親が理系じゃなくても大丈夫。かこさとしさん流 小学生からの理系教育のヒント

新しく生まれ変わった、かこさとしさん伝説の化学絵本シリーズ

40年前の絵本が現在でも通用! その中身とは?

「だるまちゃん」シリーズなどからはイメージしづらいかもしれませんが、かこさんはもともと東京大学工学部を卒業した工学博士・技術士(化学)でした。大学を卒業後も研究職に就いていました。絵本作家としては珍しく理系分野に非常に理解のある人物で、実際に科学系の絵本を数多く残しています。『絵で見る 化学のせかい』シリーズも、そんな科学系の絵本の中の一つです。

40年前のシリーズは、日本化学会の監修で刊行されました。「当時の日本化学会会長の斎藤信房先生をはじめ、当時のシリーズに関わっていらっしゃった先生方について直接存じ上げていますし、元のシリーズも以前から読んでいました」と藤嶋さん。復刊の話を聞いたときには、初版からずいぶんと年月が経っていることもあり、かなり修正が必要になるかもしれないと思ったそうです。

「ただ実際に内容を見ると、そこまで大きな修正は必要ありませんでした。かこ先生が40年以上前にお書きになったことは今でも通用するのです。この本の内容は、現代でも活かせます。そういった意味で、このシリーズがまた多くの人に読んでもらえるのは素晴らしいことだと思います」
↑『かこ さとし 新・絵でみる化学のせかい4 地球と生命 自然の化学』より。新型コロナウイルスのワクチンで一般的な認知が高まったmRNAなどDNAとRNAの仕組みが絵でわかりやすく解説されています。
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かこさん自身、科学絵本については、それを読んだ子どもたちが大人になってもその知識を活かせるよう、少なくとも20年以上のちまで通用することを心がけて作られていたようです。そうはいっても、科学の世界は日進月歩です。今回の新シリーズでは、最新の知見に基づいて、注釈の形で新しい話題が随所に追記されています。たとえば4巻の『地球と生命 自然の化学』では、mRNAを活用した新型コロナウイルスのワクチンの仕組みについて、藤嶋さんの解説が加えられました。

復刊作業に取り掛かった当初は、データは新しくするものの、初版をできるだけ変えないことを編集方針としていたようです。しかし編集作業が進むにつれて、今の読者にもより役立つものをというかこさんのご家族の思いもあり、適宜新たな情報を付け加えていく方向に変わっていったとのこと。編集作業の最後のぎりぎりの段階まで、追加する新原稿に関するやり取りが続けられました。

『絵で見る 化学のせかい』は、未来の化学者を育てたいというかこさんの強い意志がこもったシリーズです。漢字にはすべてルビが振ってあり、小中学生が主な読者対象ではあります。ただ高校生や、さらには大人が読んでも役に立つと藤嶋さんは言います。

「たとえば高校生であれば、この分野が面白いから将来やってみたいなと思わせるようなヒントがちりばめられています。そういうきっかけになりうるものが、シリーズ全5巻の中であちらこちらにみられます」
↑『かこ さとし 新・絵でみる化学のせかい5 化学の未来 資源とエネルギー』より。この巻ではSDGsの基礎となる考え方が丁寧に語られています。かこさんが40年以上前からSDGsについて詳細に述べていることに驚かされます。

かこさとしさんとの一番の思い出とは

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