2020.12.17

えがしらみちこ 「はじめました えほんやさん」第1回

著者:えがしら みちこ

※この記事は、講談社絵本通信(2018年8月)掲載の企画を再構成したものです。
 

こんにちは。絵本作家のえがしらみちこです。
2014年に絵本作家デビューをして『あめふりさんぽ』や『あきぞらさんぽ』などの「おさんぽ」シリーズや『ねんねのうた』『なきごえバス』『せんそうしない』などの絵本を出版しています。

2018年10月、今住んでいる静岡県三島市に絵本専門店「えほんやさん」を作ることにしました。
こんな、書店がどんどん閉店しているご時世に……と自分でも、この決断にびっくりなのですが、書店について何も知らない私が奮闘している様子をレポートできたら、絵本や書店について関心のある方の参考になるかしらと思い、書かせていただくことになりました。

人生でいちばんけたたましい夏

今、私はこれまでにないくらいバタバタしています。
絵本の制作作業、講演会・ワークショップなどのお問い合わせメールの返信、各出版社の編集者さんとのやりとり、これからのイベント告知や新刊の紹介などなど、いつもの絵本作家としての仕事に加え

8月22日にスタートしたクラウドファンディングに関する作業やお店に並べる絵本や雑貨、レジのシステムや電話やインターネット環境、梱包資材の準備やカフェスペースで使用するものの選定など、仕事をこなしてもこなしても新しい課題がでてくる状態……。

よく「今は、何についての仕事が忙しいの?」って聞かれるのですが、ひとことでこれってうまく説明できないのです。頭をきちんと整理できてないのかなぁ。

とにかく、ずっとダッシュして息継ぎもできていないような状態がしばらく続いています。……と、いうのも今度オープン予定の絵本専門店「えほんやさん」を開こうと決心したことが、この忙しさの始まり。今年の5月に物件が空いて、7月に契約が始まって……ずっと猛ダッシュが続いています。いやいや実は、去年の10月から走り始めたのかもしれません。「えほんやさんの」ちいさな種から芽が出た頃。
そして、その種ができたのは、もっと前からなのです。

「えほんやさん」の種 -赤ちゃんを抱えて知らない土地へ-

まずは、絵本作家になったかならないかくらいの頃に戻ります。

私は九州で生まれ育ちましたが、2012年に娘を出産し、主人の仕事の関係で縁もゆかりもない三島に引っ越してきました。

オムツはどこに売っているのか、病院はどこがいいのか、土地勘もなく、アドバイスしてくれる知り合いもいないなか、ふらふらとさまよい、とりあえず近くの食器屋さんに入ってお皿を探していたときのことです。普段使いのお皿を探している様子から察したのか、レジでお会計をしているとき、お店のおばちゃんが「越してきたの? また遊びにおいで」と、さらっと声をかけてくれました。それがとっても嬉しくて、泣きそうで、産後やアウェー感で弱っていた気持ちにじんわり沁みていくようでした。

その後、よくそのお店に遊びに行ったわけではないのですが、そういう場所ができたことは、赤ちゃんを抱えて新しい土地に来たばかりだった当時の私にとって、心の支えになっていたなと今になって思います。

「頻繁に会うわけではないけれど、同級生が近くに住んでいる」とか、「同じ九州出身の人が近くにいる」など、その気になればいつでも寄り添うことのできる場所があるというのは、とても心強いものです。このことをきっかけに、子育て中のお母さんお父さんやその子どもが気軽に立ち寄れるような、拠りどころとなる場所がもっとあったらいいのになぁ、と思うようになりました。

次回更新へつづく。

えがしらみちこの絵本

お気に入りのワンピースきて、あたらしいおくつをはいて、じゅんびできたよ、いってきまーす。 春のそよ風がふくいちにちに、おさんぽで出会ったのは? たんぽぽ、ちょうちょう、やさしい風……季節感がみずみずしいタッチで描き出されます。春のおさんぽに出かけたくなる絵本。

『はるかぜさんぽ』
作:江頭路子 講談社

お気に入りのかさもって、ながぐつはいて、カッパ着て、じゅんびできたよ、いってきまーす。かえるやあじさい、おたまじゃくしと女の子のかわいらしい出会いが、楽しげな雨音とともに繰り広げられます。 ちいさな女の子の雨の日を追いかけた、ちょっぴりファンタジックなお話。雨音の楽しさや、雨に濡れた景色の美しさが、透明感あふれる水彩画で表現されています。

『あめふりさんぽ』
作:江頭路子 講談社

おひさまがさんさんと照る、夏のいちにち。あーちゃんがおさんぽで出会ったのは? おひさまさんさん降りそそぐ中、どんなおさんぽになるのでしょう。 リズム感あふれるお話に、まばゆいほど夏の季節感いっぱいの絵。夏が待ち遠しくなる絵本です。

『さんさんさんぽ』
作:江頭路子 講談社

秋のつめたい風のなか、おさんぽで出会ったのは、どんぐり、みのむし、まっかなおちば……。季節感がみずみずしいタッチで描き出されます。秋のおさんぽに出かけたくなる絵本。『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』『ゆきみちさんぽ』『はるかぜさんぽ』につづく、人気シリーズ。

『あきぞらさんぽ』
作:江頭路子 講談社

お気に入りのマフラー巻いて、帽子にてぶくろ、ブーツをはいて、じゅんびできたよ、いってきまーす。 雪がいちめんに降ったある日、おさんぽで出会ったのは、どんな音? 冬のつめたい空気や透明感がみずみずしいタッチで描き出されます。雪の日が待ち遠しくなる絵本。

『ゆきみちさんぽ』
作:江頭路子 講談社

「ねえママ、おばけの音が、きこえるの」夜、こうちゃんは、おばけがこわくてねむれません。チクタク、チクタクの音は、なんのおばけ? カタカタ、カタカタの音は、なんのおばけ? ヒューヒュー、ザワザワの音は、なんのおばけ? するとママが、おばけたちのことを教えてくれます。おばけたちと仲良くなって、ぐっすり眠りにつくまでのお話。

『ねんねのうた』
作:江頭路子 講談社

著者紹介

えがしら みちこ えがしら みちこ

1978年、福岡県生まれ。熊本大学教育学部卒業。水彩を使用した透明感のある画風が特徴。絵本に『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』『ゆきみちさんぽ』『はるかぜさんぽ』『ねんねのうた』『いちねんせいの1年間 わたし、もうすぐ2ねんせい!』(文・くすのきしげのり)『せんそうしない』(文・谷川俊太郎)『はこちゃん』(文・かんのゆうこ 以上すべて講談社)、『おたんじょうケーキをつくりましょ』(教育画劇)、『なきごえバス』(白泉社)、『いろいろおてがみ』(小学館)、『しいちゃんおひめさまになる』(アリス館)、『あのね あのね』(あかね書房)、『あなたのことが だいすき』(原案・西原理恵子 KADOKAWA)など、装画と挿絵に『あかりさん、どこへ行くの?』(フレーベル館)、『さくら 原発被災地にのこされた犬たち』(金の星社)などがある。雑誌や教科書などの挿絵も多く手がけている。静岡県三島市在住。