6歳からもOK! 子どもに「経営の考え方」は必須 経営学者・岩尾俊兵が伝授する「家庭でできる経営学」

経営学者・岩尾俊兵先生に聞く、「6歳から学べる経営」 #4 家庭でできる身近な経営の学びと価値の創造

慶應義塾大学商学部准教授:岩尾 俊兵

慶應義塾大学商学部准教授・岩尾俊兵先生。期待の経営学者としても注目を集めています。

慶應義塾大学商学部准教授・岩尾俊兵先生に聞く、「6歳からの経営学」。

前回では、小学校高学年の問題解決方法を、「七転八起の四角形」を通して解説してもらいました。

最終回となる4回目では、自分で作る「価値の創造」について。「経営の考え方を通して、子どもたちに、未来は創造できるものだと思ってもらいたい」と岩尾先生はいいます。

家庭でできる身近な体験を交えながらお話ししていただきます。

(全4回の4回目。#1#2#3

岩尾俊兵(いわお・しゅんぺい)
慶應義塾大学商学部准教授。平成元年、佐賀県生まれ。父の事業失敗のあおりを受け高校進学を断念。中卒で単身上京。陸上自衛隊、肉体労働等に従事した後、高卒認定試験(旧・大検)を経て、慶應義塾大学商学部卒業。東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程修了、東京大学史上初の博士(経営学)を授与される。

スーパーでの買い物に多くの学びがある

──小学生は、家庭で保護者と過ごす時間もまだまだ多いと思います。そうした時間にできる「経営」の学びはありますか。

岩尾俊兵先生(以下、岩尾先生):家庭のなかでも、親子間や兄弟姉妹などで日々いろいろな問題が起きますよね。その問題を、2回目の「問題解決の三角形」や、3回目の「七転八起の四角形」に当てはめて、解決へとつなげてもらえたらと思います。

他には、スーパーに買い物に行った際にも学べることはたくさんあります。飲み物を売っているところに行ってみると、500mlのペットボトルが100円、1ℓのペットボトルが200円で売られているとします。

「では、2ℓはいくらかな?」と、子どもに予想をさせると「400円!」と答える子が多いかもしれませんが、でも、実際に見てみると、100円だったりすることがある。なぜ量が増えているのに値段が下がっているのか。そんなことを考えさせてみるのもひとつの「経営」です。

子どもと「量が増えると持ち運びしにくくなる。だから買わなくてもいいって思う人へ向けて値段を下げているのかな?」などの意見が出るかもしれませんね。それに対し、必ずしも水の量を増やせば人は喜ぶとは限らないという教訓も得られます。

──子どもの答えがあっていなくても、考えさせることが大事ということでしょうか?

岩尾先生:そうですね。またここでは、大人が正しい答えをわかっている必要もないんです。『13歳からの経営の教科書』には問いの例も数十個載せていますので、問いを考えていただく必要すらない(笑)。いろんな問いに対して、子どもと一緒になって、こんなことが考えられるね、ということでいいんです。ペットボトルの値段の件も、先ほどの答えが正解かはわからないのですから。大人もわからないことを恥ずかしがらずに、思ったことを子どもと話し合っていけばいいんだと思います。

最初は保護者がリードして、意識して三角形や四角形の考え方を回していると、子どももその考え方が自然に身についていくと思います。

「正解が大切ではなく、親子で値段について話し合うことが経営の学びになっていきます」(岩尾先生)

お手伝いをすることも「価値の創造」のひとつ

──3回目で、岩尾先生は「価値は創造できるものだ」と言っていましたが、それを実感できるような、家庭でできる体験はありますか。

岩尾先生:「価値を創造する」というと、すごく抽象的で難しく感じるかもしれませんが、身近な例を挙げると、例えば本。本は紙でできていますが、そこに情報が織り込まれることで、価値のあるものになり、お金を出してでも買いたいものとなるわけです。ただの紙に1000円も、2000円も出す人はいません。これが価値の創造です。

演劇やマジックショーも分かりやすい価値の創造ですね。何もないところから、脚本や人々の演技で価値を創り上げた結果、みんながお金を払いたいと思えるものになる。

小学生が家庭で実感するなら、お父さんやお母さんの肩たたきや、家族の洗濯物を畳んだり、庭の草むしりなどのお手伝いをするとします。ちょっとしたことで相手の「ありがとう」を引き出すと、自分の行動から価値を生み出して相手に喜んでもらうということになるわけです。その完成度が上がって洗練されてくると、「おこづかい」というお金になることもありうる。

要するに、「何をすれば相手は喜ぶか」、「必要としているものは何か」を考えて、自分のちょっとした行動で、誰かを幸せにできるんだということを、実感として持つということが大切です。自分の負担になるような大きな労力を費やさなくても、考え方や目先を変えると、本当に簡単なことで相手を幸せにすることができるんです。

「ちょっとした行動でも、相手にとってそれが幸せにするということが大切です」(岩尾先生)

子どもたちの活躍の場はこれから大いにある!

──最後に、これからの時代を生きる子どもたちに向けた言葉をお願いします。

岩尾先生:これからの時代は、お金から人へと、もう一度社会において貴重な資源がシフトしていくと思います。一方で、1回目でもお話ししたように、これからは人が大事で年功序列や終身雇用を復活させる会社が増えると思いますが、それでもそもそもの会社の寿命が短くなればのんびりと暮らすことはできません。

だからこそ、組織の寿命を延ばせるよう、そして自分自身に力をつけられるような経営マインドを持つことができれば、これからの社会で怖いものはありません。

少子化で人口減少が進むものの、高齢者の方々が若者以上に元気に働けるようになるロボット技術や健康産業などの可能性があるビジネスはまだまだあります。グローバル化も、実はこれからが本番で、これから過去の日本の需要を後追いするアフリカなどのベース・オブ・ピラミッドと呼ばれる地域や、世界中がこれから50年で突入する長寿社会へのニーズに対して、世界一の「社会課題先進国」日本の物を売るチャンスは、むしろこれからです。将来の活躍の場は大いに残されていると思います。

財務省『国際収支統計』からみると、2023年7月期の経常収支は過去最大の2兆7717億円の黒字なんですよ! 日本はついに平成不況から抜け出しはじめましたし、まだまだ価値創造によって日本から発信するビジネスは拡大できると思っています。

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岩尾先生は、「保護者とのやり取りを素直に楽しんでくれる小学校時代にこそ、学校や家庭で、みんなと仲良くする技術を学んでほしい」と言います。

人こそ大事な時代に活躍できるようになるためにも、私もまずは家庭内でできることを取り入れ、子どもの「経営マインド」を育てていきたいなと思いました。

撮影/日下部真紀
取材・文/浅妻千映子

岩尾先生の6歳からの経営学は全4回。
1回目を読む。
2回目を読む。
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いわお しゅんぺい

岩尾 俊兵

Iwao Shumpei
慶應義塾大学商学部准教授

慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県有田町生まれ。父の事業失敗のあおりを受け高校進学を断念。中卒で単身上京。陸上自衛隊、肉体労働等...