
【子どものスマホ】利用時間を減らす秘策 「家庭内でルールを作り、親も守る」が想定外の効果〔脳科学者が解説〕
子育て中の家庭が知っておきたい「スマホ利用のリスクとメリット」 #2 ~東北大学助教・榊󠄀浩平先生に聞く、スマホ時間を減らすための方法編~
2024.12.13
東北大学応用認知神経科学センター助教:榊󠄀 浩平
失われた学力は回復できる!?
──前回、前頭前野は小学校高学年~高校生の思春期にかけて著しく発達するというお話が出ましたが、小学校低学年以下の子どもの脳に、スマホはどんな影響があるのでしょうか?
榊󠄀浩平先生(以下、榊󠄀先生):スマホ育児が与える子どもの脳への影響については、2020年以降、世界中で多くの論文が書かれているように感じています。
いずれも悪影響を指摘しているものばかりで、「言語能力」「問題解決能力」「コミュニケーション能力」など、各能力の発達が阻害されたり、間接的に運動不足や睡眠不足に繫がったりするなど、影響の範囲は多岐にわたります。
──すでにスマホを長時間見ているという子の場合、発達の遅れは取り戻せるのでしょうか?
榊󠄀先生:発達の遅れについてはわかりませんが、学力に関しては、努力次第で持ち直せるという結果が出ています。下のグラフは、スマホなどの利用時間の変化によって、2年後の成績がどう変化しているのかを示しています。
榊󠄀先生:スマホを1時間以上使っていた子でも、使用時間を減らすことで2年後の成績が伸びていることがわかります(グラフ右下)。ただ、スマホの利用時間をゼロもしくは1時間未満に減らすことができたのは、わずか13%しかいませんでした。
スマホは依存状態になるよう設計されている
榊󠄀先生:それは、スマホなどで使われるサービスが、非常に依存性の高いものだからです。最近は「依存症ビジネス」という言葉も使われるくらい、いかにユーザーを依存状態にできるかがサービス成功のカギと考えられていて、そのために脳科学の知見が使われることもあります。
テレビと比較すると、テレビは好きな番組をやっていてもせいぜい1~2時間で終わり、まったく関係のない番組が始まりますよね。しかしスマホなどで見られる動画配信サービスは、見終わるとすぐにおすすめの動画が流れてくるので、気持ちを切り替えるタイミングがありません。
さらに、スマホなどでやるゲームの多くは、ダウンロードを無料にして、ゲームの途中で課金してもらうタイプです。長時間遊んでもらうほどゲーム会社は儲かる仕組みなので、毎日アクセスすると報酬がもらえる機能を設けたり、アイテムを購入するときもギャンブル要素を高めたりしています。
──どうりではまってしまうわけですね……。
榊󠄀先生:依存状態になるほど、「やる気が出ない」「集中力が落ちる」など、学力低下につながるさまざまな悪影響が出てきます。これは、アルコール依存やギャンブル依存と同じような傾向です。スマホはそれだけ一度はまってしまうとなかなかやめられない依存性の高いものなのです。
──どうしたらスマホの利用時間を短くできるのでしょう? ルールを決めてもなかなか守れません。
榊󠄀先生:クラスや学校など、みんなで話し合って共通の目標やルールを決めることで、守ろうという意識が高まることが実験でわかっています。
ある学校では、ゲームを1日4時間以上やる子が32%もいたのですが、子どもたちが主体になってルールを決めた結果、2年後には9.8%まで減らすことができました!