「ボンボンドロップシール」大ブーム! 親子で「金銭教育」のチャンスです【お金のプロが解説】 

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ライター:中村 美奈子

なぜ定価の4倍に? 転売価格が跳ね上がる「需要と供給」のカラクリ

泉:高いお金を払っても「欲しい」という人がいるからです。経済学の基本である「需要と供給」のバランスですね。転売されている値段が高くなるのは、急激に買いたい人(需要)が増えて、シールの生産(供給)が追いつかなくなったからです。

需要と供給のしくみ「動く図鑑MOVE『お金と経済』」より(P.107)イラスト:川端修史
需要と供給のしくみ「動く図鑑MOVE『お金と経済』」より(P.107)イラスト:川端修史
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泉:買えないとあきらめる人が多ければ、そのうちシールの生産が追いついて、買える人が増えます。でも「みんなが持っていないものを持っている」という見せびらかしの消費、経済学では「有閑主義」といいますが、「みんなが買えない」「売っていない」ことがひとつの価値になっています。

そこが令和のシールブームの特徴で、小学校時代にシールブームを経験した20代女性、それから20〜30代の親世代も子どもと一緒に夢中になっているから、高い値段でも買える人がいる。子どもだけの世界だったら、ここまで高値にならなかったかもしれませんね。

ブームの要因は3つあります。

1つ目は「希少性」。「みんなが持っていないものを、自分は持っている」という価値観が、コレクション欲につながっているのでしょう。

2つ目は「オリジナリティ」。どんなシール帳を使っているか、表にはどんなシールをどんなふうに貼っているか。またシール帳にキーホルダーなどを着けて「自分だけのもの」にアレンジするのが、楽しみになっていることです。

泉:3つ目は「承認欲求」。「入手困難なシールを苦労して入手した」ストーリーに対して「すごい」と言われたり、集めたシール帳の出来映えをほめられたりすると、うれしくなるでしょう。

特に今はSNSでいろんな人に向けて発信できるし評価が数値として可視化されているので、ブームに乗っかって投稿がバズれば、その人の注目度も上がりますから。

かのんちゃんは、シール帳に青い花のキーホルダーをつけている。(写真提供:泉美智子)

お店で売るときの価格が変わらない理由は?

──なぜ、お店で売る価格が変わらないのですか?

泉:お店がメーカーや卸業者から商品を買うときの「仕入れ額」は、ブームに左右されないからです。

商品の価格設定は最終的にお店が決めますが、メーカーが卸業者や小売店に商品を売るときには「希望小売価格」をしらせます。お店はその金額を参考にして、仕入れ額に、お店で働く人に支払う給料などの「人件費」、お店をやるのにかかる「家賃」や「光熱費」、「備品費」、さらにお店の「もうけ(利益)」を足して、売値を決めます。

ブームに乗っかって値段を高くするというのは、「もうけ(利益)」の部分を増やすことになります。

商品の値段が決まる仕組み「動く図鑑MOVE『お金と経済』」より(P.107)

──もしお店が、フリマアプリと同じように高い値段で売ったらどうなるでしょうか?

泉:高くても売れるブーム中は、もうかるかもしれません。でも流行には必ず終わりがありますから、ブームが去ると「あの店は流行るとすぐ値上げする」という悪い評判が立って、そのお店で買い物をしたいと思う人が減る可能性があります。

お客さんが減れば商品が売れないので、もうけが出ません。もうけがないと、仕入れ費用はもちろん、人件費や家賃なども払えなくなりますから、お店を続けることができなくなります。そうなれば、結果的にお店は「損」をします。

だからお店側の対策としては、「お一人さま1枚まで」と購入できる枚数を制限したり抽選をしたりして、「公平性」を重視した方法を取っているというのが現状でしょう。

転売する人がもうかるのは、需要と供給のバランスが崩れている商品の希少性を利用して、価格をつりあげているから。これも「市場の原理」です。供給量が少なくても買う人が多ければ価格は上がり、供給量が増えれば希少価値が失われて価格が下がって、適正価格に落ち着きます。

流行には必ず終わりがありますから、「いつ買うか」「金額はいくらまで出せるのか」を見極めるのは消費者です。だからみなさんには、価値の勉強をして賢い消費者になってほしいと思います。

ブームが終わりに近づけば、自然と値段も落ち着いてきますから、焦って手に入れようとせずに待つのも選択の1つ。「買い時」を見極める力を養う、良い機会になりますよ。

「レート(希少価値)」とは?

──シール交換は「物物交換」ですが、「交換レート」があるそうです。投稿サイト「発言小町」に保護者が、相手の子がお菓子の付録のシール、自分の子はキティちゃんのウォーターシールを交換して、後日相手の親御さんから菓子折り持参で謝罪されたと投稿して、話題になりました。

まさに今、ともだちとシール交換を楽しんでいる泉先生のお孫さん、かのんちゃんは「レート」を知っているのでしょうか?

泉先生

かのんは「レート」って知っているの?

かのんちゃん

よくわからない。お気に入りはあるけど……。

かのんちゃんの最近のお気に入りは、ぷにぷにした触り心地のシリコン素材がついた「肉球シール」。(写真提供:泉美智子)

泉先生

そうよね。小学3年生だと、価値はまだちょっと難しいね。

一般的に、ものの価値はみんなが欲しいものほど高くなります。シール交換の場合は、交換の場でシールを出したときに決まっていくので、同じシールを出しても、その場その場で交換レートが変わります。

子ども同士の小さなコミュニティでも市場が形成できるし、市場の原理も働く。世代やコミュニティによって「もの」が変わっても、交換の文化はずっとありましたよね。

──確かに、絵画や宝石など高価なものから、カードゲームのカードやコインなど安価なものまで、世の中にはコレクションされているものがいっぱいあります。ブームになっていなくても、交換市場はいたるところに存在していますね。

泉:そうなんです。みんなにとって価値のあるものが欲しいことと、ブランド物を欲しいということと原理は同じです。

ブランドには、ブランドの価値を守るための商標権や知的財産権があります。無断で類似品を作ることを許すと価値が損なわれる「商標の希釈化」が起こるため、特許などを取得して権利を保護して、ブランド物を持つ人のステータスが損なわれないようにしています。だから、ブランド物のニセモノを売ったり買ったりすると犯罪になります。

ボンドロシールはこの立体感が特徴です。そもそも日本の立体シールの原点は、1980年代に小中学生の間で爆発的に流行した「スポンジシール(ぷっくりシール)」らしいので、「ボンドロシール」自体にも権利がありません。

ですから、ニセモノや類似品が出てくるのを止めることができないのが現状です。

ニセモノが本物を駆逐する? 市場の原理

──法律違反ではなく、「それを買いたい」という消費者がいれば、類似品がある方が「手に入りやすくなる」ので、消費者にとって良いことになるのでは?

ニセモノを買ってはいけないのはなぜ?
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