「教育移住」で軽井沢に1年半 子どもと親の大きな変化とは?

インタビュー「教育移住」#2「軽井沢風越学園」後編

ライター:片岡 由衣

購入した土地に希少植物が自生!?

移住した当初は、「土地に合わなければ東京に戻ったらいい」と気楽に考えていたという坂口さん。ところが、軽井沢で暮らして1年が経ち、地域に根をはりたいとの気持ちが芽生え始め、大きな決断をします。

「ここでの暮らしも気に入ったので、自宅を建てようと決めました。でも土地探しが大変で……。半年以上、不動産屋へ問い合わせ、見学をして、ようやく希望の土地に出会いました。でも今度はそこで、不動産屋さんから『希少な花が咲いているので大事にしてあげてください』と言われたんです。

調べたところ、どうも『ヤマタバコ』という種で『環境省レッドリスト絶滅危惧種1A類指定』と書かれていました。実際、そんなことはないのですが、ひょっとしたらここには住めないのかも? と当時は心配になりました」(坂口さん)

しかし、このアクシデントが地域との新たなつながりを生み出すことになりました。

「地域で活動する自然保護団体の方々が協力してくださり、ヤマタバコは無事に移植することができました。これをきっかけに、保護団体の方々ともいろいろなお話をさせていただきました。

自分が暮らしているすぐ近くにこれほど希少な植物があったことに驚き、大げさですが、世界を見る目が大きく変わりました。東京にいたころは、植物の種類もまったく知らず、解像度が低かった。

それが今ではすっかり野草観察に夢中になって、妻にあきれられながらも、山に出かけたりするほどになりました」(坂口さん)

新居は着工したばかりなので、今は庭のある賃貸の一軒家暮らし。 写真提供:坂口惣一

厳しい寒さのなかに新たな発見を楽しむ

「でも冬はやっぱり寒い。11月に入ってからはとっても寒いです(笑)」(坂口さん)

11月末(2021年)で、すでに雪が降った日もあるという軽井沢。移住前にもっとも心配していたことは、冬の寒さと車の運転でした。

「軽井沢は車社会、娘の送迎も車でしなければなりません。妻はペーパードライバーでしたが、習うより慣れろで、引っ越してからは、苦手だったバックでの駐車もすぐになんとかなりました。

冬の寒さも、体はもちろんしんどいです。でも初めて霧氷(むひょう)を見て、木々が白く輝く姿に魅入られました。紅葉はもちろん、冬の山もきれいで、車を走らせるたびに四季の移ろいを感じさせられます。

生活コストの面では、暖房費や車にかかる費用は大きいですね。賃貸物件の少なさから、家賃も東京とさほど変わらない金額です」(坂口さん)

学園では大きな雪玉をみんなでつくったそうです。子どもたちは雪が大好き! 写真提供:坂口惣一
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