【中学入試に出る】暗記と理解がキモ! 苦戦する生徒に伝授する「地学」部門の勉強法〔中学受験の専門家が解説〕

「天体」問題の攻略法を首都圏中学受験塾・教室長が回答

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「覚える」から「記憶に残す」へ

しかし、小学生にとって「ベテルギウス」や「デネブ」といった言葉は呪文のようなもので頭に残りにくいようです。星座名も似たようなものが多いので、混同してしまいます。このようなものを頭に残りやすくする手立てが「エピソード」です。たとえば社会で扱う都道府県であっても、「夏休みの旅行で行ったことがある」とか「その県が舞台となったテレビドラマを見たことがある」という経験があれば、その記憶と結びついて子どもの印象に残りやすくなります。前述の「ベテルギウス」も、カタカナ6文字がならんだ「呪文」として覚えるよりも、「脇の下」というちょっとしたエピソードと結びつくことで、より記憶に残りやすくなります。また、七夕祭りで有名な仙台のサッカーチーム「ベガルタ仙台」は、織り姫の「ベガ」と彦星の「アルタイル」をあわせて「ベガルタ」と命名されたようです。

『5文字で星座と神話』では星座とからめた神話が紹介されています。これもエピソード記憶法です。いろいろな周辺情報といっしょに記憶したほうがかえって思い出しやすくなるのです。授業中の先生の意外な雑談がためになるのと同じです。

「エピソードが入ると記憶に残りやすい」という例をもうひとつ。中学入試では「北斗七星を含む星座名を答えなさい」という問題がよく出題されます。この答えは「おおぐま座」なのですが、「おおいぬ座」と答えてしまう子どもがたくさんいます。「おおきい動物」の印象は合っていたのですが……。これに対して、子どもたちに「北極熊」という言葉を伝えたら解決しました。かなりこじつけなのですが、北極熊→「北の空はくまの星座」と結びついたからです。こんな単純なことでも子どもたちの知識は定着します。

星に限らず、いろいろな場面で言えることですが、ちょっとした小話をからめた「エピソード記憶」と、その話を聞いたときの「へぇ~」という「興味」によって格段に学習効果があがってきます。そのため、多少無理やりであっても、自分なりの言葉に落としこむというのはとても大切だと思います。

『5文字で星座と神話』P28~29より

中学入試では、どんな問題が出されるの?

もうひとつ、入試問題を見てみましょう。中学入試の問題に慣れていないと難しく感じると思いますが、星座好きの方はぜひチャレンジしてみてください!

Aは「W字形」と表現されるカシオペヤ座、Bは先ほども話題にあげたオリオン座です。リボンを縦にしたような形とまんなかにならんだ3つの星が特徴的です。CとDは形がとても似ているので、これだけで判断するのは難しいです。ヒントは、Cの星が7つあること。これが北斗七星で、北斗七星を含む=おおぐま座とわかります。Eは特徴的なS字型でさそり座です。さそり座は、オリオン座とからめたギリシャ神話が有名です。

『5文字で星座と神話』P58~59より

……となると、答えはアがB、イがE、ウがCとなります。エのように北極星を探すときにはおおぐま座とカシオペヤ座が使われることが多いです。となると、この答えの候補はAかCとなりますが、Cのおおぐま座はウの答えに使っているので、重複できません。となると、エの答えはAですね。最後のオには「射手座の一部」と書かれています。じつは、中学入試では射手座はあまり扱われることはなく、星座の形だけで「これが射手座だな」と判断できる受験生はごくわずかです。しかし、射手座の形を知らなくても、消去法で絞り込んでいけばオの答えがDとわかります。「知らない星座の形」であっても、出された選択肢の組み合わせから答えを出すこともできる問題構成になっていました。

この「知らないものだけど答えを選べる」ということが大切で、近年は「知識を答える問題」から「知識をもとに考えれば答えを出せる問題」へと変わってきています。受験理科というと「暗記科目」という印象を持っている方もいるかと思いますが、子どもたちの「頭の使い方」も要求されているのが近年の中学入試のトレンドになっています。

私の家の近くは民家しかないので、帰宅するころはまわりは真っ暗ということもあって夜空はきれいです。ぜひ、皆さんも夜空をながめるところからはじめてみてください。今回紹介する本を読むことで星座にすこしでも興味を持ってもらいたいです。もしかしたら夜空を眺めたときにも今までとちがった景色が広がっているかもしれません。

『5文字で星座と神話』好評発売中!

SNSで大反響! 『5文字で百人一首』、『5文字で四字熟語』に続く、「5文字で」シリーズ第3弾!

「星座ってだれが決めてるの?」「12星座ってどうして秋に見える『おひつじ座』からはじまるの?」など、知識コラムもあって、今まで聞けなかった疑問もスッキリ解決!

たとえば、12星座の神話を5文字であらわすと……?
助けてくれたはずなのに……。「おひつじ座」→「恩人を献上」
王女がだまされた!?「おうし座」→「牡牛は大神」
せつない双子の物語。「ふたご座」→「命を半分こ」
戦力外通告!?「かに座」→「何か踏んだ」
剣も弓矢も効かない人食いライオンの退治法とは……?「しし座」→「弱点絞め技」
娘の取り合いで世界がめちゃくちゃに……。「おとめ座」→「娘離れ失敗」
神にも見離されました。「てんびん座」→「もう知らん」
オリオンはサソリがトラウマで逃げ続け……。「さそり座」→「まさに天敵」
不死身の体に毒矢を受けてしまい、死ねずに苦しんだケンタウルスが出した結論は……。「いて座」→「奇特な馬人」
大きな怪物に驚き、笑い者になってしまった神様。「やぎ座」→「マーメェド」
美少年の息子と引き換えに夫婦が受け取ったのは……。「みずがめ座」→「天国の息子」
逃げまどう神々の姿がおもしろいから星座に!?「うお座」→「逃がした魚」


ちょっとむずかしい神話も、聞いたことのない星座も、5文字におきかえれば意味が楽しく頭に入ってくるよ!
爆笑まちがいなしの5文字で、キミも星座マスターになろう!

『5文字で星座と神話』著・イラスト/すとうけんたろう、監修/左巻健男、講談社
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アキラ

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大手進学塾 現役教室長

学生時代から塾講師として中学受験指導に携わり、大学卒業後は塾業界に就職。2023年、関東圏にある現在の教室に室長として就任。保護者や生徒に対するきめ細かいコミュニケーションを重視した教室運営を行うことにより、御三家をはじめ、早稲田、渋谷幕張の合格者数は高い進学実績がある。SNSでも独自の学習指導法を公開している。保護者はもちろん、塾関係者からもそのノウハウに注目が集まっている。 X(旧Twitter):@AArukikata

学生時代から塾講師として中学受験指導に携わり、大学卒業後は塾業界に就職。2023年、関東圏にある現在の教室に室長として就任。保護者や生徒に対するきめ細かいコミュニケーションを重視した教室運営を行うことにより、御三家をはじめ、早稲田、渋谷幕張の合格者数は高い進学実績がある。SNSでも独自の学習指導法を公開している。保護者はもちろん、塾関係者からもそのノウハウに注目が集まっている。 X(旧Twitter):@AArukikata