伝説の絵本作家【かがくいひろしの世界展】に3万人が集まった 「涙が止まりません」ファンが感動の声

わずか4年で16冊もの名作を残した絵本作家の知られざる人生と軌跡を公開

「かがくいひろしの世界展」会期中のイベントで子どもたちが描いただるまさん
たった4年で16冊もの絵本を上梓し、いまでも売れ続ける大ヒット絵本を何冊も生み出しながらも、54歳の若さで急逝した絵本作家・かがくいひろしさんを知っていますか? その仕事と人生が、NHKの「日曜美術館」で紹介されるや、大反響。時を同じくして、「日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家 かがくいひろしの世界展」が長野県を皮切りにスタートしました。

初回の巡回先である長野県岡谷市のイルフ童画館では、市の人口4万7000人に対し、3万人に近い動員が見込まれており、伝説の絵本作家の仕事を網羅した初めての展覧会に注目が集まっています。「涙が止まりません」という来館者の言葉……いったいどんな展示をしているのか、取材しました。

絵本作家・かがくいひろし

撮影:大志摩洋一
かがくいひろしさんは、2005年「第27回講談社絵本新人賞」を受賞し絵本作家としてデビューしました。以来、一躍、人気作家となり、次々と絵本を刊行しましたが、2009年、膵臓(すいぞう)がんのため、54歳で急逝。わずか4年の間に、16冊もの絵本を残しました。
かがくいひろし
東京都生まれ。1980年、東京学芸大学教育学部美術学科卒業。千葉県下の特別支援学校で28年にわたり教鞭をとる傍ら、人形劇の公演活動や立体作品の制作・発表をおこなう。50歳のとき『おもちのきもち』(講談社)で「第27回講談社絵本新人賞」を受賞し、絵本作家デビュー。以降、2009年に病で急逝するまでの4年間に「だるまさん」シリーズ(ブロンズ新社)、『ふしぎなでまえ』『みみかきめいじん』(講談社)、『おむすびさんちのたうえのひ』(PHP 研究所)、「まくらのせんにん」シリーズ(佼成出版社)など16冊の絵本をのこす。

かがくいひろしの世界展

2023年6月、かがくいひろしさんの絵本作家としての4年間の軌跡を中心に、デビューするまでの人生など絵本作家としての原点を追いかけた、初めての大規模展覧会「日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家 かがくいひろしの世界展」が長野県を皮切りにスタートしました。

絵本作家としては、『おもちのきもち』や「だるまさん」シリーズが有名なかがくいひろしさんですが、彼が特別支援教育に携わっていたことはあまり知られていません。彼の絵本の原点には、家族とのかかわりや、障がい児教育の現場での経験がありました。

展覧会では、大人気作品「だるまさん」シリーズの原画をはじめ全作品の絵本原画を展示し、アイデアノートや未完のラフとともに、絵本作家としての軌跡をたどりながら、教員時代に手がけた教材や子どもたちとの創作や交流、人形劇の記録などから、絵本創作のルーツに迫っています。

「かがくいさんが、絵本のどこにこだわっているかを見ていただけるように、その“こだわり”がわかるように腐心しました」というのはイルフ童画館の展示担当・河西見佳(かさい みか)さん。「原画以外の膨大な資料も、『全部出したい! 見せたい!』と思いつつ、限られる展示数の中で、何を見せるか絞り込むのがいちばんの苦労でした」その甲斐あって、絵本とは直接関係のない分野の展示からも、かがくいさんの絵本に通じる“著者のまなざし”が感じとれる内容になっています。

また、かがくいさんの「言葉」にも注目し、会場のあちこちにパネルを展示。たとえば、「私は、身体感覚とか、生理的なこと、例えば食べることとか、生きている人の誰にでも共通する感覚を大事にしていきたい」など。そんな言葉をかみしめて絵に向かうと、より深く絵を味わえる、そんな展示になっています。
「だるまさん」シリーズをはじめ、たくさんの原画が展示されている 

展覧会のみどころ

・絵本16作品すべての原画を展示!
4年間で16作の絵本を残したかがくいさん。今回の展示では、そのすべての絵本の原画を展示しています。(前期・後期などに分けての展示あり)
『もくもくやかん』原画
・未完のラフを一挙公開
人気シリーズ続編の未完のラフや、さまざまな習作やアイデアノートなど絵本の卵を公開。
『もくもくやかん』習作ほか
・絵本のルーツ かがくい先生の横顔、教員時代の資料
かがくいさんは特別支援学校の教師として、28年間にわたり勤めてきました。様々な障がいのある子どもたちと過ごすなかで、どうやったら興味をもってもらえるか、笑ってくれるか、懸命に考え、工夫を凝らした教材をつくりました。人形劇もそのひとつです。
身近な素材から作りだした人形劇の小物も再現されている
・創作の背景 81冊のアイデアノート、家族へのまなざし
思いついたアイデアを記したノートやスケッチブックには、絵本のもととなった絵や言葉がたくさんメモされています。どんなところから絵本が生まれたのか、その着想の原点をうかがい知ることができます。また、学生時代の作品や、家族への私信やバースデーカードなど、個人的な制作物からも、あたたかい人柄がにじみ出ています。
大量のアイデアノートには表紙にまでメモがびっしり​​
・映像アトラクション
この展覧会のために特別に制作された映像には、音楽ユニット・ロバの音楽座による独創的な音楽に乗せて、絵本のキャラクターたちが大集合。かがくい絵本を俯瞰できる画期的なアニメーションになっています。
絵本のキャラクターたちが、不思議でユーモラスな音楽に乗って、絵本の世界を動きで表現

来館者からの言葉

900万部を超える大ベストセラー絵本「だるまさんが」シリーズ(ブロンズ新社)をはじめ、かがくいひろしさんの全作品が揃うこの展覧会は、長野県・イルフ童画館を皮切りに、岩手、高知、兵庫……と2026年まで全国を巡回予定。

2023年6月から展示が始まったイルフ童画館では、「人口4万7000人の岡谷市ですが、78日間の会期にもかかわらず3万人に近い動員見込みで、他県からもかなりお越しいただいています。開館以来の最高動員になりそうです」(同館・河西さん)。

当初から順調な集客ではありつつも、「日曜美術館」放送以降、ぐっと数が増えていったといいます。「来館者からは、『絵本は知っていたが、こういう人だとは知らなかった』『涙が止まりません』という感動の声が多数寄せられています」(同館・河西さん)また、「小さい頃読んでいました」という高校生など、幼児や子育て世代だけでなく、若者からお年寄りまで、幅広いファン層から注目​が集まっています。また、車椅子やストレッチャーに乗った方々も数多く来館しているのも、「かがくいひろしの世界展」の特徴。

2023年9月末からは、東北に場所を移し、美術館ごとの特色が出た展示がされる予定。多くのファンが、「かがくいひろし」の人となりに触れ、その絵本世界がさらなる広がりをみせていきます。
巡回展のスケジュール

長野県【会期終了】
開催中:~2023年9月16日(土)
会場:イルフ童画館
https://www.ilf.jp/exhibition/kagakuihiroshi/

岩手県【会期終了】
開催期間:2023年9月30日(土)~12月24日(日)
会場:花巻市博物館
https://www.city.hanamaki.iwate.jp/bunkasports/bunka/1008981/1009017/1018710.html

兵庫県
開催期間 : 2024年6月29日(土)~9月1日(日)
会場 : 神戸ファッション美術館
https://www.fashionmuseum.jp

東京都
開催期間 : 2024年9月14日(土)~11月4日(月・祝)
会場 : 八王子市夢美術館
https://www.yumebi.com/

高知県・福島県も予定

かがくいひろしの絵本

かがくい ひろし

Hiroshi Kagakui
絵本作家

東京都生まれ。1980年、東京学芸大学教育学部美術学科卒業。千葉県下の特別支援学校で28年にわたり教鞭をとる傍ら、人形劇の公演活動や立...

幼児図書編集部

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