人気絵画教室の「夏休みの宿題会」に子どもたちが夢中! 「絵画コンクールで賞が獲れる絵」を教えない理由
「こどもアトリエ みかづき」の親子で楽しむアート 第7回 「絵画の仕上げ3技法」
2024.08.13
子どもたちにはまず下絵を見せてもらい、使いたい画材を確認します。
えのぐ、クレパス、パステル、色えんぴつと、さまざまな画材の選択肢があり、私にとってはここが大切なポイント。 “その画材ではうまく表現できないような……”と感じることがたびたびあるからです。
たとえば、えんぴつ描きの下絵を見ると、たくさんの人や生き物が細かく描かれているのに、本人が「クレパスを使いたい」と言うとき。
クレパスは面を塗るのには適していますが、線など細かい表現には向きません。話し合って一緒に考えなくてはなりません。
私:「Kくんのクレパス画は好きだけど、今回は描きたいものが多くて難しそうよ?」
Kくん:「大丈夫だよ、クレパスで描くね」
私:「待って。試しにここの部分、先生が別の紙に描いてみるね」
Kくん:「先生へたくそ! 何これ」
私:「クレパスで、こんな小さいのにニッコリしてる魚、先生でも描けないよ〜!」
このあと、2つの選択肢から選んでもらうことになります。
1.クレパスを使うために絵を変える。モチーフの数を減らし、つぶれないように大きく描く。
2.絵は変えずに別の画材を使う。油性ペン+えのぐなど。
Kくんは2を選び、新しい表現に挑戦しました。
私も「この絵は小さくたくさん描いているからカッコいいなって思ったよ」と伝えると、納得した表情を見せてくれました。
まだ描かないうちから、仕上がりのイメージができる子どもは、とても少ないと思います。満足した表情になるのは、絵が完成したときです。
こうして、2日間で計6時間という宿題会をがんばった子どもたちには最後のお楽しみが♪
夏休みにしかできないダイナミックなアートワークです。えのぐにまみれたり、びしょぬれになったり、大きな声で笑ったり。
大人が遊び心を忘れず、後片付けのことを考えなければ、自宅にいながら夏の特別な思い出が作れるかもしれません。もしも、大きな紙や白い布、大きな段ボールが手に入ったら、ぜひ遊ばせてあげてください。
アートワーク⑦「絵画の仕上げ3技法」
描きたいものを配置しただけで終わらせていませんか?
今回は、絵画の見栄えをより良く見せてくれる仕上げ技3つをご紹介します。楽しい技法あそびでもあるので、夏休みの絵画作品にもおすすめです。
技法1 ぼかし
発光しているかのように明るく見せます。強調したい、注目させたいところに使いましょう。
塗ったえのぐの境界を、水を含ませた筆でなぞってぼかします。綿棒でも代用可。水彩えのぐなら乾いた後でもぼかせます。
技法2 スパッタリング
歯ブラシを使ってえのぐを散らす楽しい技法。指の腹でブラシをしごきます。
見本の“星空・星雲・天の川”表現のほか、波打ち際の“水しぶき”や“光のきらめき”、キラキラを表現できます。
うまく散らないときは水分量を調整してください。多すぎても少なすぎても×。
技法3 スタンピング
はんこ(=スタンプ)を使った繰り返しの模様で、絵の中に退屈なスペースがあるときにおすすめです。
ぺたぺた押すのは子どもたちも大好き♪
ゴム製のはんこでなくても、瓶のフタ、ペンやえのぐチューブのキャップなど、代替品は身近に無限に存在します。探し出すのも楽しみのひとつ。
見当たらない場合は、消しゴムをカットして作りましょう(大人が見守ってください)。
♦あじとみあつこ
1978年生まれ。千葉県松戸市在住。大阪芸術大学デザイン学科中退後、美大受験予備校講師などを経て、雑誌編集、イラスト・デザイン制作に携わる。2017年より造形絵画教室『こどもアトリエ みかづき』を運営。https://www.ajitomiatsuko.net