)

ランドセルという従来の“見た目”にも、子どもたちには大きな影響があります。

「見た目で誰が見ても小学生とわかるため、通学の際はその様子を地域の大人たちが見守ってくれる。ランドセルにはそういった防犯的な効果も期待できると考えています」(協和・大石さん)

もはや、ただ軽いだけでは満足しない。これからは、軽さに掛け合わせた新しい視点が、ランドセル選びの決め手になりそうです。

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次回は、見ているだけで心躍る、アーティスティックなランドセルを集めました。個性が光る自分だけのアイテムが見つかるかもしれません。

取材・文/遠藤るりこ


【取材協力と新作ランドセル】
●株式会社池田屋
AIR RUCK コーデュラライト×ベルバイオ(カブセ)/63,000円(税込)
AIR RUCK コーデュラライト×コーデュラライト(カブセ)/63,000円(税込)
AIR RUCK コーデュラライト※本体のみ/53,000円(税込)

●株式会社イトーヨーカ堂
ラクラクリュック 全2色/31,900円(税込) ※オンラインストアは2024年2月13日より受注開始、店頭発売は2024年4月23日より開始

●株式会社協和(ふわりぃ)
レジェランド2025年モデル 全4色/63,800円(税込) ※2024年3月より発売開始

【関連サイト】
株式会社池田屋
株式会社イトーヨーカ堂
株式会社協和(ふわりぃ)

※「最旬! ラン活2025」は全5回です(公開日までリンク無効)。
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えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe