子どもが「やけど」をした!  受診判断のための緊急チェックリスト

よくある子どものケガ・病気〈受診の目安〉#3「やけど」

小児科医:坂本 昌彦

アイロンや電気ポットなど、家の中にはやけどの危険がたくさんあります。
写真:ピクスタ
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子どもにとって身近なケガのひとつ「やけど」。

熱湯や鍋に触れてしまったり、携帯用カイロを同じ場所に長時間当ててしまったり、思わぬことがやけどの原因になることもあります。病院に連れて行くべきか、様子を見るべきか、親としては悩むところです。

小児科医の坂本昌彦医師に、やけどの症状や、家庭でできる処置の方法、予防のポイントを解説していただきました。(全4回の3回目/#1#2を読む)

やけどの重症度の判断は難しい

やけどは皮膚や粘膜が高温のモノに触れることで生じるケガのことです。

やけどの症状は、その範囲や程度によって深刻度は大きくかわります。特に子どもは大人にくらべると皮膚が薄いため、やけどが深くなりやすい傾向にあります。

やけどは

・Ⅰ度熱傷(表皮が損傷)
・浅達性II度熱傷(表皮〜真皮の一部が損傷)
・深達性II度熱傷(表皮〜真皮深層まで損傷)
・Ⅲ度熱傷(皮膚全層、およびそれより深くまで損傷)

の4つに分類されます。

やけどの重症度は、軽症・中等症・重症の3つにわけられます。Ⅰ度熱傷と浅達性II度熱傷は軽症にあたり、数日から数週間で自然治癒しますが、深達性II度熱傷以上は医療機関での治療が必要になります。

とはいえ、重症度の判断は一般的には難しいかと思います。

受診判断のチェックリスト

そこで、受診目安として、次のような点を確認してみてください。

<家で様子を見る>
・やけどの範囲が狭い(子どもの手のひらより小さい程度)
・皮膚が赤くなっているだけ(ただれたり、水ぶくれができたりしていない)

<自家用車やタクシーで急いで受診>
・手や足の指、陰部をやけどした場合(皮膚がくっついてしまうことがあるため)
・水ぶくれができたやけど(水ぶくれがつぶれると感染症を起こしてしまう可能性があるため)

<救急車を呼ぶ>
・やけどの範囲が全身の10%以上(腕1本の表面積が全身の10%相当の目安)
・やけどした部分の皮膚が白く変化していたり、黒く焦げた状態になっていたりする場合
・顔のやけど(特に煙を吸っているなど気道熱傷のリスクがある場合)

家庭での応急処置 4つのポイント

子どもがやけどした時は、主に次の4つのポイントに気をつけて応急処置をしてください。

<流水で冷やす>
やけどした部位を流水で最低5~10分冷やしてください。水の勢いが強いと、皮膚を刺激してしまうので、強くしないように注意してください。ただ、乳児などは低体温になりやすいので、くれぐれも意識の変化には注意しましょう。

<服の上から直接流水>
服の上から熱湯や油などがかかった場合、服に皮膚がくっついている可能性があります。気が動転して、服を慌てて脱がそうとしてしまいがちですが、無理に脱がせると皮膚がはがれてしまうことも。まずは落ち着いて、服の上から流水などで冷やすように心がけましょう。

<耳や目などはタオルを活用>
流水を当てられない耳や目は、タオルで氷や保冷剤を包んで冷やしてください。

<水ぶくれは破かない>
もし、やけどした箇所が水ぶくれになっている場合、子どもが触って破かないようにガーゼや包帯などで保護しておいてください。その後、病院を受診しましょう。

やけどしたらすぐに流水で冷やしましょう。
写真:ピクスタ

やけどの予防 家の中には危険がいっぱい

家の中には危険がいっぱい。
たとえば、次のようなことがやけどの原因になり得ます。

・炊飯器や加湿器の蒸気にさわる
・アイロン、ヘアアイロン、ストーブにさわる
・電気ケトル、ポット、鍋をひっくり返す
・スープ、お茶など熱いものを入れた皿やカップを倒す
・湯たんぽや電気カーペットなどが、長時間皮膚の同じ場所に触れる

こうしたリスクを回避するには、子どもの手が届く範囲に、やけどにつながるものがないか、確認することが大切です。手に届くのはどこまでかをチェックして、危険なものは子どもの手の届かない場所に置くようにしましょう。

また、テーブルクロスを敷いていると、子どもが引っ張ってしまい、熱湯が入ったものを倒しかねないので注意が必要です。テーブルクロスは小さな子どもがいるうちでは使わないようにしましょう。

また、足元のコードにつまずいてケトルやアイロンを倒すこともあり得るので、子どもが歩く場所にコードが出ていないようにするのもポイント。他にも、料理中はフライパンなどの取っ手がコンロの外に出ていると、子どもが触って動かしひっくり返す可能性があるので、取っ手がコンロの台から飛び出ないように注意してください。
◆◆◆

次回の#4では、「頭をぶつけた」「指をはさんだ」「肘(腕)がはずれた」についてうかがいます。(#4はこちら。公開日までリンク無効)

取材・文/末吉陽子

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さかもと まさひこ

坂本 昌彦

小児科医

佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長兼国際保健医療科医長医員。2004年名古屋大学医学部卒業。2009年小児科専門医取得。現在は保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした佐久医師会による「教えて!ドクター」プロジェクトに責任者として関わる。 教えて!ドクター https://oshiete-dr.net/

佐久総合病院佐久医療センター 小児科医長兼国際保健医療科医長医員。2004年名古屋大学医学部卒業。2009年小児科専門医取得。現在は保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした佐久医師会による「教えて!ドクター」プロジェクトに責任者として関わる。 教えて!ドクター https://oshiete-dr.net/