
“家のホコリ”にはクルミや卵成分があった!? 子どもの食物アレルギー予防に大切な「肌荒れ」と「少量摂取」[医師監修]
家の環境とアレルギー #1 国立成育医療研究センター 山本貴和子先生に聞く【食物アレルギー予防編】 (3/3) 1ページ目に戻る
2026.08.26
国立成育医療研究センター・アレルギーセンター医師:山本 貴和子
山本先生:子どもの食物アレルギーの発症を予防するには、①「皮膚を湿疹・肌荒れ等のない良い状態にしっかりコントロールすること」、②「いろいろな食材を口から食べておくこと」の両方が必要です。
ひとつ目に関しては、赤ちゃんに肌荒れ等があるとき、その肌荒れがよくなるのに時間がかかるほどリスクが高いことが分かっています。赤ちゃんに湿疹ができたら、小児科や皮膚科を受診し、肌がつるつるぴかぴかになるように治療をしましょう。
また、ふたつ目について私がおすすめしているのは、離乳食の開始以降、早い段階で少しずつ家族が食べているものと同じ食材へ移行していく「ファミリーフード」という考え方です。
現代の日本では、大人は大人用の食事をとって、赤ちゃんの離乳食は別に用意して与えるご家庭が多いですよね。しかし、私たちの周りの環境にあるアレルゲンは、国や風土、各家庭で何を食べているかによって違います。
一番大切なことは、それぞれの環境に合わせた食材、特にその家庭で大人が食べている食材を、離乳食の開始後から少しずつ食べて、家族と同じものを食べられるように免疫寛容(食べ物を異物として攻撃せず、受け入れること)を獲得していくこと。
ナッツ類は窒息等の危険性もあるため、月齢に応じてパウダーにして料理に混ぜたり、なめらかなペースト状にしたりするなど、形状は変える必要があります。また、刺身やハチミツなど食中毒等の危険があるものは与えないでください。
1回食べて終わりではなく、定期的に食べておくことも大切です。
──離乳食の進め方というと、食材リストをクリアしていくイメージで、あえて大人が食べる食材を早めに与える視点はありませんでした。ナッツ類もペースト状にすれば、離乳食の時期など早いうちに食べさせて良いのでしょうか。
山本先生:アトピーなどの肌荒れやアレルギーの素因がある場合は、すでにアレルゲンにさらされ、発症している場合のリスクが高いため、まずはかかりつけ医などに相談してください。
生後、肌荒れ等がなくコントロールされている場合でも、かかりつけ医に相談してから始めると安心です。
問題なければ、粉末にして料理に使用したり、ペースト状にしたりして極少量から与えると良いでしょう。一方で、日本人のデータでは、ピーナッツは早期から食べたからといって予防効果があるという研究結果は出ていないので、家族がよく食べていない食べ物まで早期から摂取する必要はないかもしれません。
──すでに子どもが幼児や小学生になっているけど、まだ食べたことがない食材がある場合も、気が付いた時点で早く食べさせたほうが良いでしょうか。
山本先生:この場合も、環境中にある食物アレルゲンに肌がさらされていた期間が長い分、すでに食物アレルギーになっている可能性もあります。このため、やはり肌荒れやアレルギーの素因があって、ナッツ類やピーナッツ、甲殻類などのアレルギーを発症しやすい食材を初めて食べる場合は、医師に相談してからが良いでしょう。
そのうえで、食べる際は極少量から始めてください。大きくなってからでも発症前であれば、少量ずつ食べていくことが、その後の発症予防につながる可能性があります。
◇ ◇ ◇
山本先生のお話から、荒れた皮膚を通じてアレルゲンが入り込み、食物アレルギーを発症してしまわないように、以下が大切だと分かりました。
・生後からアトピーなどの肌荒れがあったら、すぐに医療機関を受診し、肌をよい状態にコントロールする。
・離乳食が始まったら、「口」から定期的に少量を少しずつ、いろいろな食材を食べさせておく。
・「家族がよく食べている食材」は、特に大切。離乳食開始後は徐々に「家族が食べているものと同じ食材」に移行していく。
※くれぐれも窒息や誤飲のリスクがないように、月齢に合わせて食材の形状は粉末にして混ぜる、ペースト状にする、など工夫してください。また、食中毒等のリスクがある食材は食べさせないでください。
家庭内の寝具等にもクルミや卵のアレルゲンがあると聞くと、「まめに掃除しなきゃ」と思う保護者も多いかもしれません。ただ、これだけ多くの家庭でアレルゲンが見つかっているとなると、私たちの周りにある食物アレルゲンを完全になくすことは、ほぼ不可能です。
山本先生は「掃除をせねばと考える親御さんは多いですが、一般的に掃除によってアレルギー疾患の発症を予防できるという確立したエビデンスはなく、過剰に神経質になる必要はない」と言います。
とはいえ、アレルゲンを抑える掃除方法があれば知りたいところ……。第2回では、同じく「ホコリ中に含まれるクルミアレルゲン」の共同研究に参加した、株式会社ダスキンの荻野文敏さんと御厨真幸さんに、時短でできるアレルギー対策の掃除について、教えてもらいます。
取材・文/原田美咲
全3回の1回目
2回目を読む※2026年8月27日公開
3回目を読む※2026年8月28日公開

原田 美咲
地域情報紙の記者を経て、2025 年からフリーライターに。これまでは地域の取り組みや活躍する子どもたち、選手への取材・インタビュー等を中心に、広いテーマで執筆。趣味は段ボール工作。
地域情報紙の記者を経て、2025 年からフリーライターに。これまでは地域の取り組みや活躍する子どもたち、選手への取材・インタビュー等を中心に、広いテーマで執筆。趣味は段ボール工作。



































山本 貴和子
山口大学医学部医学科卒業(2003年)、愛知医科大学大学院医学研究科医学博士(2016年早期修了)。 現在(2026年8月)、国立成育医療研究センター・エコチル調査研究部チームリーダー、アレルギーセンター行動機能評価支援室室長(総合アレルギー科診療部長併任)。 国立高度専門医療研究センターの一つで、小児・周産期・女性医療を専門とする国立成育医療研究センターに2009年から所属。免疫アレルギー学や小児科学等を専門に小児アレルギー疾患の診療を行うほか、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などに関する研究や正しい知識の普及に取り組む。これまで、国内外で数多くの論文や研究結果を発表している。 これまでの研究業績、論文、学会発表等の詳細はresearchmapを参照。 (https://researchmap.jp/0000-0003-1288-9620)
山口大学医学部医学科卒業(2003年)、愛知医科大学大学院医学研究科医学博士(2016年早期修了)。 現在(2026年8月)、国立成育医療研究センター・エコチル調査研究部チームリーダー、アレルギーセンター行動機能評価支援室室長(総合アレルギー科診療部長併任)。 国立高度専門医療研究センターの一つで、小児・周産期・女性医療を専門とする国立成育医療研究センターに2009年から所属。免疫アレルギー学や小児科学等を専門に小児アレルギー疾患の診療を行うほか、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などに関する研究や正しい知識の普及に取り組む。これまで、国内外で数多くの論文や研究結果を発表している。 これまでの研究業績、論文、学会発表等の詳細はresearchmapを参照。 (https://researchmap.jp/0000-0003-1288-9620)