中学生への「子育て見直し」 年間面談1000件の塾講師が「コーチを探せ」と助言する理由

いつまでも子ども扱いじゃダメ! 中学を見据えた子育て#1

子どもが中学校入学目前なら今すぐに中学生への子育てにチェンジ!

中学生の子育ては、我が子が中学に入学してから一気に変えるのではなく、子どもが大人に変わってきたなと感じた段階でシフトするべきだと大塚先生は話します。

「本来なら子どもが高学年になって口ごたえをするようになったり、勉強が面倒で難しいものと捉えたりするようになったら、徐々に親側の対応を変えていくのが望ましいです。ですから、すでに子どもが中学目前であるなら、すぐにでもかかわり方を変えていきましょう。

子どもはすでに自問自答する段階に入っています。例えば、勉強をやりたくない自分と勉強をやらなきゃいけないと思っている自分がいて、一人の人間の中で葛藤しています。

自分の中から湧き出ている相反する考えに自分なりの答えを出そうとしているのですから、ここで親が幼い子どもに言うように『○時まで勉強しなさい』『この問題を終わらせなさい』と指示を出してしまうと考える芽を摘むことになります。

人は誰でも指示に従っていたほうが楽なので、これでは指示待ち人間になりかねません」(大塚先生)

大人になろうとしている子どもに子ども扱いはNGです。写真:アフロ

中学生の子育てへの変更ポイントとは?

では、実際にはどのような接し方に変えていけばいいのでしょうか。

「勉強周りは、子どもに任せる方向に変えていきます。つまり『ノータッチ』です。ただし、子どもの行動に対して『褒める』『認める』『受け入れる』ことはしてください。私は、塾や講演会にいらっしゃるご両親には『子どもの背中を押してあげるようなサポーター的な役割を心がけてください』と伝えてます。

これは私の所属する塾の理念でもありますが、自学ができること=誰かに言われたからやるのではなく、自らの意志で課題に取り組むことが子ども自身の成長と将来に重要だと考えているからです。

幼いときのように親が主体の勉強では、中学以降はあと伸び(自学)できずに子ども自身が苦しい思いをします。ですから、今から子どもが自らの意思で行動していけるように応援してあげてください」(大塚先生)

礼儀作法や慣習に合った立ち居振る舞いなどのしつけは、家庭のルールに沿ってブレずに教えていってほしいと先生は語ります。また、感情的に怒るのではなく、子どもの成長や改善につながるような𠮟り方やアドバイスをしてほしいともいいます。

思春期の子どもにはコーチを見つけるといい

親はサポーター的な役割にシフトすることが大切だといいますが、それではただ甘やかすばかりでは? と考える方もいるでしょう。時には子どもに活を入れる必要があるはずです。

「思春期の子どもは、親に口うるさく言われると余計に反抗する傾向があります。従って私は、子どもにとって斜めの関係にあたる人物、つまりコーチを見つけることを親御さんにはおすすめしています。

子どもにとって親や学校の先生は縦の関係、友達は横の関係ですから、斜めの関係は習い事の先生や塾の先生、スポーツの指導者、部活の先輩などです。近所のお兄さんやお姉さんでもいいでしょう。

斜めの関係の人物=コーチが中学生時代には特に必要になってくる。

例えば私は塾の先生ですから、子どもたちにとっては斜めの関係にあたります。塾の講師として、勉強については私が親御さんに代わって厳しく指摘・指導をしています。時にはご両親から依頼を受けて勉強以外のことも声をかけたり、生活面が乱れている子どもに厳しい言葉をかけたりもします。

子どもたちは自分の行いがダメな場合はそれをちゃんとわかっていますから、コーチの言葉を受けて自分で行動を正していきます。

あるお母さんのお話ですが、子どもが所属しているサッカーチームでレギュラー落ちが見えてきたとき、急に練習をサボるようになったそうです。そこで子どもにとって斜めの関係であるチームの先輩を通して諦めないように伝えてもらったところ、子どもは練習に再び通うようになったといいます。

できればコーチは、その方の教育観に親御さんが共感できる人や子どもが憧れている人、信頼している人が望ましいのですが、いずれにせよ、早いうちから見つけておくことが大切です」(大塚先生)

中学生の子育てへと変えていくとき、子どもの周囲を見回して外にコーチを見つけておくと親はサポーターの役割に徹することができます。

それは子どもとの距離感を程よいものにして、過干渉や過保護を回避するコツにもつながっていくでしょう。

次回は思春期の子育てで心配なケースと、それに対する大塚先生のアドバイスを紹介します。多感な時期の子どもの子育てで親がやりがちなNG行動なども解説します。

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大塚 剛史
花まる中等部部長。スクールFC教務部副部長。筑波大学第一学群社会学類卒業。大学時代に中学生や高校生の家庭教師を始める。その経験から現代の教育に強い問題意識を持ち、子どもたちに自学できる力と将来を見据えた自立する力を与えたくて花まるグループにて教育に携わる。現在は子どもの勉強の指導だけでなく、年間1000回の面談を行って生活面もアドバイスしている。また、保護者に向けて思春期の子どもについて子育てアドバイスや講演を行っている。

【主な共著や監修書】
『だれもが直面することだけど人には言えない 中学生の悩みごと』
『中学生 中間・期末テストの勉強法』
『中学生 高校入試のパーフェクト準備と勉強法』(すべて実務教育出版)


取材・文/梶原知恵

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かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。