知ってる人は使ってる! 「手ぬぐい」から始める“持続可能”な生活

1枚で何役も! 便利なだけでなく愛おしい、その魅力を手ぬぐい専門店に聞きました

幼児図書編集部

目移りしそうなくらい、色とりどりの手ぬぐいがずらりと並ぶ、かまわぬ代官山店。
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梅雨時期から真夏の汗ばむ季節。汗をぬぐうのにはハンカチ派という方もいれば、タオル派、そして手ぬぐい派も。
その「手ぬぐい」に注目してみました。

究極のエコ社会・江戸からつづく「手ぬぐい」の魅力って?

その起源は奈良時代ともいわれ、古くは麻や絹などで作られた大変貴重なもので、神事で使われたり限られた高貴な人々のものだったという、手ぬぐい。それが時を経て、木綿が普及し、庶民のものになったのが江戸時代といわれています。
そして、戦後、タオルが主流となり、いったんは存在が押されてしまった手ぬぐいですが、まただんだんに大量生産にはない良さが見直され、そして、昨今叫ばれている「持続可能な生活」に組み込むにはぴったりなものの一つとして、注目されているんです。
さて、古典的な柄はもちろん、季節のモチーフや、有名キャラクターとのコラボなどでも知られる、手ぬぐいの専門店「かまわぬ」さんに、その魅力をお聞きしました。
お店の入り口からも情緒があふれていて、素敵。

使わないのはもったいない! 手ぬぐいの魅力とは

かまわぬ広報・佐藤さんによると、「タオルって、大体はじめから使い道がきまっていますよね。手ぬぐいのいいところは、たとえば、汗を拭いたりするのはもちろんですが、食事のときにはサッと広げて前掛けにしたり、日差しが強ければかぶって日除けにしたり……。たった1枚で、一日のさまざまな場面に対応した使い方ができる、優れものなんです」。

たしかに、ハンカチより大きいけれど、薄くてかさばらないので、1枚バッグにいれておけば、何かと活躍してくれそう。

「手ぬぐいは、洗うごとに生地が柔らかみを増していきます。そして、少しずつ洗い晒されていくのが、また味わいとなるんです。そうやって、暮らしのなかで使い込まれていくうちに愛着がわいてきて、持ち主の相棒となっていくんです」(佐藤さん)

ただの「モノ」というよりは、相棒になってくれる1枚。それって、物を大切に大切に使ってきた昔の人々のような心持ちに近づけるってことかも。
「育てた」手ぬぐいはこんな感じ。いい味!

暑い季節おすすめの使い方あれこれ

ほかには、どんな使い方があるんでしょう? 

「暑い季節におすすめの使い方としては、細く折りたたんでヘアバンドにしてヘアスタイルをすっきりさせたり、冷却剤を巻き込んでバンダナとして首に巻いてみたり。また、ペットボトルをてぬぐいで包めばバッグの中に入れたときにも水滴が付きません」(佐藤さん)

かわいい色柄の手ぬぐいを手に入れたら、ファッションアイテムとしても取り入れられそう! 無限の可能性を感じられます。

「また、水分を吸収しても、短時間で乾いてくれるのが、手ぬぐいのいいところなんです」(佐藤さん)

洗濯の生乾きが気になる時期なども、タオルより短時間で乾いてくれるのはありがたいですね。

愛着の湧いた手ぬぐいだからこそ、とことん使いきる!

「新品で使い始めて、洗濯を重ねていくうちに、だんだんにくたびれてきたら、家庭内で手拭きにしたり食器拭きにしたり。さらにくたびれたらウエスとしてお掃除に使ったり、しまいには割いてキッチンペーパーとしても。最後まで無駄なく使えます」(佐藤さん)

たしかに、江戸時代のように、最後に燃やして灰にして、またその灰を……とまでは真似できないとしても、しっかり使い倒してあげることが、モノへの愛情なのかもしれません。

愛される伝統柄「まめしぼり」のルーツは、手間暇かけたすごい技!

シンプルな伝統柄は、どこかストイックでかっこいい!
キャラクターやポップな柄、カラフルな手ぬぐいのなかに、いぶし銀のようなかっこよさをたたえた、伝統柄たち。青海波、麻の葉、よろけ縞、七宝つなぎ……そして豆しぼり。なかでも豆しぼりは、ベーシックな白地から、色地に抜き柄、さらにはスヌーピーや鳥獣戯画キャラクターでも展開している、ふところの広い柄。
佐藤さんによると、「かまわぬでも、1987年のオープン当初から扱っている柄のひとつで、この柄は、手ぬぐいの柄の原点みたいなもの。絞り染めで有名な愛知県・有松の『有松豆絞り』として、大変人気を博した柄です」。

その染め方は、生地を蛇腹に折って、糸を通し、さらに板で締めたところを藍で染める、という、大変に手間がかかった作業だといいます。

「かまわぬでは、気軽に手に取ってもらえるようにと、型紙を使って注染という染め方をしたものを多く取り扱っています」(佐藤さん)

注染という技法は明治時代に生まれたもので、裏も表も同じ柄に染まるのが特徴。一気に12枚分染められるとはいえ、型を使って職人さんが染めていく、手仕事の賜物。
この絵本の主人公が、大切そうに持っているのが「まめしぼり」柄の手ぬぐい。
かとうまふみ作『ねこきちのてぬぐい』より
そんな、手ぬぐいに込められた人々の思いや、物を大切にする心に感じ入ってつくられた絵本が『ねこきちのてぬぐい』。

「まめしぼり」の手ぬぐいが主人公となるこの絵本を読んだ佐藤さんは、「ついに、手ぬぐいが絵本の主人公になる時代が来たのだなと感じ、大変感激いたしました! ねこきちが、手ぬぐいを大切に使う様子がよく伝わり、また、手ぬぐいが手ぬぐいとしての役割を終えたあとも、別の形で新たな命を吹き込まれるという考え方に、心が温かくなりました。日本人が大切にしてきた『ものを大切に扱う心』が感じられ、ファスト消費の現代だからこそ、ぜひ手に取りたくなる一冊だと思います」と感想を寄せてくださいました。

子どもたちにこそ伝えたい、江戸の循環型社会。手ぬぐいは、それを手軽に知るきっかけにもなってくれそうです。
*今回取材させていただいたお店*
かまわぬ代官山店

手ぬぐいは常時250種類以上を取り揃えており、季節ごとに新作が登場。スヌーピーやミッフィー、レオ・レオニの絵本キャラクターなども人気です。広報・佐藤さんのおすすめは、浮世絵をモチーフにしたもの。浮世絵に描かれた着物の柄からインスパイアされた新作は、いま注目の「江戸」をさりげなく取り入れるのにぴったり。手ぬぐい以外にも、シャツやエプロン、のれんや小物類など、生活にすぐに取り入れたいものがたくさん揃っています。

〒150‐0033 
東京都渋谷区猿楽町23‐1
火曜定休
月~土・祝 11:00~19:00
日のみ   11:00~18:00
オンラインストア
https://kamawanu-store.jp/
写真:講談社 幼児図書編集部
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ねこきちのところにやってきた「まめしぼり」手ぬぐい。いつも、ねこきちと一緒に楽しくすごしていたのですが、ある日、古くなった布たちが、かまどにくべられたのを見て……。
物を大切にする心や、昔は当たり前にしていたことへの気づきが生まれる絵本。

作/かとうまふみ 講談社刊
※読み聞かせは4歳から、ひとり読みは6歳から

かとう まふみ

Mafumi Kato
絵本作家

1971年、福井県生まれ、北海道育ち。北海道教育大学卒業。ディスプレイデザインの仕事を経て、絵本作家に。絵本に『まんまるいけのおつきみ』『おならおばけ』『狂言えほん かずもう』(文・もとしたいづみ)『ねこきちのてぬぐい』(講談社)、『ぎょうざのひ』(偕成社)、『のりののりこさん』『けしゴムの ゴムタとゴムゾー』(BL出版)、『ひょろのっぽくん』(農山漁村文化協会)、『しゃもじいさん』『ぬかどこすけ!』『みそこちゃん』(あかね書房)、「どろろんびょういん」シリーズ(作・苅田澄子 金の星社)、『まあちゃんとりすのふゆじたく』(アリス館)、『かたつむりくん』(風濤社)、『おもちのかみさま』『よつばのおはなし』(佼成出版社)、『おとうさんのこわいはなし』(岩崎書店)、『セイロウさん』(WAVE出版)など、装画・挿絵に『にゃんともクラブ』(作・竹下文子 小峰書店)などがある。

1971年、福井県生まれ、北海道育ち。北海道教育大学卒業。ディスプレイデザインの仕事を経て、絵本作家に。絵本に『まんまるいけのおつきみ』『おならおばけ』『狂言えほん かずもう』(文・もとしたいづみ)『ねこきちのてぬぐい』(講談社)、『ぎょうざのひ』(偕成社)、『のりののりこさん』『けしゴムの ゴムタとゴムゾー』(BL出版)、『ひょろのっぽくん』(農山漁村文化協会)、『しゃもじいさん』『ぬかどこすけ!』『みそこちゃん』(あかね書房)、「どろろんびょういん」シリーズ(作・苅田澄子 金の星社)、『まあちゃんとりすのふゆじたく』(アリス館)、『かたつむりくん』(風濤社)、『おもちのかみさま』『よつばのおはなし』(佼成出版社)、『おとうさんのこわいはなし』(岩崎書店)、『セイロウさん』(WAVE出版)など、装画・挿絵に『にゃんともクラブ』(作・竹下文子 小峰書店)などがある。