スニーカー・サンダル・長靴の「正しい子どもの靴選び」を専門家が伝授
3万人以上の足をみた専門家・伊藤笑子氏に聞く「子どもの足育」#2~靴選び編~
2022.08.13
合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー:伊藤 笑子
扁平足(へんぺいそく)や浮きゆび、外反母趾……小中高生の半数近くが、何らかの足のトラブルを抱えていると言われています。その原因としてまだよく知られていないのが、間違った靴選びにあります。
足の骨格が完成に近づく14歳ごろまでに日常的に履く履物や靴が、足トラブルに影響するといいます。すぐにサイズアップが必要な子ども靴ですが、足に合った靴選びとこまめな買い替え習慣が必要のようです。
足育の第一人者でもある子ども靴の専門家、伊藤笑子(いとう・えみこ)さんに、靴選びの条件を教えてもらいました。
※前回(#1)を読む
専門家がすすめるよい靴の5つの条件
軟骨部分が多く、柔らかい子どもの足。履物の影響を受けやすいだけに、靴を選ぶときにもよく考えたいもの。
同じように身につけるものでも、洋服の場合であれば、袖が長い、裾が短いなど多少合わないサイズを選んでも、骨格に影響を与え体が変形することまではありません。ところが足全体をすっぽり覆う靴は、事情が違うようです。
「靴の場合、足の形に合わないものを履き続けると、足が変形する原因となります」
と話すのは約30年間、3万人以上もの子どもたちの足を計測し、靴をフィッティングしてきたマスターシューアドバイザーの伊藤笑子(いとう・えみこ)さんです。
「例えば靴が小さいと足ゆびが曲がった状態で歩かなくてはなりません。その足の状態に体重をかけて歩いたり、走ったりする毎日を想像してみてください。
足は一人ひとり微妙に違います。肉付き、幅、甲の高さ、ゆびの長さ……、左右ですら違いはあります。ですから、適切なサイズと構造を持った靴を選ぶ必要があります」(伊藤さん)
靴は専門家に選んでもらうのがベストですが、保護者が知っておきたい靴選びの条件について、伊藤さんに教えてもらいました。
【靴に必要な5つの機能と条件】
①留め具があり調節できる
着脱が簡単な面ファスナーのようなベルトや靴ひもなど、足が靴の中でむやみに動かないように固定するための留め具がある靴を選びましょう。
ずぼっと簡単に履けるスリッポンタイプは、脱げやすいのでNG。できれば足首近くと甲の部分の2ヵ所あるものを。
②幅のバリエーションがある
足の幅が広いのか、細いのか、肉付きやかかとの大きさは? 足長(つま先からかかとまでの長さ)だけで選ぶのではなく、足のプロポーションに合ったものを選ぶこと。幅広の靴を幅が細く肉付きの薄い人が履くと、留め具があっても締めきれずゆるゆるの状態で歩くことになります。
③かかと部分は固く“にんにく型”
靴のかかとは足と体の動き全体を支える大切な部分です。しっかりとした月形芯(かかと部分の補強材)が入っていて、簡単にねじれたり潰れたりしないものを。靴を目線の高さで持ち、後ろから見て、かかとからアキレス腱(履き口)に向かって締まっているにんにく型(ゆるい三角形)になっているものがベスト。
④足ゆびが曲がるところだけで曲がる
靴底が柔らかすぎて簡単に2つに折れる、ぐにゃっとねじれる、反対に硬すぎて曲がらない靴底はNG。地面を踏み返して歩く、ということがきちんとでき、土踏まずの発達にも影響するアーチ機能を活かすためにも、ゆびが曲がるところだけで曲がるものを。子ども靴の場合、およそ前から3分の1のところです。
⑤中敷きが取り外せる構造
足は汗をたくさんかく場所です。また靴をはだしで履くことはとても不衛生です。取り出し式の中敷きがあると定期的に洗浄でき、靴が小さくなっていないかを確認することもできます。
サンダル・長靴選びで気を付けたい点も教わりました。
【サンダルの選び方】
・足首と足幅の部分にベルトがあるもの。
・かかとがしっかりした構造のもの(バックベルトでもOK)。
・中底のかかと部分が、すり鉢状になっていること。かかとがふらふらしない構造がポイント。
【長靴の選び方と履き方】
・1センチ刻みの規格がほとんどだが、大きければインソールを入れるなどする。
・足を固定する機能がないため、長時間履かない。
・ゆびが当たっていないか定期的にチェックする。
・長靴よりも歩きやすく、ゆびを痛めない「防水機能のある靴」がおすすめ。