「子どもの保険」必要?不要? 賢い選び方をFP鈴木さや子さんが伝授

共済型保険・個人賠償責任保険…〔子どもと親の保険選び〕前編

佐藤 啓子

保険選びは、我が子の未来と向き合うことでもあるんです。  写真:UTS/イメージマート

「学資保険に入りたかったけれど出遅れちゃった…」「そろそろ医療保険も考えなきゃ」「そもそも子どもに保険って必要?」などなど、保険に悩むパパやママの声をよく聞きます。そこで、学資保険をはじめ子どもの保険について、必要なもの、不要なもの、加入のポイントなどをファイナンシャルプランナー鈴木さや子さんに教えていただきました。
※この記事の情報は2021年6月末現在のものです。

学資保険と貯蓄の違いは?

――子どもの保険と聞いてまずピンとくるのが学資保険ではないでしょうか。学資保険の特徴を簡単にご説明ください。

鈴木さや子:学資保険は、子どもが大学に進学するための費用を用意するための貯蓄型の保険で、子どもが大学進学時など決まった年齢に達すると満期金等が学資として支払われます。
商品によって、小中高の進学時にも祝金を受け取るタイプや、学資金の受け取りが大学時代に複数回あるタイプ、18歳時に1回受け取るタイプ、と受け取り方はさまざまです。

また、保険料の払い込みも、満期まで払うのが一般的ですが、商品によって、10歳や15歳などに払い終えることを選択できるものもあります。低金利の現在、メガバンクの定期預金に預けるよりは増やせる商品もあり、子どもが産まれる際、検討する人も多いです。

預貯金との違いは、もし契約者である親が死亡してしまった場合、そこから先の保険料は支払わずに済み、満期時に学資として受け取れるので、商品名に「保険」とついています。

学資保険・保険料払込&教育資金受取イメージ
★学資保険のモデルケース 
契約者(パパ)30歳、子ども0歳で計算
★M生命 15歳払い込み済みタイプの場合
月々の保険料15,995円➡受け取り満期金合計300万円(受け取り率104.1%)  作図:ジェネット

――学資保険には入るべきでしょうか?
 
鈴木:「学資保険にでも入らないとお金が貯められない」「万が一パパ(ママ)が亡くなった時に保険金を受け取った場合、生活費として使ってしまいそう」というお家にはお勧めです。

商品によっては、普通預金や定期預金などで預けておくよりは増やせるものもありますしね。ただ、だからといって入らなければならない保険ではないでしょう。まず、商品によってはどう契約しても元本割れをするものがあることに注意が必要です。

そして、元本割れをしないものでも、大きく増やせるものではありません。特に子どもが6歳など大きくなってから加入すると、戻り率もさがります。また、戻り率を少しでもよくしようと払い込み期間を短くするとなると、毎月の保険料も高くなり、家計を圧迫しかねません。

であれば、学資保険でなくとも貯蓄+親の死亡保険というシンプルな選択肢もあるわけです。私は、子どもが3歳を超えたママには、貯蓄+親の死亡保険+少額でもつみたてNISAなどでの積立投資をお勧めしています。

外貨建て保険で資産形成を考える人もいますが、為替変動のリスクがあるなどデメリットもあるため基本的には私はお勧めしていません。

――学資保険に入る時の注意点はありますか?

鈴木:まず、元本割れしないか確認を。できればお祝い金は受け取らず、大学進学以降に受け取るようにしましょう。また、保険料の払い込み途中で解約をすると、損しますので、できるだけさけましょう。
そして意外な落とし穴が、受け取り年齢です。お子さんの誕生月や推薦入学等によっては18歳満期とすると入学金の支払いに間に合わないこともあるので、受け取れる時期を確認しておきましょう。

――子どもの学資に備えるとしたらどれぐらいの金額が必要でしょうか?

鈴木:目安として中学卒業時には200万円、高校卒業までに300万円と考えます。もちろん、学部によって全然足りない場合もありますが、平均的にみてこれだけあれば、高校で子どもが「短期留学したい」「塾に行きたい」、といった時にある程度補えられるからです。

「そんな金額うちは無理!」とおっしゃるご家庭でも、児童手当(※)をプールしておけば、所得制限のないお家では15歳までに約198万円は貯めることができるはずです。足りない分は、全額とはいかないまでも今からこの金額を目指すことをおすすめします。
※2022年10月から世帯主の年収が1200万円以上の世帯については廃止予定

子どもに医療保険は必要?

――子どもが幼稚園、小学校に入るタイミングで「うちもそろそろ医療保険に……」と考えるパパママも多いようですが?

鈴木:現在、小児医療費の助成制度は地域によって就学前まで~22歳までと差はありますが、どの自治体にも必ずあるので、この助成が外れるまでは入る必要は高くないでしょう。

――それでも「長期入院になったら……」「付き添いの親の交通費が……」「スポーツをする子はケガが多いから」との噂を耳にして心配しているパパママもいますが?

鈴木:実際、子どもの長期入院は思っているよりも少なく、0歳を除いた1~19歳の入院受療率は、全世代の中で一番低い数字です。であれば、医療保険に入ったつもりで貯めておいて、もしケガや病気をしたときにはその貯金を使い、もし医療費がかからなければ、その分好きなことや教育費などに使えます。そして、小児医療費の助成が切れるタイミングで、家計を圧迫しない、共済型の保険への加入を検討してみてはどうでしょうか。

★共済型保険モデルケース(生協系T共済)
掛金月々:1,000円※0歳~20歳まで掛金変わらず
入院:日額6,000円(1日目~360日分)
事故&ケガによる通院:日額2,000円(事故日から180日以内 1日目から90日分)
手術費用:5・10・20万※手術内容による
事故後遺障害:14~350万円
病気死亡・重度障害:100万円

          +(上記にプラス)
事故死亡・重度障害:50万円
扶養者の事故死亡・事故による重度障害:100万円
先進医療特約:+100円で付帯可能
個人賠償責任保険:+140円で追加加入可能

鈴木:上記は一例ですが、1,000円で過不足ない保障が得られます。また特筆すべきは、毎年割戻金を受け取れる可能性があることです。割戻率20%の場合、実質月額約800円で加入していることになります。

――「もし病気をしたらその後保険に入れなくなるのでは? だったら保険料の安いうちに生保会社の終身型に入っておくほうがいいの?」と悩むパパママもおられるようですが?

鈴木:もし病気をして万が一治らなかったとしても、一般的には、その病気を保障から外して、医療保険に加入することが可能です。また、持病や既往症がありずっと服薬することになっても、保険料は割高ですが、引受基準緩和型の医療保険もあるため、保険に入れなくなるという心配はそんなにしなくてよいでしょう。
また、先ほどもお話ししたように、子どもが大病をする可能性は低く、小児医療費助成制度、そして高額療養費制度もあるため、子どものうちから終身医療保険に加入する必要性は低いと考えます。

――がん保険はどうでしょう? メディアの情報やCMから、若年層のがんに対する関心や不安も高まっているようですが。

鈴木:現在、子どもが小児がんになる確率は1万分の1との統計が出ています(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」.小児・AYA世代のがん罹患データ2018年度発表)。ですので、がん保険の必要性も低いと考えます。ただし、女の子の場合20歳を過ぎると、乳がんなどの罹患率があがってくるので心配な方は検討してもよいかもしれません。

子どもの生命保険についての考え方

――子どもに生命保険は必要でしょうか?

鈴木必要ありません。その後の家族の家計に及ぼす影響がないからです。よく、お葬式代にと耳にしますが、起こる可能性が低いところを心配しだすと、保険料はどんどん膨れ上がってしまいます。

これだけは押さえておきたい保険。それは…。

――他に子どもが入るべき保険はありますか?

鈴木個人賠償責任保険は必須と考えます。
私は保険の基本の考え方をお話する時、「自分の力ではどうにもならないものをカバーするのが保険です」と説明させていただいています。そうなると、学費や医療費などは、正直保険でなくても貯蓄があれば賄えるものです。
しかし、自転車で誤って人に大けがを負わせてしまったり、高額なものを壊してしまった、など、貯蓄ではとても賄いきれないものがあります。実際、近年では子どもが自転車でお年寄りをはねてしまい多額の賠償金が発生した、というニュースをよく目にします。なので、これだけはしっかり備えておいた方がいいでしょう。

この保険は、通常一家で誰か一人が入っていれば同世帯の家族全員に適用され、親の保険や火災保険、自動車保険、クレジットカード等についているものもあるので、その場合はあらたに入る必要はありません。入っていなかった場合でも、家族誰かの保険に付加できないか検討してみてください。月額100円~200円台で付加できるものが多いです。

ちなみに子どもが自転車を買った際、自転車保険をすすめられた、という話も耳にしますが、個人賠償責任保険に入っていれば賠償部分はカバーされているので、自転車保険に入る必要はないと思います。

結論! 子どもの保険のポイント!

①学資保険…子どもの教育費+親の死亡保障という意味で学資保険加入はあり。
ただし、元本割れしないか? 何歳で受け取れるのか確認を。
入っていなくても、貯蓄+親の生命保険でカバー可能。つみたてNISAなど無理のない範囲で積立投資も始められればなおgood。
②医療保険…小児医療費助成が切れた時点で共済型に入れば十分。
③子どもの生命保険は入る必要ナシ。
④個人賠償責任保険にだけは、一家で一口入っておくこと。

――子どもの保険に対する知識と、チョイスする際の方向性が見えてきたのではないでしょうか? 次回は「子育て世代の親の保険」についてお話していただきます。

取材・文 佐藤啓子

取材協力者紹介

鈴木さや子

すずきさやこ
株式会社ライフヴェーラ代表。ファイナンシャルプランナー(CFP)・キャリアコンサルタント(国家資格)。All About学費・教育費ガイド生活に役立つお金やキャリアの情報を、セミナーや執筆にて発信。金融商品などを一切販売しないFPとして活動。運営するみらい女性倶楽部では「今もみらいもワクワクに」を合言葉に、お金・ヒト・スキル・キャリア・笑顔、5つの資産を育てるための情報を発信中。大学生・高校生の母 
HP:https://miraijosei.com/

さとう けいこ

佐藤 啓子

ライター

フリーライター。幼少期、講談社の絵本Gシリーズに出会い、本に携わる仕事をしようと心に決める。 テレビ情報誌のスタッフを皮切りに、戦隊ヒーロー系ムック、ゲームブック、ドラマCDのシナリオなどを手がける。 Webでは主に子育てをテーマとした記事を執筆。男子二人の母にして2にゃんこのしもべ。某お笑い番組を見るのが至福のひと時。

フリーライター。幼少期、講談社の絵本Gシリーズに出会い、本に携わる仕事をしようと心に決める。 テレビ情報誌のスタッフを皮切りに、戦隊ヒーロー系ムック、ゲームブック、ドラマCDのシナリオなどを手がける。 Webでは主に子育てをテーマとした記事を執筆。男子二人の母にして2にゃんこのしもべ。某お笑い番組を見るのが至福のひと時。