蚊に刺されたり、毛虫を触ったりすることで起きる皮膚の赤みや腫れ。
子どもは大人よりも症状がひどく、長引きやすくなります。掻きむしって痕が残らないか、放っておいて大丈夫なのかなど、気がかりですよね。
小児科医の坂本昌彦医師に、虫刺されが原因の皮膚炎の治療法について解説していただきました。(全4回の2回目。#1を読む)
蚊・毛虫に刺されたときの症状
【蚊に刺された時の症状】
蚊に刺されると、蚊の唾液成分などが注入されます。蚊に刺されたときに腫れるのは、これらの物質に対するアレルギー反応が原因です。
子どもは、蚊に刺されると大人よりも腫れやすい傾向が見られます。そのため、親御さんからは、「こんなに腫れて大丈夫ですか?」「痕は残りませんか?」というご相談が多く寄せられます。
また、乳幼児のうちは、刺されたときのアレルギー反応はゆっくり現れるため、刺された翌日に腫れることもあり、原因が蚊だと思わずに不安に感じる親御さんもいます。
いずれにしても、ほとんどの場合は7日から10日で自然治癒するので心配しすぎなくて大丈夫です。
ただし、掻きむしりすぎると菌が入り、「とびひ」になってしまうこともあります。
【毛虫に刺された時の症状】
毛虫は体の表面に毒のある毛(毒針毛)を持つ種がいます。この毛に触れると皮膚炎を起こすことがあります。また、直接触らなくても、毛が風に乗って空中を浮遊して肌に付着する場合があります。
症状としては、毛に触ったり毛が付着したりした部分のチクチクとした違和感や、ポツポツとした発疹です。違和感は1~2時間で治まることが多いですが、時間が経つと赤く腫れてかゆみを生じることがあります。
市販のかゆみ止めの塗り薬を使ってもよいですが、かゆみがひどい場合は皮膚科を受診しましょう。また、水ぼうそうなどの症状と見分けがつかない場合もあるので、毛虫かどうか原因がはっきりしないときも皮膚科を受診してください。
おうちでのケアはかゆみを抑えることが大切
【蚊の症状のケア】
蚊に刺されるとかゆみが強いので掻きむしりがちです。
ホームケアのポイントは、掻きむしることを防いで、治りを早くすることです。そのため、大切なのはかゆみを抑えること。抗ヒスタミン薬やステロイド入りのかゆみ止め軟膏を塗ってあげるとよいでしょう。 特に強いかゆみの場合、保冷材や氷のうなどで冷やしてあげるとかゆみが軽減されやすいです。
ただし、「とびひ」になってしまうと、ステロイド入りのかゆみ止め軟膏だけでは対応できない場合がありますので、薬を使って治りが悪い場合は、小児科や皮膚科を受診するようにしてください。
また、掻いてしまったときに皮膚がなるべく傷つかないように、子どもの爪を切っておくことは大事です。ちなみに、「爪で十字のあとをつける」とかゆみが収まるという人もいますが、特に根拠はありません。
【毛虫の症状のケア】
毒を持つ毛が皮膚に残っていると、炎症が続いてしまいます。症状が見られたら、セロハンテープがガムテープの粘着部分で患部周辺をペタペタと押さえるようにして毛を取りのぞきます。
ただし、毛の太さは0.1mm~0.2mmと非常に細いので、取れたかどうか見た目には分かりません。そのため、流水でしっかり流すのも効果的です。
赤みやかゆみが強い場合は、塗り薬(ステロイド薬)や抗ヒスタミン薬(内服薬)が必要になることもしばしばあります。
虫に刺されないようにするには?
蚊に刺されないようにするには、虫よけを上手に使うことがポイントです。
ただし、乳幼児に虫よけを使う際には、成分を確認することを忘れないようにしてください。
虫よけの主成分は、ディートもしくはイカリジンです。
ディートは6ヵ月未満の乳児には使用不可で、6ヵ月以上の子どもにも使用回数に制限があるので注意が必要です。イカリジンは特に制限はありません。1回塗れば6〜8時間ほど効果が続きます。
最近はアロマの虫よけなどが流行っていますが、効果が20分ほどと短いという報告もあり、ディートやイカリジンをお勧めします。
毛虫の予防は、なかなか難しいですが、毛虫に近づかないことが一番です。
ツバキやサザンカには毛虫が発生しやすいので、生活圏内にある場合は近づかないように気をつけてください。子どもは毛虫を見つけると触ってみたくなるものです。日頃から注意するように伝えておくと良いでしょう。
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次回の#3では「やけど」について伺います。(#3はこちら。公開日までリンク無効)
取材・文/末吉陽子
坂本 昌彦
佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長兼国際保健医療科医長医員。2004年名古屋大学医学部卒業。2009年小児科専門医取得。現在は保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした佐久医師会による「教えて!ドクター」プロジェクトに責任者として関わる。 教えて!ドクター https://oshiete-dr.net/
佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長兼国際保健医療科医長医員。2004年名古屋大学医学部卒業。2009年小児科専門医取得。現在は保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした佐久医師会による「教えて!ドクター」プロジェクトに責任者として関わる。 教えて!ドクター https://oshiete-dr.net/