「一人っ子」の中学受験 親の価値観アップデートと子どもの観察が鍵  

進学塾『VAMOS』代表・富永雄輔さん×教育ジャーナリスト・加藤紀子さん対談 #2 一人っ子親の成功体験とわが子の関係性について

受験成功の鍵は自己肯定感を爆上げすること

──子どもをよく観察するとは、具体的にどうすればいいのでしょうか?

加藤さん:私が、子どもを観察するときの話でよくするのが、「I am、I have、I can、I like」の4つを意識するということです。

これは、子どもの特性や持っている強みを子どもと一緒に考えてみることなんですけど、そうすることで、「レジリエンスマッスル」、つまり「やり抜く力」の土台となる心の筋肉が鍛えられて、自己肯定感も強くなると言われています。

富永さん:自己肯定感は本当に大事ですね。特に最近の難関校は自己肯定感を試すような問題ばかり出しますから。じゃあ、自己肯定感をどうやって育むかというと、今の子どもたちが置かれている環境を理解することが重要です。

今の子は、小さいころから習い事をいろいろやっていて、無意識のうちに競争下のもとで育っています。いくら小学校の徒競走で順位をつけないと言ったって、サッカーでもバレエでも競争があります。生まれたときからマウントの世界にいる子どもたちを、家と塾だけは、絶対に否定してはいけないと僕は思っています。

加藤さん:低学年から塾に入れる家庭も増えていて、1年生からクラス分けや偏差値が出るじゃないですか。そこに親が引っ張られないようにしなきゃいけないですよね。

富永さん:​僕の塾では、低学年のうちの塾は習い事のひとつととらえるようにしています。もちろん偏差値は出しませんし、点数はあくまでも習ったことと身についたことの差を知るためのもの。4年生までは「自分はできるんだ」ととにかく思い込ませます。勝負をかけていくのは5年生から。

こうして4年生までに自己肯定感を100ではなく、300ぐらいまで増やしておけば、5~6年生の勝負のときに200削られたとしても、最初に300あれば100残りますからね。そもそも基本が100ぐらいだと思えば十分です。

加藤さん:4年生までにちゃんと爆上げしておくということが大切ですね。

富永さん:そうです。ただ、うちの塾に大手塾から転塾してくる5~6年生の子たちは、大手で自己肯定感をバキバキに折られてから来るので、苦手だと思ってしまったマインドセットを変えるのはすごく難しい。子どもって嫌いなものは絶対に食べないじゃないですか。それと同じで、苦手意識が芽生えてしまったものを変えるのは大変です。

逆に言えば、今の中学受験は自己肯定感さえあればどうにかなるんじゃないかと言えるぐらい、自己肯定感は本当に重要だと思いますね。

────◆─────◆────

一人っ子の中学受験の成功の鍵は、親の価値観のアップデートと志望校を早めに決めること、そして親の成功体験を押し付けないことが重要ということがわかりました。それと同時に、子どもをとことん観察することも。その点で言えば、一人っ子親は子ども一人に目をかけて観察できる分、中学受験において有利だと言えるのではないでしょうか。

最終回となる3回目は一人っ子の自己肯定感の上げ方について対談していただきます。

撮影/森﨑一寿美 取材・文/宇野安紀子

富永さんと加藤さんの一人っ子対談は全3回。
1回目を読む。
3回目を読む。
(3回目は2023年5月10日公開。公開日までURLのリンク無効)

『海外の大学に進学した人たちはどう英語を学んだのか』著・加藤紀子(ポプラ社)
『ひとりっ子の学力の伸ばし方』著書:富永雄輔(ダイヤモンド社)
23 件
とみなが ゆうすけ

富永 雄輔

進学塾『VAMOS』代表

進学塾『VAMOS』代表。京都大学を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生まで通塾する『VAMOS(バモス)』を設立。現在、吉祥寺、四谷、浜田山、お茶の水校を開校。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年首都圏トップクラスの難関校合格率を誇り、日本屈指の“成績が伸びる塾”として「プレジデントファミリー」「アエラウィズキッズ」「日経キッズプラス」などに登場。 論理的な学習法や、子どもの自主自立を促し、圧倒的な支持を集めている。 主な著書に『ひとりっ子の学力の伸ばし方』、『男の子の学力の伸ばし方』、『女の子の学力の伸ばし方』(すべてダイヤモンド社)がある。 VAMOS https://vamos-edu.jp/

進学塾『VAMOS』代表。京都大学を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生まで通塾する『VAMOS(バモス)』を設立。現在、吉祥寺、四谷、浜田山、お茶の水校を開校。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年首都圏トップクラスの難関校合格率を誇り、日本屈指の“成績が伸びる塾”として「プレジデントファミリー」「アエラウィズキッズ」「日経キッズプラス」などに登場。 論理的な学習法や、子どもの自主自立を促し、圧倒的な支持を集めている。 主な著書に『ひとりっ子の学力の伸ばし方』、『男の子の学力の伸ばし方』、『女の子の学力の伸ばし方』(すべてダイヤモンド社)がある。 VAMOS https://vamos-edu.jp/

かとう のりこ

加藤 紀子

教育ジャーナリスト

1973年京都市生まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、子どものメンタル、子どもの英語教育、海外大学進学、国際バカロレア等、教育分野を中心に「プレジデントFamily」「NewsPicks」「ダイヤモンド・オンライン」「ReseMom(リセマム)」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。 2023年4月に最新書『海外の大学に進学した人たちはどう英語を学んだのか』(ポプラ社)が発売された。 主な著書に『子育てベスト100 「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(ダイヤモンド社)、『ちょっと気になる子育ての困りごと解決ブック!』(大和書房) 過去の記事はこちら→【Facebook】https://www.facebook.com/iluv97magnolia/

1973年京都市生まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、子どものメンタル、子どもの英語教育、海外大学進学、国際バカロレア等、教育分野を中心に「プレジデントFamily」「NewsPicks」「ダイヤモンド・オンライン」「ReseMom(リセマム)」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。 2023年4月に最新書『海外の大学に進学した人たちはどう英語を学んだのか』(ポプラ社)が発売された。 主な著書に『子育てベスト100 「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(ダイヤモンド社)、『ちょっと気になる子育ての困りごと解決ブック!』(大和書房) 過去の記事はこちら→【Facebook】https://www.facebook.com/iluv97magnolia/