【絵本制作大詰め】「入稿まで一筋縄ではいかないよの巻」コロナにも負けず、夏の暑さにも負けず、担当編集者の無茶振りにも負けず……
第44回講談社絵本新人賞受賞作家 みやもとかずあきの制作日記⑤(4コマ漫画つき)
2025.01.18
作家:みやもと かずあき
制作日記 第5回
『ぐりとぐら』のとなりにぼくの絵本が…!
昨年(2024年)12月に発売になった『あおくんふくちゃん』。
年末年始は地元・和歌山県の書店さんを訪ねて、『あおくんふくちゃん』のご案内とお店に置いてくれますようお願いにまわりました。
大阪に行く用事もあったので、阿倍野と梅田の大きな書店さんにもご挨拶にまわりました。
大阪の大きな書店さんはどこも『あおくんふくちゃん』を置いてくれていました。とてもありがたいと思います。
とある絵本売り場担当者の方が「この本売れていますよ」と言ってくれて嬉しかったです。
そして、ぼくの絵本が『ぐりとぐら』のとなりに置かれていたのを見たときは感慨深いものがありました。
さてさて、制作日記第5回をはじめます。
担当編集者からの無茶ぶり!?
打ち合わせも終盤にかかったころ、担当編集者の福の神が
「制作日記も書いてもらいますから考えておいてくださいね。制作日記用に4コマ漫画を描いてみませんか。
制作日記は4コマ漫画があると読んでもらいやすいと思うのです」
と提案してくれたのです。
ラフの描き直しと制作日記だけでも忙しそうなのに、4コマ漫画も描くとなると、どうなるの?
第一、4コマ漫画なんか描いたことないし。
でもこれは試されているのかも。
ルーク・スカイウォーカーがヨーダの元でジェダイの修行をするように。
ここで、できませんと言ったらジェダイの騎士に成りそこねる。
いや、絵本作家に成りそこねる。
「4コマ漫画やります」
と口が勝手に動いていました。
ようし、やってやろうじゃないか。
さっそく、図書館で4コマ漫画を借りてきて読んでみることにしました。
数冊目を通したあと、とりあえず4コマ漫画を描くのは横に置いておいて、まずは絵本のラフから始めようと取りかかった矢先に思わぬ刺客に襲われます。
39度の高熱が続き、倦怠感が半端なく、10日間は何もできませんでした。
不覚にもコロナにかかったのでした。
何もできませんが布団の中で考えていました、4コマ漫画を。
しんどかったけど、不思議と話ができてきました。
けっきょく、コロナのおかげで6話の4コマ漫画のアイデアを出すことができました。
ここで、アイデアが出てくるときってどんな感じか考えてみました。ガチで出そうと思っても、なかなか出てこないものです。
出そうという気持ちは大切ですが、ぼんやりというか、ゆる~い感じでいるときのほうがアイデアは降りてくる場合が多いように思います。
あくまでぼくの場合ですが。
ちなみに4コマ漫画はこの制作日記だけでなく、『あおくんふくちゃん』の見返し部分にも8話載っています。
少し内容が変わっていたり、ここにはないお話もあるので、ぜひ読んでみてください。
閑話休題。雪の日のお話。
寒波が来ると山奥はときどき銀世界になります。
絵本では雪の場面もいくつかあるので、取材を兼ねて出かけました。
到着した護摩壇山は和歌山県最高峰で、その時の気温が氷点下-8度。しかも吹雪いてるので、立っているのがやっとです。
スケッチブックを持っていってましたが、絵を描くのは諦めて、雪景色をしっかり目に焼き付けて帰ることにしました。
本当のところ、ぼくは雪が降ると居ても立っても居られず、スノードライブに出かけてしまうのです。
子どもです。
主人公のあおくんが雪の中をかけていく場面があります。
雪を見に行ったことが役立っているか、これは本を手にとってご確認ください。
本絵、『あおくんふくちゃん』の場合
ラフも決まり(ラフが決まるまでのすったもんだは第4回をごらんください)、次は本絵を描くことになります。この作業はとても楽しいです。
大げさかもしれませんが絵に命を吹き込む作業ですから、1枚描き終えるごとに喜びを感じます。
今回は、絵手紙によく使われる顔彩を使って描きました。
顔彩を使った理由は時代設定が昭和で、和テイストのお話でもありますので、和に寄せた画材ということで選びました。
画用紙は最初に黄土色を薄く水でのばして塗りました。
全体が淡い黄色になった画用紙に絵を描いていきます。そうすることで暖かみのある絵にしようと思ったのです。
また後半で寂しい印象にならないように、色使いに気をつけて描いたので応募作品と比べると鮮やかな印象になっています。
ちなみにキャラクターの輪郭線も福の神のふくちゃんは黒でとらず、ネオピンクでアウトラインをとってます。
なぜネオピンクにしたのか?
これは直感です。
ネオピンクのアウトラインにすることで、優しい雰囲気とポジティブな印象を醸し出せると思ったからです。
2024年の夏はこの世に生を受けて60年、史上最高に暑い夏でした。
ときどき、みかん畑にも作業しに出かけますので、さすがに夏バテしてきました。
病院で点滴してもらい、アリナミン錠、そしてアイスクリームでチャージしながら、本絵を描ききりました。
できた本絵を講談社に送ったときは、まさに「ヤッター」って感じです。
暑い季節の打ち上げはやっぱり冷たいビール!
良い塩梅です。
ま、ま、まさか、描き直しの指令!?
受話器の向こうからやばそうな雰囲気がただよっています。
ひょっとして描き直し?!
頭をよぎりました。
ここまできて描き直しはちょっときついです。
「走っている場面がいくつかありますが、どれも手と足が揃っています。わざとですか?」
「わざとです。ナンバ歩きです。手の振りと足が交互に出る現在の歩き方は明治以降、西洋から伝わった歩き方、江戸時代は手と足が同時に出るナンバ歩きをしていました。今でもお相撲さんが押し出しのときに使っています」
と答えると、
「わかりました」
と担当編集者の福の神。
おっ! 今回はすんなりと、何もないんや!
余談ですが、ナンバ歩きで歩くと、普段の歩きより素早く歩くことができます。しかも疲れにくい歩き方のように思います。
ご興味ある方は試してみてください。
鬼のあおくんや福の神のふくちゃんの歩き方体験ができます。
ではではまた次回。次回で最終回(の予定)です!
原画展のお知らせ!
2025年2月16日まで、未来屋書店川口店さん みらいやの森 ギャラリースペースにて、
『あおくんふくちゃん』絵本原画展が開催中です。
お近くにお越しの際はぜひ、見ていただけたら嬉しいです!
講談社絵本新人賞 受賞作既刊
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第43回新人賞受賞作『ぎょうざが いなくなり さがしています』玉田美知子・作
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第42回新人賞受賞作『タコとだいこん』伊佐久美・作
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第41回新人賞受賞作『にんじゃいぬタロー』渡辺陽子・作
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第40回新人賞受賞作『まよなかのせおよぎ』近藤未奈・作
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第39回新人賞受賞作『いっぺん やって みたかってん』はっとりひろき・作
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第38回新人賞受賞作『おじいちゃんの ふしぎなピアノ』はまぎしかなえ・作
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第37回新人賞受賞作『ピカゴロウ』ひろただいさく・ひろたみどり・作
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第36回新人賞受賞作『ほしじいたけ ほしばあたけ』石川基子・作
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第35回新人賞受賞作『てがみぼうやのゆくところ』加藤晶子・作
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第34回新人賞受賞作『きいのいえで』種村有希子・作
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第34回佳作受賞作『それなら いい いえ ありますよ』澤野秋文・作
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第33回新人賞受賞作『シールの かくれんぼ』定岡フミヤ・作
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第33回佳作受賞作『おにぎりにんじゃ』北村裕花・作
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第32回新人賞受賞作『ぼくと おおはしくん』くせさなえ・作
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第30回新人賞受賞作『あっぱれ! てるてる王子』コマヤスカン・作
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第30回佳作受賞作『まないたに りょうりを あげないこと』シゲタサヤカ・作
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第29回新人賞受賞作『たこやきかぞく』にしもとやすこ・作
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第28回新人賞受賞作『つぎはぎ おばあさん きょうも おおいそがし』たかしまなおこ・作
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第27回新人賞受賞作『おもちのきもち』かがくいひろし・作
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第25回新人賞受賞作『ミーちゃんですヨ!』なかややすひこ・作
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第25回佳作受賞作『いぬの ムーバウ いいね いいね』高畠那生・作
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第24回新人賞受賞作『むしゃむしゃ武者』藤川智子・作
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第21回新人賞受賞作『ガボンバのバット』牛窪良太・作
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第20回新人賞受賞作『かみをきってみようかな』足立寿美子・作
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第19回新人賞受賞作『トカゲのすむしま』串井てつお・作
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第18回新人賞受賞作『ハワイの3にんぐみ』笹尾俊一・作
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第16回新人賞受賞作『しろへびでんせつ』山下ケンジ・作
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第14回新人賞受賞作『ふしぎなカーニバル』あきやまただし・作
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第5回新人賞受賞作『新装版 ばあちゃんのえんがわ』野村たかあき・作
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第2回新人賞受賞作『新装版 ゆきのひ』佐々木潔・作
みやもと かずあき
和歌山県生まれ。第44回講談社絵本新人賞受賞。絵本作家を目指して30年、60歳にして、ついに本作で念願のデビューを果たす。 男の子と女の子の双子育児の傍ら、「講談社フェーマススクールズ」「神戸ギャラリーヴィー絵話塾」で絵本制作を学んだ。受賞歴として第38回日産童話と絵本のグランプリ絵本の部優秀賞、第3回安城市新美南吉絵本大賞入賞など。 現在は、地元でベビー子ども服店を営みながら、みかんや野菜を少々作っている。
和歌山県生まれ。第44回講談社絵本新人賞受賞。絵本作家を目指して30年、60歳にして、ついに本作で念願のデビューを果たす。 男の子と女の子の双子育児の傍ら、「講談社フェーマススクールズ」「神戸ギャラリーヴィー絵話塾」で絵本制作を学んだ。受賞歴として第38回日産童話と絵本のグランプリ絵本の部優秀賞、第3回安城市新美南吉絵本大賞入賞など。 現在は、地元でベビー子ども服店を営みながら、みかんや野菜を少々作っている。