スニーカー・サンダル・長靴の「正しい子どもの靴選び」を専門家が伝授

3万人以上の足をみた専門家・伊藤笑子氏に聞く「子どもの足育」#2~靴選び編~

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー:伊藤 笑子

1992年からドイツの靴医学を学び、日本人の子ども靴への認識の低さを実感したという伊藤笑子さん。  Zoom取材にて

メーカーによってサイズはばらばら……確認は中敷きで

続いて気になるのがサイズ選びです。伊藤さんによると、子どもの足は柔らかく、じっと動かずに立っていてくれないので、正確に計測するのはコツと慣れが必要とのこと。

「体重のかかり具合によって、5ミリ程度の誤差は簡単に生じてしまいます。小児の足の計測に長けた専門家に測ってもらうのが一番ですが、ご自宅でも計測できる方法はあります。

壁にかかとを付けて、つま先に線を引いて、その距離を測ると目安は出せます」(伊藤さん)

画像提供:フェルゼ

サイズ選びで心掛けたいのは、中敷き(靴の内寸)と足の比較です。

「中敷きを取り外して足に合わせてみると、足長と靴のサイズが適正かどうかが分かります。残念ながらJIS規格(日本産業規格)で製造された靴の仕上がりサイズは統一されていないので、メーカーによって大きさはまちまちです。

例えば、16cmと書かれていれば、足長が16cmの人が履けますよ、という規格のため、16センチにプラスαの余裕が取られているはずなのですが(これを捨て寸という)、内寸が14.8センチしかないということも見られます。だから中敷きとの比較は必須です」(伊藤さん)

インソールの上に足を置いて適正サイズを確認する。  写真提供:フェルゼ

成長期は足より12~17ミリ大きいサイズを選ぶ

足は立って体重がかかったとき、歩くときに足が大きくなります。その変化だけで5~10ミリプラスになることも。そのため、足の計測や靴のサイズを確認するときは必ず立って調べましょう。

それでは、靴を購入するときは、足に対してどれくらい大きめの靴を選択すればよいのでしょうか。

「ヨーロッパの規格(ドイツWMSシステム)の靴は、ひとつのサイズについて『細い・中間・広い』の3型あるので、足のプロポーションから近いものを選べ、かかともしっかり絞ってあるため、足長より12~17ミリの余裕を取って履けるように設計されています。

17ミリと聞くとかなり大きく感じるかもしれませんが、荷重による変化(伸び)と子どもの足の成長を見越すとそれくらい必要です」(伊藤さん)

歩くとつま先の余裕は変わってくる。  写真提供:フェルゼ

ここで問題になるのが、国内のJIS規格で大量生産されている子ども靴。脱ぎ履きのしやすさだけを優先した履き口が大きすぎる構造が多く、足長に17ミリの余裕をもって選ぼうとしても、残念ながらかかとがぶかぶかで脱げやすくなるだけになります。

「JIS規格に基づくシューズを買うなら、足長に10ミリくらいの余裕を取ったサイズになります。でもプラス10ミリだけでは、最低限の余裕しかないので、成長して伸びる分はありません。なので1~2ヵ月ごとに確認して、買い替えることが必要かもしれません」(伊藤さん)

◆◆◆◆◆
あぁ、悩ましき子どもの靴選び。サイズ表記だけを目安に靴をポチっと買うと、足へのリスクが高まりそうです。靴選びにきちんと向き合うと、手間や費用を惜しんではいられません。

次回は足への影響が大きい上履きの現状についてお届けします。

伊藤笑子(いとう・えみこ)
合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー。新潟医療福祉大学大学院 修士課程修了。学術研究と3万人以上の子どものシューフィッティングおよび販売実績を持つ、日本における子ども靴のパイオニア。2016年「日独小児靴学研究会」を樹立。2020年、日本フットケア・足病医学会学術委員会「子供の足、靴改革ワーキンググループ」サブリーダーを受任。小児靴の手引き書・指針の作成に尽力し、その中心的役割を担う。
●公式HP フェルゼオンライン 
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取材・文/大楽眞衣子

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いとう えみこ

伊藤 笑子

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー新潟医療福祉大学大学院 修士課程修了。学術研究と3万人以上の子どものシューフィッティング実績および販売実績を持つ、日本における子ども靴のパイオニア。 1996年、インターネット上に「子どもの足と靴の相談室」を開設、国内初の専門サイトを公開。ドイツ靴医学に基づく健康靴店「フラウ」を開業。2016年、専門者養成と知識の標準化を目指す「日独小児靴学研究会」を樹立。2019年、合同会社フェルゼを設立、CEOに就任。2020年、日本フットケア・足病医学会学術委員会「子供の足、靴改革ワーキンググループ」サブリーダーを受任。小児靴の手引き書・指針の作成に尽力し、その中心的役割を担う。 ●公式HP フェルゼオンライン  ●facebook

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー新潟医療福祉大学大学院 修士課程修了。学術研究と3万人以上の子どものシューフィッティング実績および販売実績を持つ、日本における子ども靴のパイオニア。 1996年、インターネット上に「子どもの足と靴の相談室」を開設、国内初の専門サイトを公開。ドイツ靴医学に基づく健康靴店「フラウ」を開業。2016年、専門者養成と知識の標準化を目指す「日独小児靴学研究会」を樹立。2019年、合同会社フェルゼを設立、CEOに就任。2020年、日本フットケア・足病医学会学術委員会「子供の足、靴改革ワーキンググループ」サブリーダーを受任。小児靴の手引き書・指針の作成に尽力し、その中心的役割を担う。 ●公式HP フェルゼオンライン  ●facebook

だいらく まいこ

大楽 眞衣子

社会派子育てライター

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーに。3人の育児で培った生活者目線を活かし、現在は雑誌やWEBで子育てや女性の生き方に関わる社会派記事を執筆している。大学で児童学を専攻中で、保育士資格を取得。2歳差3兄弟の母。昆虫好き。イラストは三男による「ママ」 ●公式HP「my luck」