中学生への「子育て見直し」 年間面談1000件の塾講師が「コーチを探せ」と助言する理由

いつまでも子ども扱いじゃダメ! 中学を見据えた子育て#1

親御さんが子どものときとは社会が様変わりしています。そのため思春期の子育ても時代に合わせた考え方が必要です。写真:アフロ

小学校高学年ともなると、我が子の育ちに親のほうが驚くことがあります。それもそのはず、子ども自身も小学校の上級学年としての自覚と中学への意識が増して、精神的にも成長を遂げているからです。

そして、我が子に対して大人ではないけれど、まったくの子どもでもないと親が感じたとき、それは自身の子育てを見直すタイミングです。

大塚剛史先生は大手学習塾で主に中学生を指導しつつ、その保護者に向けて思春期の子どもの育て方や接し方をアドバイスしている現役の講師です。中学を見据えて、高学年の子どもを持つ親が変えるべき子育てのポイントを教えていただきます(全3回の1回目)。

昔とはどう違う? 現代の中学生とその頭の中

子どもは日々、心身ともに成長をしています。特に思春期を迎え始めた小学校高学年以降の子どもの育ちは、親が驚くほどです。

大人へと変化している子どもに対しては、親側も接し方を変えていかなければなりません。大手学習塾にて小中学生を指導している大塚剛史先生は、現代という時代を踏まえて子育てをアップデートする必要があるとも語ります。

「これをお読みの親御さんもかつては子どもで、思春期を通ってきました。その時期を誰もが経験して知ってはいますが、現代は親御さんが過ごした時代とは違います。子どもたちの感覚もまったく違いますので、思春期の子育てに変えていく前にまずは社会が異なっていることを心に留めてください。

私は大手学習塾で長年に渡って多くの小中学生の指導にあたっていますが、中学生に関しては特に時間感覚が違うと感じています。パソコンやスマホが普及し、それに伴って勉強も人間関係もスピーディーに、ボタンひとつでアクセスかつ完了できる時代になったからです。

親御さんの子ども時代は、勉強をするにも友達と会うにも、どんなことでももっと時間がかかっていたはずです。しかし、ご自身の現在の生活を振り返ってみてもわかるように、今はツールを使えばほとんどのことがあっという間に完了してしまいます。つまり、子どもたちの生活も同様です。

時間短縮となって子どもたちが時間を持て余しているかというとまったくそうではなく、その時間には彼らがやらなければならないと思っていることを詰め込んでいます。それは勉強や遊びをはじめ、友達関係、そのほか自分の生活のことなど多岐にわたり、彼らはそれぞれに多くのパターンを考え、準備しています。

例えば友達関係の場合、自分が発言したことで相手や周りがどう反応して、どう返してくるかなどを今の子どもたちは10、あるいは20まで考えます。大人からすると考えすぎと思える余計なことにも目を向け、かつ友達には短時間で連絡がつくため素早い対応も求められます。

昔と同じように友達との会話に乗り遅れないようにゲームをやったり、テレビ番組をチェックしたりというのも彼らにとってはやらなければいけないことですが、そこにはネットの情報も入ってくるので広範囲です。

とにかく身の回りの多方面のことに追われて忙しいのが、今の子どもたちです」(大塚先生)

今は勉強しただけでは結果が出ない!? 勉強も昔よりずっと難しい

勉強に関しても難しくなっていて、中学では大学入試を見据えたテストを校内で実施する学校が増えてきています。

「親御さんが中学生だったころは、教科書ワークや授業で使ったプリントを復習、あるいは暗記すれば、それが一問一答形式でテストに出ていい結果を手にできたと思います。

しかし現在は、そう簡単にはいきません。特に都市部は、覚えただけでは結果が出ないようなテストが実施され、それに対する勉強も強化されています。

昔と違って、中学時代から大学入試を見据えての資料の読み取り問題が多くなってきています」(大塚先生)

読み取り問題とは?

資料の読み取り問題とは、例えば人口ピラミッドや公共交通機関の利用率などのグラフや表がいくつか示されており、複数ある資料をすべて使いつつ、そこから読み取れる現象やその理由を述べたりする記述式の問いのことです。

問題によっては自分がすでに得ている知識が前提になっていて、記載されている資料と知識を紐づけて文章で答えるという高度な内容もあります。

思考力や表現力、データ分析力、活用力など、総合的な力が測られます。

「評価に関してもテストの点数だけで判断されません。私の教え子で中間試験も期末試験もテストは100点だったけれど、内申点が低いために高校受験に影響が出そうな子がいました。

さすがの結果にお母さんも納得がいかず中学校へ出向いたそうですが、授業中も居眠りばかりしていて、提出物もほとんど出していなかったための評価だと担任の先生にいさめられました。

その子はサッカーに一生懸命に取り組んでいるスポーツ少年で、テストを受ければ偏差値70を超えていくような天才気質の子どもでしたが、現在の中学校、あるいはその後の高校では、勉強に向かう姿勢なども昔よりずっと重要視されています」(大塚先生)

大塚先生曰く、親御さんが考えているような勉強や経験してきたテストとは違ってきているから、勉強面でも認識を現代版にアップデートしていかなければならないとのこと。

基本的に今の子どもたちは、やったらやっただけ結果が出るというシンプルな勉強ではなく、基本を踏まえた上でその先のことを考えたり、分析したり、あるいは学ぶ姿勢といった総合的な力が求められています。

子どもたちは心身だけでなく、彼らが置かれている社会の影響も受けてどんどん成長をしていきます。それに沿って親も今を踏まえた中学生の子育てへと変えていかなければ、我が子に置いてけぼりにされるかもしれません。

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