第43回講談社絵本新人賞は応募数442作の中から選考会を経て、『まよいぎょうざ』を書いた玉田美知子さんに決まりました! 受賞からデビューまでの日々を、受賞者自ら書き上げる「制作日記」。「ギョーザの日」でもある3月8日からお届けします。
絵本『まよいぎょうざ』制作日記 1皿目「切れたドクロのブレスレット」 玉田美知子
まさか私が受賞するなんて、いまだに夢の中にいるようです。
中学生のころに絵本作家になろうと志してから30年。子育てが少し落ち着いて、自分が本当にやりたかったことに挑戦しようと絵本教室に通い始め、このような結果につながりました。諦めずに一歩踏み出してよかったなと、心の底から思います。
いま現在は、コーヒー豆の定期配送便のお店を運営しながら、絵本を描いています。餃子もお菓子も大好きな、きじ猫推しの45歳です。
緊張の連続で眠れない日々が続いていたからでしょうか。良性のめまいとの診断ですぐに帰宅できましたが、私自身、初めてのことだったので何が起こったのか理解できず、悪い病気だったらどうしようとすごく不安になりました。
私が元気になってから、家族に「何事もなかったから言えるけど、地獄の絵本なんて描いたから、悪魔に魂を売ったのかと思って心配したよ〜」なんて言われて笑い話になりましたが、我が家の歴史に残るであろう大事件でした!
今回は前回のように倒れることがないように、結果の発表があるたびに大騒ぎはするものの、とにかく体調に気をつけて過ごしていました。
受賞のお電話をいただいたときは泣きながら喜び、興奮冷めやらぬ翌日に、またまたこんなことがありまして、ここで話さずにはいられません! ちょっと聞いていただけますか。
私は受賞の喜びをかみしめながら、いつものように机に向かって作業をしておりました。すると突然、床にバラバラッと大きな音をたてて何かが転がり……
驚いて落ちているものを拾い上げると、なんとドクロの形をしたものが散らばっていて……
なんじゃこりゃー!!!
いくらゴムひもが劣化したとはいえ、このタイミングで壊れるなんて怖すぎませんか…? 誰でも背筋が凍りますよね…? 不吉な予感がしますよね…⁈
2021年の事件もあったので恐れ慄き、私は今度こそ悪魔と契約してしまったのだろうか、「願いを叶えてやったから、おまえの命はいただく!」とかいって、悪魔が迎えにくるんじゃなかろうかと、本気で怯えました(漫画の読みすぎですね)。
しかし今、こうして元気に制作日記を書いているので、どうやら悪魔と契約したわけではなさそうです! バカバカしい妄想ですみません。
『じごくの2ちょうめ5ばんち9ごう』は、私のように怖い想像が止まらなくなって怯える郵便屋さんのお話でしたが、『まよいぎょうざ』も同じように、ひとりの男の子の豊かなイマジネーションのお話です。
ある日「ぎょうざがいなくなりさがしています」という放送が街中に流れます。主人公の男の子が、その放送に驚き、どうしていなくなったのかを考え始めるストーリーです。
私の住んでいる地域で流れる防災無線を聞いていて、このアイデアを思いつきました。無線の内容は、例えば、サルが駅前に出没しました! なんていうものから、詐欺の注意喚起や行方不明者のお知らせまで、さまざまです。
この絵本を作ってみて、自分じゃない誰かや、ここじゃないどこかに思いを馳せることって大事なんじゃないかなと、改めて感じました。そんな難しいことを伝えたくて作った絵本ではありませんが。とにかく読んでくださる方に喜んでもらえますようにと願っています。
さて、体調を整えて臨んだ贈呈式の様子もお伝えしたいと思います!
会場に到着すると、入り口付近で編集者のみなさまが温かく出迎えてくださって、式が始まる前から感極まりました。
その奥には苅田澄子先生と北見葉胡先生がいらっしゃって、さらに大興奮。お会いして早々に、ただのファン丸出しであれこれと質問させていただきましたが、とても優しく丁寧に応えてくださり、たいへん勉強になりました。
受賞のスピーチは、やはり胃が痛くなるほど緊張しましたが、そんな中でも、今までお世話になった方々の顔を思い浮かべながら、感謝の思いを述べさせていただきました。このときの気持ちをずっと心に持って、制作を続けていきたいです。これから楽しんでもらえる絵本を作ることが、一番のご恩返しかなと思っております。
その後、藤本ともひこ先生、三浦太郎先生からも、貴重なアドバイスをいただきました。かっこいい着地を目指すこと、自分なりに絵のルールを決めること、など、私が一番悩んでいた部分についてのお話が伺えたので、とても心に響きました。励ましのお言葉もいただき、何より嬉しかったです。
改めて選んでくださった審査員の先生方に、心から感謝申し上げます。
先生方の講評のあとは、としやマンさん、torisunさん、殿本祐子さんと一緒にテーブルを囲みました。みなさんの作品を拝見しながら、和気あいあいと絵本談義に花を咲かせました。緊張もほぐれ、とても楽しいひとときでした。
第42回講談社絵本新人賞受賞者の伊作久美さんの制作日記でも書かれていましたが、2021年の贈呈式では、お互いの作品を読み合う時間がなかったので、2022年はこのような場を設けてくださったのだと思います。お心遣いがありがたかったです。
伊佐さんの作品『タコとだいこん』は、発売されてから購入し、じっくりと読ませていただきました。特に見開きのページが大胆でかっこよくて、ハートをタコづかみにされました。
そして絵本を本棚の上に飾り、新人賞受賞を祈願していたので、僅差で新人賞をいただけたのは、伊佐さんとタコさんのおかげかもしれません!ご利益がありました。ありがとうございました。
私とぎょうざたちも、『タコとだいこん』に続いていけるよう、がんばります!
初回から「切れたドクロのブレスレット」なんて仰々しいタイトルにしてしまいましたが、これからもお付き合いいただけたら嬉しいです(ブレスレットは針金で通し直し、これからも同じ場所で、守護神として見守っていただくことにしました)。
最後に、年賀状用に描いたぎょうざお節をご紹介し、餃々(ぎょうぎょう)しい1年を祈願して、締めくくりたいと思います!
来月は、編集者さんとの打ち合わせの様子などをお届けする予定です。
ではまた次回もどうぞよろしくお願いいたします~!
講談社絵本新人賞 受賞作既刊
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第42回新人賞受賞作『タコとだいこん』伊佐久美・作
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第41回新人賞受賞作『にんじゃいぬタロー』渡辺陽子・作
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第40回新人賞受賞作『まよなかのせおよぎ』近藤未奈・作
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第39回新人賞受賞作『いっぺん やって みたかってん』はっとりひろき・作
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第38回新人賞受賞作『おじいちゃんの ふしぎなピアノ』はまぎしかなえ・作
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第37回新人賞受賞作 『ピカゴロウ』ひろただいさく・ひろたみどり・作
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第36回新人賞受賞作『ほしじいたけ ほしばあたけ』石川基子・作
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第35回新人賞受賞作『てがみぼうやのゆくところ』加藤晶子・作
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第34回新人賞受賞作 『きいのいえで』種村有希子・作
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第34回佳作受賞作『それなら いい いえ ありますよ』澤野秋文・作
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第33回新人賞受賞作『シールの かくれんぼ』定岡フミヤ・作
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第33回佳作受賞作『おにぎりにんじゃ』北村裕花・作
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第32回新人賞受賞作『ぼくと おおはしくん』くせさなえ・作
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第30回新人賞受賞作『あっぱれ! てるてる王子』コマヤスカン・作
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第30回佳作受賞作『まないたに りょうりを あげないこと』シゲタサヤカ ・作
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第29回新人賞受賞作『たこやきかぞく』にしもとやすこ・作
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第28回新人賞受賞作『つぎはぎ おばあさん きょうも おおいそがし』たかしまなおこ・作
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第27回新人賞受賞作『おもちのきもち』かがくい ひろし・作
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第25回新人賞受賞作 『ミーちゃんですヨ!』なかや やすひこ・作
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第25回佳作受賞作『いぬの ムーバウ いいね いいね』高畠那生・作
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第24回新人賞受賞作『むしゃむしゃ武者』藤川智子・作
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第21回新人賞受賞作『ガボンバのバット』牛窪良太・作
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第20回新人賞受賞作『かみをきってみようかな』足立寿美子・作
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第19回新人賞受賞作『トカゲのすむしま』串井てつお・作
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第18回新人賞受賞作『ハワイの3にんぐみ』笹尾俊一・作
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第16回新人賞受賞作『しろへびでんせつ』山下ケンジ・作
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第14回新人賞受賞作『ふしぎなカーニバル』あきやまただし・作
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第5回新人賞受賞作『新装版 ばあちゃんのえんがわ』野村たかあき・作
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第2回新人賞受賞作『新装版 ゆきのひ』佐々木潔・作
玉田 美知子
1977年生まれ、神奈川県在住。多摩美術大学立体デザイン専攻卒業。 第21回ピンポイント絵本コンペ入選、第42回講談社絵本新人賞佳作受賞。 2022年、第43回講談社絵本新人賞を受賞。 2024年、第15回ようちえん絵本大賞受賞、第8回未来屋えほん大賞受賞、第15回リブロ絵本大賞入賞。コーヒー豆のサブスクリプションサービスを運営。
1977年生まれ、神奈川県在住。多摩美術大学立体デザイン専攻卒業。 第21回ピンポイント絵本コンペ入選、第42回講談社絵本新人賞佳作受賞。 2022年、第43回講談社絵本新人賞を受賞。 2024年、第15回ようちえん絵本大賞受賞、第8回未来屋えほん大賞受賞、第15回リブロ絵本大賞入賞。コーヒー豆のサブスクリプションサービスを運営。