「タイトル変更!」デビュー間近の絵本作家の制作日記

5皿目「表紙もぎょうざもよく練って」(2022年 講談社絵本新人賞受賞者)

玉田 美知子

1979年に創設され、かがくいひろしさん、シゲタサヤカさん(佳作)、石川基子さんなど、たくさんの絵本作家さんを輩出してきた「講談社絵本新人賞」。新人賞受賞作品は単行本として刊行されるため、絵本作家を目指す多くの人からご応募いただいております。

第43回講談社絵本新人賞は応募数442作の中から選考会を経て、『まよいぎょうざ』を描いた玉田美知子さんに決まりました! 受賞からデビューまでの日々を、受賞者自ら書き上げる「制作日記」です。

絵本『まよいぎょうざ』制作日記 5皿目「表紙もぎょうざもよく練って」玉田美知子

ぎょうざを描くことも作ることも大好きな玉田美知子です、こんにちは。

2ヵ月間、家にこもって色塗り作業に没頭しておりました。

間に合うのだろうかと何度も不安になりながら、できるできる! と自分を鼓舞して、どうにか32ページの原画を期限ギリギリに描きあげることができました。

途中、納得のいかないページがあり、立ち止まったこともありましたが、担当編集さんと相談しながら微調整することで、いったん冷静になって妥協せずに進めることができたと思います。

印刷されてから修正することは当然ながらできないので、引っかかるところが少しでもあったら、どんなに急いでいても、立ち止まって考えることが大切だと感じました。

焦りは禁物ですが、それと同時に、これで良しと決定する覚悟も必要で、そのバランスがとても難しいです。
立ち止まった11枚目。気になる箇所が多く最初から描き直し。写真提供:玉田美知子
本編を描き終えてほっとしたのも束の間、今度は、表紙、裏表紙、見返しを考える作業が待っています。

裏表紙、見返しは意外にもすんなり描けて、あとは表紙のみ! となったところで、手が止まってしまいました。
見返し、表紙ラフ。写真提供:玉田美知子
突然ですが、ここで重要なお知らせがあります。

実は絵本のタイトルが変更になりました!

「まよい」という単語が子どもには難しいのでは?とのご意見もあり、担当さんと一緒に考えて、『ぎょうざが いなくなり さがしています』というタイトルになりましたので、これからぎょうぞお見知りおきください!

さて、絵本の顔である、もっとも重要な表紙。

せっかく中身を頑張って描いても、良い表紙でなければ、手にとって中を開いてもらえません。そう気負えば気負うほど、良いアイデアが思い浮かばず……。

そこで、家の本棚にある絵本を見ながら、表紙絵とはどういうものかを考えてみました。

渡辺陽子さん作の『にんじゃいぬタロー』ならにんじゃいぬタローが、伊佐久美さん作『タコとだいこん』ならタコとだいこんが、表紙で強い存在感を放っています。

私が自宅で少し調査した結果、絵を見ただけでタイトルが予想できる絵本がほとんどでした。

『ぎょうざが いなくなり さがしています』というタイトルにふさわしい表紙はどんなものなのか。長いタイトルなので、一枚の絵からそのタイトルを想起させるのは、なかなか至難の業です。

6パターン考えたラフの中から1枚を選んで色付けしてみましたが、うまくいかず描き直し。これが書店に並ぶのかと思うと、急に緊張して肩に力が入り、線が震えたりして……。

残りわずかな餃子パワーを振り絞り、構図を変えてみて、ようやく3枚目で納得のいく表紙絵が完成いたしました。

担当さんにも、「中を開きたくなる表紙絵になったと思います!」とのお言葉をいただき、胸をなでおろしました。

時間がない中での制作でヒヤヒヤしましたが、時間があったらあったで延々と悩んでしまいそうなので、短期間で仕上げられたのはかえって良かったのかもしれません。

諸先輩方の制作日記を改めて読み返してみても、やはりみなさん表紙に苦戦しておられます。
最後の余力のないところで、表紙という最大の難所が待っていました。

「表紙のイメージを最初から考えておくこと、表紙を描く余力を残しておくこと!」

今後のためにも心に刻んでおこうと思います。
タイトル文字もいろいろ書きました。写真提供:玉田美知子  
余談ですが、作業もあと少しのところで、いつも使っている紙パレットが無くなってしまいました。

絵皿と併用して紙パレットを使っていますが、塗りが少量のところはやっぱり紙パレットのほうが使い勝手がよいのです。

買いに行く時間もなく、家の中で代わりになるものを探して、あれこれ試してみましたが、牛乳パックが遜色なく使いやすかったです!

昔読んだ本で、有名な作家さんが卵パックをパレットとして利用されていて、卵パックも便利です。もしそんな機会があれば、ぜひお試しください!
紙パレットの代替品。牛乳パックは万能です!写真提供:玉田美知子
これで私の作業の全工程が終了いたしました! やったー!

作業が終わって時間ができたので、今回の一皿は、手作り餃子をお届けいたします!

普段は市販の皮で作りますが、せっかくなので、皮から作ってみます。

【餃子の皮の作り方】

①強力粉と薄力粉を同量くらい、塩少々を入れて混ぜる。

②お湯を入れてたくさんこねる。少し休ませる。

③生地を分けて丸める。

④綿棒で伸ばす。

一度手のひらで生地を軽くつぶしてから伸ばすときれいにできました。
打ち粉の量が少なくて途中で皮がくっついてしまい、イライラしながら作り直し!
5つのひだのぎょうざたちが出来上がりました!写真提供:玉田美知子
浜松餃子風に、もやしを添えてみました!写真提供:玉田美知子
餃子パワーをチャージしたので、空になったエネルギーが再び満タンになりました。

私の作業が終わっても、これからデザイナーさんや印刷所さんにもお世話になり、まだまだたくさんの工程があるそうです。

ここから先は未知の体験なので、来月はどんな制作日記をお届けできるのか、まだ私にも想像がつきません。

6皿目も楽しみにしていただけたら嬉しいです!

お伝えしたいことがたくさんあり、写真が多めで恐縮です。

毎月読んでくださっているみなさま、本当にありがとうございます!

改めまして『ぎょうざが いなくなり さがしています』を、なにとぞ、ぎょうぞ! よろしくお願いいたします!

講談社絵本新人賞 受賞作既刊

たまだ みちこ

玉田 美知子

作家

1977年生まれ、神奈川県在住。多摩美術大学立体デザイン専攻卒業。 第21回ピンポイント絵本コンペ入選、第42回講談社絵本新人賞佳作受賞。 2022年、第43回講談社絵本新人賞を受賞。 コーヒー豆のサブスクリプションサービスを運営。

1977年生まれ、神奈川県在住。多摩美術大学立体デザイン専攻卒業。 第21回ピンポイント絵本コンペ入選、第42回講談社絵本新人賞佳作受賞。 2022年、第43回講談社絵本新人賞を受賞。 コーヒー豆のサブスクリプションサービスを運営。