子どもと楽しむ“ことわざ天気予報” 飛行機雲が消えにくいと雨なの?
気象予報士・増田雅昭さん「子どもに伝える お天気の不思議」#4
2021.10.20
天気は人々の生活に大きな影響を与えるもの。天気予報がなかった時代、人々は天気の変化を察知するための知恵を、ことわざや言い伝えとして受け継いできました。
例えば、有名なことわざに「つばめが低く飛ぶと雨」があります。
これは、つばめのエサとなるハエなどの羽虫が、雨が近づき空気中の水分が増えると羽が重くなって低く飛ぶようになるため、それらを捕まえるつばめも低空を飛ぶから。
生活に密接しているけど、詳しいメカニズムは知らない人も多い「天気」。連載を通じて、子どもと天気についての会話を楽しめるよう、TBSテレビ・ラジオ等で活躍中の気象予報士・増田雅昭さんに天気のヒミツを教わってきました。
最終回の今回は、現代にも伝わる、天気予報に使えることわざや言い伝えを、教えてもらいます。(全4回の4回目/#1、#2、#3を読む)
【1】遠くの山がくっきり見えると晴れ
遠くの風景を見たときに、くっきり見える日と、かすんで見える日がありますよね。くっきりと見えるのは、空気中の水蒸気が少ないとき。空気が乾いていて雲ができにくいので、その日は晴れやすいと考えられます。
同じ意味で、東京周辺には「朝富士に夕筑波(あさふじにゆうつくば)」ということわざもあります。昔は大きな建物がなく遠くまで見渡せたので、朝に富士山がよく見えたり、夕方に筑波山がよく見えたりすると晴れるとされていたのです。
あなたのお住まいの地域で山が見えなければ、遠くにある何かしらの目標物を決めて、毎日の見え方をチェックしてみて。親子で「今日は晴れるかな?」と当ててみましょう。
【2】朝虹は雨 夕虹は晴れ
朝から虹が出ていたら、なんだかラッキーな気分になりますよね。でも残念!朝に虹が出ていると、その後は雨が降りやすいのです。一方、夕方に虹が出ていたら次の日は晴れる可能性大。「朝虹は雨、夕虹は晴れ」はかなりの確率で当たります。
その理由は虹が出るメカニズムにあります。
(第3回:虹はどうしてできるの?子どもと一緒に虹を作って学んでみよう!)
虹は、太陽と反対方向に雨が降っているときに現れます。朝の太陽は東にあるので、虹が出るのは西。つまり、西に雨雲があるのです。雨雲はたいてい西から東に移動するので、そのうち雨がやって来ます。
その逆で、夕方に虹が出るとき、太陽は西で雨雲は東。この後、雨雲はどんどん遠ざかっていくので、翌日は晴れやすいのです。
【3】飛行機雲が消えにくいと雨 すぐ消えると晴れ
きれいな青空に白く長く伸びる飛行機雲が見えることもありますよね。飛行機雲も小さな水滴の集まりで、雲の一種です。ただし水滴は少量なので、上空がカラッと乾いていれば、すぐに蒸発して消えてしまいます。
その逆で、飛行機雲がなかなか消えないのは、上空が湿っているという証拠。その後に水蒸気が増えれば雲ができて、曇りや雨になりやすい状態です。そのため翌日や翌々日に雨になることが多いのです。
【4】月夜の大霜
「つきよのおおしも」と読みます。これは冬のことわざで、「夜に月がくっきり美しく見えると、翌朝は霜がたくさん降りる」という意味です。
月がくっきり見えるということは、空気中に湿気が少なく、カラッと晴れているということ。寒くなる季節は、晴れた夜ほど冷え込みが強くなります。
冬場の日中、地面は太陽の熱によって温められますが、日が沈むと地面に蓄えられた熱は宇宙に向かってどんどん逃げていきます(放射冷却)。だから朝は冷え込みます。
一方、上空に雲や水蒸気があると、布団代わりになって熱があまり宇宙に逃げません。
ですから、月がきれいに見えたら翌朝の寒さを覚悟して、寝るときに毛布を重ねたり、暖房の温度を上げたりと対策するとよいでしょう。
【5】スズメが鳴き始めたら雨が止む
最後に、気象予報士には有名な通説を紹介しましょう。
雨が降っているとき、スズメがチュンチュン鳴き始めると、だいたい30分〜1時間後くらいに雨が止みます。正確な理由はわかりませんが、スズメには優れた察知能力があるのか、昔からこのように言われているようです。
これは本当に当たるので、私は気象データを見て「そろそろ止むかな?」と思っているときに、スズメの鳴き声が聞こえると確信を持てます。スズメは気象予報士の後押しをしてくれる、良きパートナーなんですよ。
親子で空を眺めて天気を予想してみよう
今回紹介した5つは迷信ではなく、科学的な根拠や、経験則に基づいたものばかり。
今は天気予報アプリで確度の高い情報が得られますが、ときには空を眺めて天気を占ってみるのも楽しいものです。ぜひお子さんにも教えてあげてくださいね。
取材・文/片桐はな
増田 雅昭
気象予報士。株式会社ウェザーマップ所属。TBSテレビやラジオ等に気象キャスターとして出演中。企業へのオーダーメイド予報や気象相談、アドバイザーも担当。災害から身を守る気象情報の使い方についての講演や、子ども向けのお天気出前授業・実験イベントなども行っている。通称「天気が好きすぎる気象予報士」。 【主な著書】 『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図』(ベレ出版)
気象予報士。株式会社ウェザーマップ所属。TBSテレビやラジオ等に気象キャスターとして出演中。企業へのオーダーメイド予報や気象相談、アドバイザーも担当。災害から身を守る気象情報の使い方についての講演や、子ども向けのお天気出前授業・実験イベントなども行っている。通称「天気が好きすぎる気象予報士」。 【主な著書】 『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図』(ベレ出版)