2020.12.24

2児の母が市議になって考えた「子育ての困った」が変わる驚きの方法

つくば市議会議員・川久保皆実さんインタビュー 前編

寄稿家:奥津圭介

写真:アフロ

弁護士、IT系企業の最高経営責任者(CEO)、そして2児の母。これらはすべて新人つくば市議・川久保皆実さんの肩書きです。2020年夏に都内より、故郷でもあるつくば市に移住。同市で子育てにおける働く母親の負担を軽減したいと、移住から3ヵ月後につくば市議選に立候補し、見事に当選しました。

そんな川久保さんは、今の子育て環境の問題点をどうとらえ、どう解決していこうとしているのでしょうか。


地方の保育所は都心より負担が大きすぎる!

「子どもたちが保育所に入れることが決まり、都内からつくば市への移住を決めました。でも、改めて市の公立保育所の制度を調べたら『やっぱり止めようかな……』と思ったくらいです(笑)」

3歳と1歳の男児の母である川久保さんがつくば市への移住を決めたのは、2020年6月。コロナ禍を受けてリモートワークが進み、都内(千代田区)に住む必要性を感じなくなったことがきっかけだとか。
川久保さんの故郷でもあるつくば市には、大小200を超える公園があり、ICT教育に積極的に取り組んでいるなど、子育て面で恵まれた環境もあります。しかし、いざ保育所の制度を調べてショックを受けたそう。

「使用済み紙おむつは、保護者が毎日持ち帰って処分しなくちゃいけない。千代田区では保育所で処分してくれました。さらに3歳児以上になると、毎朝、白米を炊いて「白飯」を持参する必要があるんです」

弁護士、IT系企業の最高経営責任者(CEO)、2児の母、そして新人つくば市議。これらすべてをこなす川久保皆実さん。(ZOOM取材にて)

昼寝用の布団も、千代田区は保育所で準備してくれ、保護者は週に1回、シーツを付け替えればいいだけでした。でもつくば市では、布団セットを保護者が購入して、毎週末、自宅に持ち帰らなくてはいけないルールです。同じ公立保育所でも、千代田区とつくば市では保護者にかかる負担が大きく異なっていたのです。

「雨の日に2人の子どもを連れ帰りながら、その荷物を持ち帰るのは相当厳しいですよね。ほかにもいくつかの要素が、働く母親にとって負担が大きすぎると感じたのです」

もっとも効果的な声の挙げ方「議員になろう!」

それでも、コロナ禍のリスクや家賃の問題など総合的に考えると「都心よりいいかな」と考え、移住を決めた川久保さん。

「とはいえ、保育所に関する負担は毎日のことなので、黙って受け入れるのは抵抗があったんです。何とか変えていきたいと思いました」

このように思ったとき、川久保さんはある事実に気がついたそう。つくば市の公立保育所に関するさまざまなシステムは、川久保さん本人が保育所に通っていた30年前から、ほとんど変わっていなかったのです。

「すごくショックでした。母の子育て時代は『出産したら仕事を辞める』のが普通で『保育所に預けられるだけでありがたい』という時代でした。30年を経た今は共働きが当たり前で、都内の多くの地域は親の負担を軽くする方向で変わってきている。やはり一歩、遅れているなぁと感じました」

この30年間、声を挙げた保護者たちがいなかったとは考えづらい。それでも変わってこなかったのは、一市民が声を挙げるだけでは、長年続いてきた市の規則や慣習を変えることは難しいからだ。そう考えていたときに、たまたま4年に1度の「つくば市議選挙」が、3か月後にあることを知ります。

「それならば、24万人いる市民の一人として声を挙げるより、28人の市議の一人として声を挙げたほうが間違いなく現状を変えやすい。そう考え、立候補を決意しました」

長男の保育所送迎時にゴミ拾い。これが川久保さんの選挙運動だった。写真提供:本人

川久保さんは

「仕事と育児を犠牲にしない」
「他人のお金に頼らない」
「既存のやり方にとらわれない」


という3つの方針、そして主に子育て当事者としての5つの政策などを掲げ、選挙戦に突入。無所属の無名新人ながらも、2020年10月25日、3位でつくば市議に当選。自民、共産の現職が敗れる中、無名新人の初当選は大きな話題になりました。

行政との議論を重ねて問題解決へと導く

市議になった今、子育ての問題点をどう変えていこうとしているのでしょうか。

「まずは各問題について現状の市の方針を確認したうえで、市としてすでに問題解決に向けて動き出しているものについては全力で後押しし、それ以外のものについては、行政でしかできないことと民間の力でもできることを整理すべきと考えています。行政でしかできないことについては、行政との議論を重ねることで、問題解決に向けて動いていただけるように働きかけていきます」

任期が始まったばかりの令和2年12月議会、川久保さんは次のような想いで臨んだそう。

「最初の議会では、現状の市の方針を確認することを重視しました。そのために議会で使えるのは『一般質問』というシステムです。議員個々が重要だと考えている事項について議会で質問し、市長や市の担当者から公の場で回答を得る。それが一般質問です。12月議会の一般質問で得た市からの回答をもとに、問題解決に向けて具体的に動き出したいと思います」

12月議会の一般質問では「使用済み紙おむつの持ち帰り」については令和3年4月までに、「白飯持参」については遅くとも3年以内に改善する方針であることを市の担当部長から確認。

また、「布団の持ち帰り」の問題については、現時点では市としては検討中という回答であったため、川久保さんも独自に視察や調査のうえ解決策を検討し、市の担当課と議論を重ねていく予定であるという。

民間の力を積極的に利用する

川久保さんは公約に、「病児保育の支援拡充」や、夏休みなどに学童保育のお弁当をネットで注文可能にする「学童保育のお弁当注文制度」なども掲げています。これらは行政サービスのみならず、民間事業を使っての改善も模索しているとか。

「現状のつくば市の病児保育施設は、『急に子どもが熱を出した』といった本当に困った状況に対応しづらい、という保護者の声をよく耳にします。それに対し、都内であれば、当日の朝に連絡をしてもすぐに駆けつけてもらえる病児保育専門のベビーシッターサービスを利用することができます」

現状、つくば市はそのようなベビーシッターサービスの対象エリア外なのだが、川久保さんはつくば市も対象エリアに入れてもらえるよう、サービス提供事業者に働きかけをしたいと考えている。

「おそらく、対応できるシッターさんがいないという理由でつくば市が対象エリア外なのではないかと思うのですが、つくば市内の子育て支援をしている方々に話を聞くと、市内にもそういうシッターをやってみたいという方はいるんです。そういう方々と、サービス提供事業者を繋ぎ、ビジネスとして展開できるようになればいいのではと。これから具体的に動きたいと考えています」

「学童保育のお弁当注文制度」に関しては、奈良県奈良市で自治体が運営している、学童保育用お弁当の予約サイトに注目しているという。

「これも市でやるより、民間でサービスとして作ったほうが早いのかなと。私の中では『行政の手ですべてを変えなきゃ』というより、『民間にできることは民間の力も借りる』という形でも全然かまわないと思っています。既存のやり方にとらわれず、柔軟な発想で問題解決に取り組んでいきたいです」

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