子どもの「勉強しない」に潜む原因は? 親が変われば子どもも変わる

【今こそ学力観のアップデートをするとき】子どもの好奇心が爆発する親の接し方#3 「探究ナビ講座」で変わる大人の意識

探究ナビ講座では、対話やワークショップを通して子どもへの接し方を体験的に学びます。   写真提供:ラーンネット・グローバルスクール

子どもの意欲や探究心を引き出す「ナビゲーション」という関わり方。前回(#2を読む)は、その基礎となる考え方や接し方をうかがいました。

ラーンネット・グローバルスクール(以下、ラーンネット)で長年ナビゲーションを実践し、ナビゲータ育成にも携わってきた炭谷俊樹氏は「理論を知るだけでは、実際にナビゲーションを使いこなすのは難しい」と話します。

そこで、ラーンネットが実施しているナビゲーションを学ぶためのプログラム「探究ナビ講座(基礎編)」では、体験を通してナビゲーションに触れる機会を設けています。

第3回は、ライターが探究ナビ講座(基礎編)のリアル講座を取材。ロールプレイングやディスカッションなどにより受講者がナビゲーションへの理解を深め、子どもに対する認識や行動が変化する様子をお伝えします。

※全4回の第3回

【炭谷俊樹 プロフィール】
ラーンネット・グローバルスクール代表。神戸情報大学院大学学長。マッキンゼーにて10年間日本及び北欧企業のコンサルティングに携わる。デンマークの社会や教育に感銘したことがきっかけとなり、1996年に神戸で子どもの個性を活かす「ラーンネット・グローバルスクール」を開校。3歳の幼児から企業のエグゼクティブまで幅広い年齢対象で、探究型の教育を実践している。

◆探究ナビ講座(基礎編)とは
ラーンネット・グローバルスクールが主催する、子どもの探究心や学習意欲をより高めて行く接し方や方法論について学ぶプログラム。全4日間の日程で、座学(オンライン開催)に加え、参加型のワークショップ(リアル開催)などを交えて、体系的・体験的に学びを深める。現場で探究プログラムを行う人向けの教育実践編もある。
 ▶詳しくはこちら

【子どもの好奇心が爆発する親の接し方:第1回 第2回 第4回を読む】
※公開日までリンク無効

ナビゲーションの理解を深めるロールプレイング

「探究ナビ講座(基礎編)」でワークショップなどの体験的な要素を重視する理由を、炭谷氏はこう話します。

「実際に受講者と顔を合わせて対話や議論すると、単に講師から話を聞いただけでは得られない“ストンと腑に落ちる感覚”があるんですね。それがナビゲーションへの理解を深めてくれます。

特に好評なのが、『ロールプレイング』です。いくつかのケースで、受講生の方々にナビゲータやそれを受ける子どもの役を交代で演じてもらいますが、みなさん口を揃えて『意識が変わった』とおっしゃいます」(炭谷氏)

宿題をしない子どものナビゲーションに挑戦!

実際の探究ナビ講座では、家庭や学校などでよく起こるシチュエーションを例とし、複数のロールプレイングを実施します。ここではその中の一つ、家庭を題材にしたもので、多くの親が悩んでいる「宿題」を扱ったものを紹介します。

【ロールプレイングの前提状況】
▶小学校3年生の男の子Aくん。学校では積極的なものの、家ではインドア派。帰宅すると、ゲームかテレビアニメばかりで放っておくとずっとテレビの前に座っている。

▶妹Bちゃんは優等生タイプで宿題もお手伝いもきちんとこなす。

▶親もゲーム好きなのでゲームを禁止したくはないが、家でも勉強やスポーツ、音楽にももっと積極的に取り組んでほしいと思っている。

ロールプレイングは4人1組で行い、次の役を決めます。
・子ども(Aくん、妹Bちゃん)
・お母さん(ナビゲータ)
・オブザーバー(それぞれのよかったところを全体に報告する)

前提状況を想像して、その役になりきって演じていきます。

実際にロールプレイングの様子を取材していると、受講生のみなさんの演技が予想もしない方向へ進んでいくことに驚きます。ナビゲートをするお母さん役は、事前に炭谷さんなどナビゲータ経験者と相談して方針を決めていますが、その計画とはまったく異なる方向に状況が転ぶことも多く、見ているほうもハラハラしてしまうほどです。

ロールプレイング中、お母さん役は一生懸命子どもに話しかけています。  写真:川崎ちづる

あるグループのお母さん役は、Aくんと話し合う時間を持って宿題を自分からするように仕向けようと考えていました。しかし、実際にロールプレイングが始まると、Aくん役はゲームに夢中で一向に話をしてくれません。

お母さん役「お母さん話したいことがあるんだけど」
Aくん「今ちょっとゲームのいいところだから、無理」
お母さん役「いつなら話せる?」
Aくん「うーん、10分後ならいいかな」

しかし、実際に10分後に話しかけると、「ごめん、今一番盛り上がっているところ!」などと言われてしまい、さらに10分後……と何度も先延ばしされてしまいます。しかも、途中で妹Bちゃんが「お兄ちゃん、お母さんとの約束破ってばかりでひどい」と口を挟んで兄妹喧嘩も始まってしまうなど、お母さん役は大忙しです。

アラームをかけて対応し、何とかお母さんとAくんは話をして宿題をする約束を取り付けますが、実際にはなかなかやらない……。そんな状況でロールプレイングが終了となりました。

なかなか計画どおりには進まないのがロールプレイングです。  写真:川崎ちづる
次のページへ ロールプレイングの感想は?
36 件