【発達障害・発達特性のある子】の癇癪 〈かんしゃく〉への対策 「療育の専門家」がわかりやく解説
#9 子どもの癇癪への対応は?〔言語聴覚士/社会福祉士:原哲也先生からの回答〕
2024.09.02
一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也
「うわあああああん!」「いやーーー!!」「ダメー」
いわゆる癇癪(かんしゃく)は、1歳前後から4歳ごろまで続き、その間保護者は、対応に悩みます。
一般的に癇癪とは、怒りや苛立ち、不安などの感情を制御できず、脳が興奮状態となるときに起こるもので、
・泣きわめく、叫ぶ
・床にひっくり返り、四肢をバタバタさせる
・物やおもちゃを投げる
・家族を叩く、蹴る。家族の髪の毛を引っ張る
などします。
癇癪の3つの区分
(1)生理的な理由による癇癪
空腹や眠気、暑さや寒さ、おむつが濡れたなど、生理的な不快さが原因で起こる癇癪です。
(2)要求や拒否などの目的が果たせないことによる癇癪
「お兄ちゃんのおもちゃを触りたいのに触らせてくれない」場面や、「お姉ちゃんの椅子がいい。小さい椅子には座らない」場面など、自分の目的が果たせないことで起こる癇癪です。
成長とともにさまざまな感情が起きてくるのに、それをことばでうまく表現できないために癇癪が起きることもあります。
自己制御(self-regulation)の発達 柏木惠子 心理学評論 1986年29巻1号 p.15
(3)自己制御の力の未熟さによって起こる癇癪
かなり古い研究ですが、上の左の図からは次のことがわかります。
●3歳の時点では男女とも自己制御の力が弱い
●一貫して男児の自己制御の力は女児よりも低く、3歳児では制御がかなり難しい
●5歳から6歳にかけて自己制御の力が急激に伸びる
つまり、自己制御の力が働くようになる5~6歳までは、子どもは湧き起こる感情を、どうしてもコントロールできないのです。
一方、自己主張の育ちを表した右の図を見ると、自己主張は4歳の地点でぐっと強くなることがわかります。つまり4歳の時点では、自己主張が強くなるのに自己制御の力が育っていない。その自己主張と自己制御の力のアンバランスから、癇癪が起こるのです。特に男児ではそうなりがちです。
このように子どもは、周囲を困らせようとして癇癪を起こしているわけではなく、子ども自身も自分の荒ぶる心をコントロールできず途方に暮れているのです。癇癪を起こしている子ども自身も困っていることを、まずは周囲の大人は理解しておきましょう。