「おさんぽ探究」の好循環 子どもの様々な力が目覚めるワケ

➂「日常の発見は、楽しく学ぶためのエネルギーになる」編

ライター:山本 真理

一人一人の好奇心から自然と生まれる発見や自発的に観察したり考えたりすることの大切さ、想像力や創造性を育む“自由過ぎる探究”「おさんぽ探究」について、一般社団法人 まなびの天才畑代表理事で「ぐるぐる探究隊」主宰の高秀章子さんに教わる本連載。
(全3回/おさんぽ探究①   おさんぽ探究②

第3回は、「学びの楽しさ」の重要性と、「好奇心をモチベーションとした発見や観察が学校での学び、将来的な仕事や創作活動へどのようにつながるか」をうかがいました。

1 学びの原動力に必要なのは「楽しさ」

——個人差はあると思いますが、必要な毎日の学習もただのルーティンになると、つまらなく感じてしまいがちです。おさんぽ探究でカギとなる“ワクワクするような好奇心”がベースにあれば、学びへの前向きな意欲が続きそうですね。

高秀さん「『学びには楽しさがなければ!』と思います。そこで、『勉強とはちょっとちがう』『なにかつくるらしいよ』『おもしろいことが発見できるらしいよ』という“自由さ”を最優先した探究を展開しています。『これはおもしろい!』は、好奇心が動くときに感じる“自家発電”のようなもの。ぶらぶら散歩する行動も“自分発”です。この姿勢が将来的に、学びにおいて重要になってくるのです」

おさんぽ探究で見つけたものを発表する場では、自分の発見について延々と説明してくれる子どももいます。そんなときは、探究心を折らないよう言葉を途中でさえぎらず、最後まで聞いてあげるのが正解だといいます。

高秀さん「みんなが自分の話に耳を傾けてくれる『安心・安全な場』という認識も、探究や学習へのポジティブなイメージにつながります」

道ばたに転がっていた大きな岩を巻き尺で測ってみる

2 学校で習うことにピンとくる! アイデア出しもスムーズに

— —自分の発見に対する仲間の感想や質問からは、後々の学びを助けてくれる“気づき”がたくさんありそうです。なかでも、これは学びの楽しさを知るうえで欠かせないということはありますか?

高秀さん「“他人のさまざまな視点”を知ることで、他の見方や考え方にも気づきやすくなります。そうなると、学校の授業で学んだことにも『あの時の、あれだ!』と、ピンとくるような場面が必ずどこかで出てきます。それをキッカケに観察したり、積極的に調べたいという気持ちになって、学ぶことが楽しくなっていきます」

きれいな花にもふしぎがいっぱい

——一方で、学校でも社会へ出た後も、あるテーマに対して『アイデアを出してください』と提案を求められることが多々あります。ゼロからアイデアを生み出すには、アタマやココロがやわらかくなければむずかしいものですが、ふだんから、いろいろなことに好奇心のアンテナがのびていると、そういう場面でもさほど苦労せずにできそうですね。

高秀さん「『ぐるぐる探究隊』では、探究を通して自分が得た新しい視点、自分とは異なる他人がもつ視点を知ることを『新しい別のめがねを手に入れる』とわかりやすく表現しています。豊かな想像力や創造性が身についていれば、『こういうのはどうだろう、こんな方法でもいけるかも』といった、いろいろなアプローチが浮かびやすくなります。

また、おさんぽ探究では、自分や仲間の好奇心から成る“発見”がスタート地点。そのため、『知りたいという欲求』が目覚めるのも自然でスムーズです。そして調べたり、何かをつくってみたりする活動へとつながる、新たな“ぐるぐる”が始まっていきます。

そういった一連の経験も、企画を立てたり、提案を出すシーンに直面したとき、おおいに役立つヒントになります。さらに、探究仲間とのやりとりから“表現する力”も自然に培われていくように思います」

活発なコミュニケーションで伝える力も鍛えられる  (写真提供:高秀章子さん)

3 独自の視点が将来的な創作や研究へつながる

好奇心はもともと誰もがもっている能力のひとつ。気持ちに余裕がないと休眠しがちですが、目覚めれば、自分なりの視点や思考がはっきりと前向きになっていきます。
また、”ふしぎのタネ”をさがす探究を楽しみながら続けていくことで、自分がどんな分野に興味をもてるかなど、いろいろとわかってきます。

——探究とは無縁な状態よりも、自分の向き不向き=適性に早くから気づけそうですね。

高秀さん「同時に、必ずしも得意な分野だけが将来の職業になるとはかぎらない、という発見もあるかもしれません。おさんぽでの発見をライフワーク的に続けることで、あらゆる可能性を大切にできます。

培ったものを独自の研究やアート、執筆などの創作活動へうまくつなげていければ最高ですね」

学びの楽しさを知ることであらゆる可能性を大切に

ぐるぐる探究隊では、おさんぽ探究で得たさまざまな発見をもとに創作をするワークを行なっています。先日はこれを発展させ、さらにバージョンアップしたワークショップの開催も。著名なショートショート作家の方をゲストに招き、参加者が思い思いに見つけたふしぎのタネを短い物語に仕立ててゆくワクワク感をみんなで共有し、出来上がった作品をワイワイと鑑賞する体験を楽しむというものです。

気軽にできるおさんぽ探究で楽しい学びにつながるエネルギーをたくわえつつ、アタマとココロをやわらかく! 毎日がきっともっと楽しくなるはずです。

高秀章子(たかひで あきこ)
企画・制作ディレクター/探究ジェネレーター/キャリア教育コーディネーター
総合学習がスタートした2001年頃より、学校と社会をつなぐゲスト授業を実践するプロジェクトに参加。杉並区学校教育コーディネーター、学校運営協議会委員などを務める。学校現場での実践ノウハウと、編集や広告などの仕事で培ったネットワークを活かした活動を展開中。好奇心を育てるプロジェクトファーム、一般社団法人 まなびの天才畑代表理事。

<主なプロジェクト>探究型の学習プログラム「TEAM ABLE PROJECT」、発見や創造を楽しむ探究体験「ぐるぐる探究隊」、スポーツ×ことば「スポーツ575」など。
https://www.gurugurutq.com/

やまもと まり

山本 真理

Mari Yamamoto
ライター

ライター。大学在学中、出版社にて編集アシスタントを経験し、情報誌の仕事をもつ女性をターゲットにした特集記事の取材/執筆を機にライターとして活動を始める。以降、雑誌、ムック、書籍、企業の広報誌やウェブサイト等、様々なメディアで多岐にわたるジャンルの企画、取材、執筆に携わる。2004年、トルコ イスタンブールへ転居。居住歴14年。現地でトルコ語を学ぶかたわら、トルコを中心に、周辺の中東諸国や中央アジア地域、地中海地方の料理や文化などについて多国籍の人々から学び、知見を広げる。現在は日本を拠点に、ネット配信ニュースサイトなどで健康や暮らし全般、時事問題等、幅広いトピックスの執筆を手がける。

ライター。大学在学中、出版社にて編集アシスタントを経験し、情報誌の仕事をもつ女性をターゲットにした特集記事の取材/執筆を機にライターとして活動を始める。以降、雑誌、ムック、書籍、企業の広報誌やウェブサイト等、様々なメディアで多岐にわたるジャンルの企画、取材、執筆に携わる。2004年、トルコ イスタンブールへ転居。居住歴14年。現地でトルコ語を学ぶかたわら、トルコを中心に、周辺の中東諸国や中央アジア地域、地中海地方の料理や文化などについて多国籍の人々から学び、知見を広げる。現在は日本を拠点に、ネット配信ニュースサイトなどで健康や暮らし全般、時事問題等、幅広いトピックスの執筆を手がける。