2021.05.20

TBSアナ堀井美香さん「母に鍛えられた〝声に出して読む〟」絶大効果とは

TBSアナウンサー・堀井美香さんインタビュー第1回

寄稿家:堀井美香

アナウンサーとしてTBSに入社して以来、多くのナレーションを担当してきた堀井さん。その経験をもとに綴った著書『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』が好評発売中。
写真提供:TBS

声に出して読むという行為、いわゆる「音読」。これにはさまざまな効果があると言われています。このほど『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)という著書を出版したTBSアナウンサーの堀井美香さんに、音読の効果についてお話をうかがってみました。子ども時代から教科書などを読んで音読経験を積み、今では、〝声に出す〟プロフェッショナルであり、さらに二児を育てた母でもある堀井さん。そんな彼女の実感だからこその説得力です! 

「音読してから登校しなさい」と母親が学校まで連れ戻しに!

入社以来、『Nスタ』(地上波)、『世界の窓』(BS)、『水音スケッチ』(ラジオ)などTBS系列の番組で多くのナレーションを担当してきた堀井美香さん。同局のナレーターとして圧倒的な実績を誇り、ナレーションの名手として知られています。

「もともと読むことが好きで、これまでには、読む仕事をたくさんさせていただいてきました。つまり、私は〝読むこと〟を生業(なりわい)としているわけですが、その原点は、子どもの頃の音読経験にあると思っています」

子ども時代、授業中、あるいは家で、教科書を声に出して読んだ経験は、誰にでもあるでしょう。堀井さんも然り。ご自身によると、小学生の頃には、お母さんの言いつけを守り、毎朝、国語の教科書を音読してから登校していました。

「たまにはサボって音読をせずに家を出ることもありました。すると、〝読んでから登校しなさい〟と母が私を連れ戻しに学校まで来るんです(笑)。そんなこんなで、音読は私の日課になっていたのですが、あの時間があったからこそ、今の私があるんですよねぇ……」

音読で「間合い」を体得すると会話中の沈黙も怖くない

小学生の堀井さんが、ナレーションのように流暢に教科書を読んでいたかというと、もちろん、そうではありません。
多くの場合、「面倒くさいから、適当に早口で読んで済ませていた」と、ご自身は笑いますが、「今にして思えば、それでも学びはあった」と振り返ります。

「早口でいい加減に読むときには、当然、文章の間合いも何もあったものではありません(笑)。でも、間合いを無視すると言っても、文章には当然、句読点がありますから、音読を積み重ねることによって、間の取り方や息継ぎなどを自然に学んでいったと思います。

大人になって、こういう仕事に就いて、インタビューをはじめとして、初対面の人とお話をする機会が多々あります。そんなとき、音読経験から学んだ間合いというものが、とても役立っている気がするんです。

文章を声に出して読むことで、息継ぎや間合いが体得できると、普段の会話でも、〝間〟や沈黙といったものが怖くなくなります。その結果、落ち着いて人と話ができるようになります」

幼少期から音読を積み重ねてきた堀井さんはその効果を実感。音読で学んだ〝間合い〟などが人との会話に生かされるというように、音読は日常生活にも良い効果をもたらしてくれるという。
ZOOM取材にて

「音読癖」は理解力や記憶力の向上にもつながる

子どものときのみならず、堀井さんは、大人になった今でも、日常的に何らかの文章を声に出して読んでいます。
ナレーションの原稿を読む、物語を朗読する……。
そのときどきによって、読むものや読み方は違います。
しかし、いずれにしても、息継ぎや間合いの体得が日常会話に生きるということ以外にも、折に触れて音読の絶大な効果を感じるそうです。

「例えば、理解力や記憶力が上がるということ。黙読するよりも、声に出して読むほうが、書かれていることの理解が早いように思います。
また、目からだけでなく、声として耳から入ってくることで、書かれていることが記憶に刻まれやすいことも実感しています。
黙読だとなかなか暗記できないことも、音読すると覚えやすいんですよ」

音読記憶法はメジャーな勉強法として広く知られていますが、堀井さんは、身をもってその効果を実感しているというわけです。

「名作と呼ばれる文学作品の一節など、学生時代に音読によって記憶し、今でもそらで言える文章がたくさんあります。そういう言葉が、日常生活の会話の中で、突如、あふれ出たりすることがあるんです。

ときどき、言葉の引用の仕方が独特だと言われることがありますが、それは、音読によって記憶した名文のリズムや言葉がもとになっているんだと思います。
その意味では、音読で体感する言葉は自分を支えてくれるともいえる。自分の考え方のよりどころになっていたりもするんですね」

一男一女の母でもある堀井さん。2人のお子さんはもう大きくなられ、子育てはほぼ卒業されたとか。
ZOOM取材にて

しっかり口を動かして読む習慣で会話もスムーズに!

堀井さんは、「口を動かす」という行為も音読の効果につながると強調します。

「人は普通、〝口をしっかり開いて話す〟ということを、日常生活ではやっていませんよね。
でも、音読をすれば、必然的に口をしっかり動かすことになるでしょう? 
そのことによって口まわりの筋肉がほぐれます。それは、会話の準備運動にもなる。準備運動をちゃんとやっておけば、人と話すときに言葉が躊躇なく出てきて、会話がスムーズになるんです」

さらに、「口を動かす」ことは「健康促進にもなるのでは」とも。

「誰でも、年齢を重ねれば、口が開かなくなったり、舌がよく回らなくなったり。また、誤嚥などのリスクが生じてきたりしますよね。
口をしっかり動かす音読を続けることは、こうした問題を防ぐトレーニングになるのではないかと」

特別な道具も、お金も必要ありません。今からでもすぐに始められるのが、音読のいいところ。

「音読にはいろいろな効果があると言われていますよね。
教育学者の齋藤孝先生が提唱されて、声に出して読むことがブームになりました。
それによって、音読の効果は広く知られるようになりましたが、それより10年も20年も前に、私の母親は私に音読をさせていたんです。

もちろん、母が音読の効果を知っていたとは思えない。秋田の田舎のことですし、我が子に勉強させると言っても、教材と言えば教科書くらいしかありませんでしたから、教科書を読ませておけば間違いないだろう、くらいに考えてのことだったと思います(笑)。

でも、結果的に、身になっているのですから、やはり、音読の効果は絶大なんです。お子さんに音読をやらせるだけではなく、ご自身でも、ぜひ音読癖をつけてみてはいかがでしょう」


取材・文/佐藤美由紀

堀井美香さんインタビューは全4回。2回目は21年5月23日8:00〜公開です
【第2回】堀井美香さんインタビュー「堀井美香流・読み聞かせ術」とは

寄稿家紹介

堀井美香 ほりいみか

ほりいみか
TBS アナウンサー●1972年3月22日生まれ、秋田県出身。法政大学法学部を卒業後、1995年にTBSに入社して以来、局アナとして第一線で活躍。これまでには多くのナレーションを担当し、ナレーションの名手としての存在感を放つ。TBSアナウンサーによる朗読会『A’LOUNG(エーラウンジ)』のプロデュースを担当するなど、朗読にも注力している。私生活では一男一女の母。子どもたちが幼い頃には、自分なりに工夫した絵本の読み聞かせを実践していた。TBSラジオ『ジェーン・スー生活は踊る』にレギュラー出演するほか、週1回のPodcast番組『Over the sun』を配信中。近著『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)が好評発売中。